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絶晩成型  作者: 咫城麻呂
第二章 中立都市ツァオベラー
18/68

2-11 イザンフェール・ナミ

 やっほー。千曳ちびきだよ。

 どんな物語でも、一か所は和風な場所があるきがする。

 たとえどんな状態でも、それなりに物語に絡んでくるような重要な場所になることって多いよね。


 ―――――――――――――――――――


 次の日からは講座も無くなって、僕も体を動かすことになった。

 と言っても、僕は体力作りと筋トレがメインだけど。

 カルネさんは、チーガルの方が厳しいって言ってたけど、正直、カルネさんのメニューでも死ぬ気がする。てか、死ぬ。


「ぜぇ、ぜぇ。もう、む、り。はぁ、し……ぬ……」

「はぁ、はぁ。もうす、ぐ、じゃ。はぁはぁ」


 王城の外周を回るだけでこのざまだ。

 この後にも、筆舌に尽くし難い訓練や、かぐや姫もビックリの無理難題を押し付けられ、途中記憶をブッ飛ばしつつも何とか生き残り、やっとの思いで、居候先のチーガル亭へと生還するのだった。

 いくらなんでも、再生魔法で強引に体力を回復させて訓練続行は鬼畜すぎる。死なないとは言え、無限に繰り返される苦しみは、拷問以外の何物でもない。

 そして、帰ったとしても、僕に休みが訪れることはない。


「少年! 夕飯よろしく!」


 チーガルが、前に作った料理を痛く気に入ったようで、僕は料理係に任命されてしまった。おかげで、帰ってすぐにご飯を作らなくてはならない。

 拷問の所為で、身体はともかく精神的な疲労がおぞましいことになっている。誰か記憶消して……。


「まあ、頑張るんじゃな」

「一陽来福~?」

「ありがとな。てかさ、チーガルの家ってなんでこんなでかいんだ?」


 チーガルの家は、貴族街の片隅にある。にもかかわらず、下手したら身分が低い貴族よりは大きいかもしれない。


「まあ、ギルド長っすから。本人は嫌がってるみたいっすけど」

「確かに、あいつは豪華なものとか嫌いそうだよね」


 貴族なら飾るであろう美術品の類が一切ない。使用人がいない。使ってない部屋が多い。と、三拍子そろっている。そういえば、装飾品の類も一切付けてないな。


「でも、その割には、食料品が多いんだよね。昨日見たけど、保存室いっぱいに積んであったし」

「それは、あれなのです。お金が余ってるから、少しでも使って市場を活性化させようって言う作戦なのです」

「まどうぐもおおい~?」

「なるほど」


 そんな風に雑談し、ある程度精神を回復させてから料理開始。材料は、有る物自由に使っていい、って言われたから適当に。

 この日の夕飯も、みんなに好評だった。


 ★★★


「ふー。いい湯だった……」


 なんとこの家、お風呂までついているのだ。やっぱりお風呂は癒される。

 夕飯も食べ、お風呂にも入り、大きめの部屋でみんなでゆっくりして、寝る。これが最近のライフスタイルだ。


「……あれ? セルは?」


 大きめの部屋に入り、昨日までとの違いに気づく。ポワブルは得物を磨いていて、ナミは折り紙をしている。シュルクは尻尾のブラッシング、チーガルは書類を片付けている。ここまではいつも通り。だが、どんなに見回しても、セルがいない。


「セルじゃったら、すぐに部屋に行ったのう。多分寝たんじゃろう」

「最年少だしね。疲れ溜まってるんじゃない?」


 セルは、最年少だというのに、訓練中も弱音を吐かなかった。その分、僕らより精神的にきついのかもね。


「さて、わらわもそろそろ寝るとするかの」

「私も寝るのです」


 ちびっこ達はどんどんと寝てしまうようだ。残っているのは珍しくギルド長らしいことをしているチーガルと、今だに武器を磨いてるポワブルだけだ。

 あのチーガルが書類の処理をしているなんて。しかも、それなりに仕事が早い。


「まさかあのチーガルが仕事をするなんて……」

「引き籠りだけには言われたくないね」


 おっといきなりの辛口コメント。ストレスかな?


