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絶晩成型  作者: 咫城麻呂
第二章 中立都市ツァオベラー
19/68

2-12 マジックハンド界

 やっほー。千曳ちびきだよ。

 授業をさぼるなら保健室、って誰が言った言葉なんだろう?

 別に教室で寝てても怒られないのにね。


 ―――――――――――――――――――――


 ナミの素性を知ってから2日後、つまり訓練開始から四日が経った。

 相変わらず訓練メニューはヘラクレスの偉業並にきつく、毎日を死かけながら過ごしている。

 でも、最近はある程度スポーツをやっていればそんなにきつくないかもしれないと思い始めてきた。だってセルとポワブルは普通にこなしてるし。

 年下に負けていると嫉妬する人がいるみたいだけど、自分が弱いのを人の所為にするのってよく分かんないな。

 とにかく、僕は毎日その二人をすごいなーと思いつつ応援してる。

 ほら、今だって2周差……あ、たった今3周差ついた。早いなぁ。


 ――ピロリン――


 唐突に頭の中に気の抜けた効果音が響いた。

 その効果は抜群で、思わず転んでしまった。


「おっと。大丈夫っすか?」

「疲労困憊~?」


 抜かしてすぐだったから、二人に助けてもらえた。


「大丈夫、ありがとね」


 ホントになんでもないんだけど、二人がかなり心配してたから、医務室に行くことになった。


 ★★★


「ホントになんでもないんだね?」

「そう言ってるじゃないですか……」


 医務室の室長であり、僕の命を何度も救ってるマドラさんに、僕は呆れたように言った。

 ちなみにマドラさんは人間である。年齢は20代くらいかな? 身長はポワブルぐらい。かなり高い部類だ。


「いやね? 異世界の人は体構造違うから何があるか分からないんだよね」


 そういいながら、カルテに何かしら書き込んでいく。

 というか、この世界の医療はだいぶ進歩してるようで、既にカルテやら白衣やらベットやらが整っている。

 現にマドラさんも白衣を着てる。学校の保険の先生と言った感じだ。


「でもまあ、少し休んで行きなさい。私も異世界に興味あるし、聞かせてよ。千曳君も、さぼれていいでしょ?」

「え? まあ、はい……」


 少しと言いつつ、話はチーガルが探しに来るまで続いた。


 ★★★


「明日はメニューきつくしてもらうからね!」


 夕飯も食べ終わり、風呂も入って、さあ寝よう! って思いで部屋から出ようとしたら、そんなことを言われた。あれ以上きつくするなんて、チーガル先生は血も涙もない人間……獣だ。

 まあいいや。明日のことは明日考えよう。それよりも、今はやるべきことがある。

 僕は自分の部屋に戻ると、ベットに腰かけつつメニューを開いた。

 レベルは変わってない。次までの経験値は相変わらず膨大だ。スタミナは訓練のおかげか、多少上がってる。それ以外は変化なし。

 まあ、ここまでは問題なし。予想道理だ。

 そして僕は、スキルの項目から、マジックハンドを選択した。

 そして出てきたウィンドウには――


―――――――――――――――――――

『マジックハンド』 レベル20 熟練度:21148

 SPを消費して魔法の手を召喚する。

 基本的には術者の命令に従うが

 ある程度自立思考を持たせることも可能。


 最大召喚数 レベル×5

  範囲   レベル×50

 消費SP  召喚数×0.20/m(小数点以下切り捨て)

  積載量  レベル×50kg

  大きさ  5cm~5m

   色   白 黒 透明 紫

  HP   :10000

  MP   :5000

  攻撃力  :1000

  防御力  :1000

  魔力   :1000

  精神力  :1000

 魔法種類  :火、水、風、土


 『妖精召喚可能!』

―――――――――――――――――――


 たぶん、昼間の気の抜けた効果音はこれのレベルアップだったんだろうな。

 畜生! 僕のレベルはちっとも上がらないのに……。

 それはともかく、同時召喚数が100超えたのはうれしい。戻した時の激痛が恐ろしいけど。

 後は、レベル20になって積載量の制限が出来たから、これからはそれも気をけないとね。

 ほかにも、大きさを僕の手より小さくすることも出来るようになったみたいだね。使い道あるかな?

 色も、紫に出来るようになった。怠惰ごっこがはかどるね。

 そして最後に、一番気になる『妖精召喚可能』の文字。

 ここだけピンクで凄い強調されてるし、見た感じ押せる感じだし。……押した方がいいのかな?


 悩むこと5分。さすがにスキルに殺されることはないだろう、という安易な考えのもと、押してみることにした。

 ああ、でもやっぱ怖い。爆発落ちとかマジ勘弁……。ええい! 僕も男だ。押しますよ。押せばいいんでしょう?

