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絶晩成型  作者: 咫城麻呂
第三章 教会都市キエーザ
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3-12 新たな仲間

 やっほー。千曳ちびきだよ。

 汽車の旅って憧れるよね。

 車窓から見える景色がたまらない!


 ――――――――――――――――――――――――――――


 事件から十日が経った、とある昼下がり。


 街は現在進行形で修復中。すでに九割がた終わってるって言うんだから異世界の大工ってすごいな。


 魔法で石の壁作ったり、屋根作ったり、机や椅子を作ったり、二階作ったり、本棚作ったり、禁書庫も形だけ整えられている。現物は燃えたことになってるしね。


 で、その現物なんだけど、うっかり置いておいた場所にマジックハンドを召喚してしまい、溢れてきたところをたまたま通ったエクウスさんに見つかってしまった。


 拳骨一発もらったあと謝罪フェイズに移行。


「どういうことだ?」

「面白そうだったから場所調べてパクった」


 これでは生けませんね。鉄拳が増えるだけです。


「中身調べて返そうと思ってたの。これホント」


 言いたいことははっきりと、丁寧に説明したほうが拳がスポーンする確率は低い。まあ、出るときは出るけど。


「かなり警備が厳重だったはずだが?」

「窓があったから、そこから中にマジックハンドを召喚した」


 頭を抱えるエクウスさん。なにげにレアだったりする。


 ★★★


「ってことがあって~」

「だからあんなに騒がしかったのか。それで、その本はどうすんだ?」


 隣に座ってる公仁が、しみじみと頷く。コイツもしょっちゅう怒られてるからね。


「協議の結果……」


 そこで言葉を切り、アウエラの前に本を出す。地味に調節が面倒だった。


「え? いいの!?」

「うん。一番活用できるのは君だろうって話になったから」

「でも、色々迷惑かけちゃったし……」

「じゃあ、僕からのプレゼントってことで」

「え!!? そ、それじゃあ遠慮なく……」


 なんでそこで顔を赤らめるんだ。ただのプレゼントだろ?


「わかってないな、お前」

「おい待て僕は何も言ってないぞ」

「顔に書いてあるんだよなぁ」


 どうりで最近読まれやすいと思ったら。


「で、なんなの?」

「こいつらがこの街に来た理由を覚えてるか?」

「禁書庫の中身でしょ?」


 そこまで言ってから、気がついた。


「ああ、そうだ。自分が欲しかった、しかも一度なくなったと思っていたものを貰えたんだ。しかも好きな人にな」


 まっさかぁ。


「ふふふ。ダーリンからもらったー♪」


 その通りだった。そりゃまあ嬉しくなくはないけどさ、なんというか、一度崩れたイメージって戻らないよね。


「ところで、お前これからどうすんだ?」

「ボク? えっと、どうしようか?」

「決まってないなら、一緒に来る?」

「いいの!?」

「うん。なんか強いみたいだしさ。僕も安心できるってもんだよ」


 生身は弱いってレベルじゃないからね。それに、人が多ければ作戦も成功しやすくなるし。


「あら? じゃあ、私も連れてってもらおうかしら?」


 高い声に振り返ると、ディーネとアヤムがいた。


「まあ、別にいいけど?」

「というか、どんなところで話してるのよ……」


 え? ただの高台の淵じゃん。


「見晴らしいいよ?」

「そこじゃないのよ――って、アヤム!」

「なんや? ディーネもやってみ? いけるで」


 アヤムも僕らに習って淵に腰掛け、足をぶらぶらし始める。楽しいよね、これ。


「はぁ。貴方ねぇ……」


 結局、ディーネもプラプラし始めた。


「カーディナルの所為でこの街にいられないのよねぇ」

「あれのこと話さなければ良かったんじゃない?」

「貴男馬鹿? この街の子供達を殺させるわけないでしょう」


 おお。なんかすごくかっこいいこと言ってる気がする。


「ディーネにとってこの街の子供達とは?」

「ふふ。貴男たちにはまだ早いわ」


 ふむ。それはつまり、そっち系か。


「んなわけあるか」


 ですよねぇー。


「自分、いい加減表情コントロール覚えたほうがエエで」

「流石に分かりやすすぎるわよ」

「の癖、肝心なとこだけ妙にわかりづらいんだよな」


 うぐ。なんでこいつらこんなに人の痛いところ突けるの?