「なんか手慣れて無い?」

「そりゃ毎日片付けなきゃいけない書類が山ほどあるんだよ。いやでもなれるって」


 話しながらもどんどんと書類を片付けていく。この人って意外と器用かもしれない。


「差し入れっす」


 気づくと、ポワブルがマグカップを三つ持ってきてくれた。中には透明な液体が入ってる。……うん。お湯。


「差し入れって、お茶とかじゃないの?」

「いや~。自分お茶入れられないんすよ」

「なぜ差し入れしようと思ったし」

「まあいいじゃん。ありがと、ポワ」


 お湯を飲んで一息ついたようで、少しとげがなくなってる気がする。


「千曳は飲まないんすか?」

「いや。僕熱いの無理なんだよね」

「猫舌っすか」


 僕の猫舌はひどいもので、2、3分冷まさないとろくに手もつけられないレベルだ。

 雑談をしていると、チーガルの仕事も終わったようで、話に混ざってきた。


「さてさて。そろそろ少年のいつかの質問に答えないとね」

「いつかのって?」

「姫ちゃんは何者なのかについて」

「ああ、それか」

「そういえば、まだ話してなかったっすね」


 ポワブルが納得したように手を打った。

 そういえば、課外授業の後に聞いたっきりだったな。話してくれなかったから、てっきり聞いちゃいけないことかと思ってた。


「まず最初に、プリュスという街を知っているかな?」


 プリュスと言う単語を聞いた覚えはなかったが、見た記憶ならある。講座中に先生が描いた世界地図に書いてあったはずだ。


「確か、この街から北にまっすぐ行ったところにある街だっけ?」

「そうそう。中立派の中心都市でもあり、この大陸の中心でもある街、プリュス。通称和の町」

「そのプリュスがどうかしたの?」

「姫はその街のお姫様っす」

「へ?」


 思わずアホみたいな声が漏れる。言われたことを理解するのに、たっぷり数秒かかった。


「ナミが、姫? 物本の?」

「そ。驚いた?」

「そりゃね」


 いや~。姫姫と街中で呼ばれてるからには何か凄い人だとは思っていたけど、まさかそんなに位が高いとは。


「なんでそんなお偉いさんがこの街に?」

「それには聞くにも涙、話すにも涙な出来事が……」


 何があったて言うんだ? 一番ありがちなのは、お家騒動に巻き込まれて追放されたとかか?


「そんなに深刻でもないっす。ただ街が魔族に乗っ取られただけっすから」

「ちょっと待て。そっちの方が深刻だからな!?」

「大丈夫っすよ。街は普通に機能してるっすし、この事を知ってるのは街の上層部の中でもほんの一部っすから」

「……それのどこが大丈夫なんだ?」


 少なくても僕にはかなりヤバいようにしか聞こえないんだけど。


「乗っ取られたって言っても、殺されたわけじゃないし、政治とかにも直接手を出してるわけでもないし。それでも、人質を取られてるのは確かだけど」

「何も対策されてないのか?」

「目に見えては出来てないね。妙な動きをして人質を殺されたらたまんないし」

「目に見えないところだと?」

「色々やってるよ。姫ちゃんもその一つ」

「……つまり、あいつは家族を助けに行くつもりなのか?」

「そういうこと」


 小さい身でありながら、何とけなげな。それにしたって、無謀すぎるんじゃない?


「助けられるのか?」

「姫ちゃんだけじゃ大変だね。でも姫ちゃんには仲間と部下がいるから」

「部下?」


 あベんしゃーは仲間だよね。だとすると部下はどこに?


「プリュスから逃げてきたとから話すか」


 プリュスに魔族が侵入したとき、ナミは数人の部下とポワブル、シュルクとともに脱出して、数日間かけてこの街に流れ着いた。

 当時のツァオベラーは当主が変わり、反獣族派になりつつあった。街で、王様が雇った獣族を暴れさせるという姑息な手を使って、人の心を、徐々に反獣族派に持っていったのだ。

 ナミは、幼い時からポワブルやシュルクと言った獣族との交流があったため、罪のない獣族が迫害されるのが許せずに、自分も大変だというのに獣族保護運動を開始。

 町にいた獣族を集めてあベんしゃーを結成し、依頼をこなすことで獣族のイメージを良くしていったらしい。

 最終的に獣族の安全を勝ち取ったため、親しみをこめて姫と呼ばれるようになったらしい。



「何というか、あの年で凄いことしてるな」

「でしょ? そのおかげであたしは今でもこの街にいるんだよ」

「それで、部下はどうしたんだ?」

「まあ、待ちたまえ」


 なんだそのたまに入る上から目線は。


「さっきの話から分かるっすけど、昔はあべんしゃーはもっとメンバーがいたんすよ。で、獣族保護運動が終わった後に多くの人はプリュスの奪還に協力してくれることになったっす。で、今は姫の部下の人と迷宮都市で修行中っす」

「ナミを置いてってもいいのか?」

「何人かは残ってこの街のために働いてるっす。それにこの街は、もともと治安がいいっすから」


 だからって、大事な姫を置いて行ってもいいのかな? まあ、部下ならなるべくナミに危険なことしてほしくないと思うか。


「でも、姫ちゃんはそれであきらめないんだよね」

「そうっす。現にこうして頑張って強くなろうとしてるっす」

「あたしとしても、姫ちゃんに危険なことはしてほしくなんだけどな……」

「姫は一度決めると曲げないっすから」

「分かってるって。ちょっとやそっとじゃ死ねないからだにしてあげるから覚悟してよ」


 その後もしばらく話した後、お開きになった。

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