 ぽちっとな。


 すると、目の前に光が集まり出した。とってもまぶしい。

 光はだんだん人型になり……しばらくして光がおさまると、一人の少女が浮いていた。

 当然、等身大では無く、アニメで出る妖精そのままの大きさ、形。

 服も例にもれず、妖精の服で真っ先に想像するようなもの。

 背中にはトンボを思わせる透明な翅が2対4枚。

 そういえばこっちに来てから妖精とか見たこと無かったな。話で妖精族とかは聞いたけど。


 しばらくすると、妖精さんが身震いした。そして、ゆっくりと瞼が持ち上がる。

 そのまま何度か瞬きをした後、周りを見渡し始めた。


「ここが現世ですか!」


 第一声は驚きと感動にあふれたものだった。今まで以上にきょろきょろと周りを見回し……唐突に泣き始めた。


「ちょ、大丈夫?」

「うう……。夢にまで見た現世ですよ。泣かないわけないじゃないですか。……ぐす」


 とりあえず、食あたりしたわけじゃなさそうで安心した。

 その後も5分ぐらい、妖精さんは泣いたり感動したりしながら部屋中を飛び回っていた。

 どうやら、この妖精さんは僕が知る妖精と違うようでして。

 仕方がないので直撃リポートとまいりましょう。


「えっと。そろそろいい?」

「す、すいません。マスターをほっとくなど、スキルフェアリーの風上にも置けない存在です。どうか、このフェーダに寛大な罰を。詰ってください! 蔑んでください! ありとあらゆる手段を使って私をいじめてください!!!」


 やっべ。引くぐらいのドMだ。この妖精。しかも、知りたいことは大体話してくれたし。

 えっと、罰を与えないといけないのかな? でも、この娘のこと全然知らないから、詰ることも蔑むこともできないんだよね。

 とりあえず、頭にデコピンを食らわせてみる。ベシ! と、いい音が出た。


「あん。もっと。もっと強力で凶悪なものを。頭が吹き飛ぶほどの一撃を!」


 仕方がないので、さらに強くデコピンしてみる。ベシンッ!! と、さらにいい音が響き渡る。


「あぁん! 素晴らしい。さすがはマスター!」

「落ち着いた?」

「はい! このフェーダ。無事現世を見た感動から帰還しました!」


 うん、大丈夫そうだね。それじゃあ、質問攻めにしますか。


「それじゃ早速質問していい?」

「どうぞどうぞ。確認なんて取らないでください」

「そっか。じゃあ……そもそも君は誰?」

「よくぞ聞いてくださいました! 私は、スキルフェアリー。マジックハンド担当のフェーダです!」


 ない胸を張りながら、ドヤ顔をする妖精さん。

 やっぱ僕の知ってるのと違う。妖精ってのは森にいて、神秘的で、こんなに変態じゃない。……はず。


「スキルフェアリーってなに?」

「スキルフェアリーとは。神から与えられし祝福であるスキルの管理、監視をするために、神自らが作り上げた神工生命体なのである」


 再びドヤ顔をするフェーダ。

 にしても、神、か。善神だといいんだけど。あ、悪神の方は封印されたんだっけ? じゃあいっか。

 どうにも神と言う存在は好きになれないな。神って上から見下ろしてるイメージしかない。そのくせチート級の力を持ってるんでしょ? うざったらしいったらありゃしない。

 まあ、その神が作ったスキルに助けられたんだけど。


「もっしもーし。大丈夫ですかー?」

「え? あ、うん。大丈夫。思ったよりもスケールが大きかったから、つい」


 うっかり考えごとに没頭してたっぽい。適当にごまかしておこう。

 ……そういえばさっき――


「スキルの管理って言ったよね? じゃあ、マジックハンドが何考えてるかとか分かるの? そもそも、マジックハンドってどこから来るの?」

「ん~。そうですね。まずは後者から話しますね」


 そう言って、フェーダは語り始めた。


「マジックハンドは、異次元にある別の世界。通称、マジックハンド界と呼ばれる場所に存在しています。マジックハンドの数は、スキルの熟練度、簡単にいえば私のレベルが高くなるほど多くなり、マジックハンド界も同様に広がっていきます。現世に召喚するためにはゲートを開く必要があり、マスターか私が任意に開くことができ、その時にスキルポイントを消費します。また、開く場所は見えている場所のみとなります」


 語りすぎた。説明が一生懸命すぎて、口を挟む余裕すらなかったよ。

 でもまあ、そのおかげでマジックハンドについて、少し詳しくなれた気がする。

 だがしかし、僕が本当に知りたいのはそっちじゃないんだよね。


「それで、考えてることとかって分かるの?」

「まあ、ある程度は」

「嫌がってない?」


 そう。僕の懸念は、ブラック企業すぎて、社員マジックハンドがストライキを起こすんじゃないかと言うことだ。

 だけど、それを聞いた瞬間、フェーダは今日何回目になるかも分からないドヤ顔を決めた。


「大丈夫ですよ。マジックハンドはみんな私みたいな性格ですから」


 ……そこ、ドヤるところじゃないよね?

 とにかく、僕の懸念は、ただの杞憂に終わったみたいだ。

誤字脱字の指摘、感想等お願いします。

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