「てか、そんなに人の表情見てるそっちのほうがおかしいだろ!」


 とりあえず反論。が、帰ってきたのはさらに悲惨な言葉だった。


「なんで見ないんや?」

「貴男が見なさすぎなのよ」

「そろそろ周りを見ろ!」

「もうちょっと見てくれたって……」

「同意」

「チーガルはお前に何を教えたんだ……?」


 待って、増えてない? 知り合いが全員集合してるんすけど。


「お、師匠。どこ行ってたんだ?」

「例のものを貰いに行ってた。ほら、これだ」


 そう言ってエクウスさんは、何かを公仁に放り投げた。


「おお。これが」

「ああ、この世界の懐中電灯だ」

「エクウスさん、僕のは?」

「はい、これ」


 いつの間にか隣に座ってたセルが、後ろの樽を叩く。ちなみに、すでにぶらんぶらんし始めていた。相変わらず楽しい事好きだな。


「おお。これが」

「ん。唐辛子」


 これは何かというと、パプストさんにもらったものだ。一応、今回の事件で活躍したから、軽い褒美の品をもらえたのだ。


 いやー、懐中電灯と唐辛子頼んだ時の顔は傑作だった。


 そうそう。この前面会謝絶にされた教皇様だけど、さっきも言った通り合うことができた。


 聡明そうな人で、結構柔和な人だったけど、たまに見せる観察眼がすごい老人だった。だてに教皇やってないな。


 正直な話、眼鏡にいいようにされてるとはとても思えなかった。


「ねえエクウスさん。なんでパプストさんは眼鏡を放っておいてるの?」

「私も詳しくは知らないが、なんでも自分をいいように使ってると思ってるやつは使いやすいらしい」


 おお、流石。やっぱあのメガネは利用されるのか。


 ちなみに、件の枢機卿はエクウスさんの警告を無視したせいで評価が下がってる。処罰にならなかったのはさっきの話の所為かな?


 まあ、話を聞く限り悪い人じゃなさそうだけどね。なんでかエクウスさんを目の敵にしてるという。


 どうでもいいか。それよりも樽をどげんかせんと。


 マジックハンドで持ち上げて、崖の下にマジックハンド界へのゲートを開いて投げ入れる。


 うん。この位置なら間違ってこぼれてくることもないだろう。


「じゃ、そろそろ行きますか?」

「待ちなさい」


 待ったをかけたのはディーネだった。なんか文句でも?


「少しやることがあるわ。先に門まで行ってて」


 有無を言わせずにそう言い放ち、さっさと歩いて行ってしまった。


 ほかの旅仲間に忘れ物ないか訪ね、お世話になった人に挨拶に行くと言う三人を見送ると、特に知り合いがいない僕は何もすることがなくなってしまった。


 仕方ないから先に門に向かい、ここに来る前に置いていった毛皮をマジックハンド界に入れて戻ってくる頃には、ディーネ以外全員が揃っていた。


「もう何もない?」

「ああ。問題ない」

「ん」

「ボクも」

「じゃ、あとはディーネか」


 見送りはエクウスさんとアヤム。なにげにすごいメンバーなんだよね。周りの人がすごい見てる。


「もう行ってまうんやな」

「今から行けばギリギリ間に合うからね」

「千曳。うちの馬鹿弟子をよろしくな」

「うん。何かあったら報告に来るから」

「おいばかやめろ」


 そんなことを話してると、一台の馬車が出てきた。それは僕らの前で止まると、中からディーネが出てきた。


「ディーネ。それは?」

「旅するなら馬車が必要よ。ここからプリュスまでどれくらいあると思ってるのよ」

「それはいいけど、誰か操縦できるの?」

「ある程度ならできる」


 というわけで、公仁は御者台に、僕らは中に入る。ここに来るまで御者をやってた人は適当に見つけただけのようで、そそくさと街に戻ってしまった。


 中は意外と広く、しっかりした木造で、シートは驚く程柔らかかった。あれ? ここってほんとに異世界?


「よくこんなもの借りれたな」

「いや、買ったのよ」


 僕が驚くと、ちょっと得意げになった気がした。


「一体、何バス……」

「これを買ったって……」


 二人も驚いてる。お金と無縁の生活を続けていた僕らには、どれくらいするのか見当もつかなかった。


「こう見えても金だけはあるのよ? それよりほら、出発するわよ」


 そうだった。今日中に出来るだけ距離を取らないと。


 というわけで適当に座り、さあ行こうといったところで、外から声が掛かった。


 窓から顔を出すと、アヤムが手紙のようなものを持っていた。あれ、なんかデジャブ。


「これをムクロちゃんに渡してえな」


 またこのパターンか。僕は郵便局じゃないっての。


「ムクロって誰のこと?」

「わたしの、師匠」


 返事は中から来た。へえ。そんな名前だったのか。


「じゃ、預かっとくわ」

「よろしゅうな」


 これでほんとに最後かな? よし、大丈夫そうだね。


「それじゃあ、色々世話になりました」

「ん。ありがとう」

「色々すいませんでした」

「二人共、元気でね」

「師匠、今まで世話になった」

「しくじったら承知しないからな」

「頑張ってなー」


 こうして僕らは、キエーザを旅立った。……目の前に地獄が迫ってるとも知らず。

誤字脱字の指摘、感想等お願いします。

地獄とは言ってるけど、大してひどいことではないのであしからず。

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