3-閑話 四つの影
千曳と公仁が高台を降りた頃、エビルピットも残弾数が減ってきていた。
だが、最後の3体だけはほかと違った。
人型だった。
というか、人だった。
両手両足が尖っているわけでもないし、羽が生えてるわけでも、まして茂なわけでもない、完全なる人間。
三人は地上に降り立ち、すぐに近くの建物に入る。
騎士団長は殲滅に夢中。
異世界人二人も殲滅に向かってる。
巫女見習いはぐっすり。
銀髪ツリ目は観戦中。
眼鏡は教皇とお話中。
騎士団員と猫又は住人の避難に奔走。
住人は阿鼻叫喚。
そんな状況で、三人のことを気に止める人は誰も――
「待ってたぜ」
居た。何故か建物の中に待ち伏せていた。
だが、件の三人は特に驚くことは無い。その人物が協力者だったからだ。
「オヌシが協力者とやらで御座るか」
「ああ。そっちこそ、十二使徒で間違いないのか?」
「ああ、そうだ」
降りてきたのは、武士の青年、ぶっきらぼうな老人、そして、色っぽい女性の三人。
しかしこの女性。ただ色っぽいだけではなかった。
「聞いてたよりもずっといい男じゃない。どう? 今晩遊ばない?」
なんと痴女だった。大量の贅肉を持っていながら男をさそうその勇気には脱帽である。
「遠慮する」
「あらそう」
案の定断られた。せめてB以下になって出直してくるべきだ。
「タダイの誘いを断るとは……オヌシ、さては『ろりこん』とやらで御座るか?」
「なぜそうなる!」
たまらぬ反論であった。
「だいたいあんたはどうなんだ?」
「それがしは興味ないでござる」
「なぜそれで俺がロリコンになるんだ! あんたは!?」
「俺も興味ない」
どちらも興味なかった。それなのに他人をロリコン呼ばわり。
協力者はしばらく憤慨していたが、やがて落ち着いた。怒っても仕方ないと思い立ったらしい。
落ち着いたのを見計らって、老人が声をかけた。
「あんたの名前は?」
「そうだな。まあ、タイラ、とでも名乗っておこうか」
三人は押し黙った。やっぱロリコンじゃね? と。
「一応理由を聞いておこう」
「平らな世界。すばらしいじゃねぇか。差別のない平等な世界だぜ?」
再び押し黙る。今の発言を総合して――
「やはりロリコンか」
「あたしのほうが楽しいわよぉ?」
「口では何とでも言えるで御座るな」
これが三人の答えだった。
「なぜそうなる!!!」
十二使徒というのは面白いものなのかもしれない。
タイラは、怒鳴りながらも、そう思っていた。
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