2-8 異世界コンビニ インチ24
やっほー。千曳だよ。
ライターは何かとレジ横に置いてあるイメージがあるんだよね。
あんなに簡単に火を出せるのに子供の手の届く場所に置いていいのかな。
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「セルと買い出し行ってきて」
異世界講座の午前の部が終了した後、チーガルに連れられて城の訓練所に着いた途端、そんなことを言われた。
訓練所、とは言っているが青空教室で、訓練スペースと言った方がいいかもしれない。なんでも、何かしらの結界が張ってあって、周りに被害は出ないらしい。
ナミ達は休憩中らしく、カルネさん以外は座って休んでる。みんな遠目で見ても分かるほど疲れている。
「行くのはいいが、なぜセルと?」
正直な話、セルはあまり得意じゃ無い。話し方が独特で、何言ってるのか分かり難いからだ。たまに日本人でも知らないような四字熟語挿んでくるし……。
出来れば他の人とがいいな、という念とともに質問するが、あっさり切り捨てられた。
「セルが一番暇だから。姫ちゃんとシュルクちゃんはどれくらい魔法が使えるか見なくちゃだし、ポワは前衛で壁役するための戦闘訓練しないとね。それにセルは最年少だからあまり戦わせたくないんだよね」
「え! あいつ最年少なのか?」
僕はてっきりシュルクの方が幼いとばかり思っていたが、どうやら違うようだ。
「……あのさ、少年。見た目でなんとなくわからない?」
「なぜ他人をそこまでじっくり見る必要がある?」
僕が逆に質問すると、先生は深いため息をついた。
「少年はもう少し周りに興味を持つ必要があるね」
「……? 何のことだか」
僕の言い方に何かを感じたらしい先生は、話題を切り替えるために紙と袋を渡してきた。
「……まあいいか。はい。買ってくるものはこのメモの書いてあるから。あと、この袋に買うものを入れて、カウンターで冒険者カードと一緒に渡して。昨日のうちに少し入れておいたから、足りると思うよ」
「おっけ。行ってくる。セル!」
★★★
そんなわけで僕は今、『インチ24』の前にいる。隣にはセルもいる。昼時なので、通りには大勢の町人がいる。
改めて見ると、大きな建物だ。異世界で木造二階建てなんてあまり聞かない気がする。扉は、西部劇とかで出てくるバーの扉に似ている。お昼時だからか、一昨日に比べて出入りする人が少ない。
それでも、窓からはそこそこな人数が買い物しているのが見える。
チーガルに渡されたメモを握りしめつつ扉を開けると、軽快な音楽とともに冷気に当てられる。どうやら冷房完備のようだ。昼間は暑いから、これは助かる。
「いらっしゃいませー。インチ24へようこそ」
入るとすぐ横にレジがあって、店員さんがスタンバってる。見たところ目立った汚れもなく、かなり清潔な感じだ。
ちょうど買い終わった人がチーガルに渡されたのと同じ袋を持っていた。エコバックかな?
「なあ、この袋って何なんだ?」
「インチ24限定、買い物袋。沢山入る。カードで、簡単購入」
「……お前、普通に話せたのか」
無口そうなしゃべり方だが、前よりはましだ。四字熟語がなくなるだけでここまで分かりやすくなるとは……。
店に入っていく。すると、レジの前にテーブルが置いてあり、黒くてごつごつした、小さめで直方体の何かが山のように積んであった。
山の前には紙が立ててあり、大きな文字で『黒鬼稲妻』と書かれてある。そのほかにも小さな文字で色々書かれている。読んでみると、どうやらこれはお菓子の様だ。値段は1バス。……バスって何だろう?
とりあえず、分からないことは質問するのが最近のマイブームになっているから、例に漏れず質問してみた。
「これは?」
「これは、『黒鬼稲妻』。グルメ雷神が、絶賛した……らしい」
また良く分からないやつが出てきたぞ。雷神が……グルメ? 異世界って分からないな……。
「うまいのか?」
「まあまあ、らしい」
セル自身、食べた事はないようだ。
しばらく眺めていると、レジの人が、一本どうですか? と言ってきた。
もらえるものは何でももらえ。とりあえず一本もらってみることにした。
一齧りすると、サクサクとした歯ごたえとともに、口の中に濃厚なチョコレートの味が広がった。ココアクッキーにチョコをかけた感じかな? 一言で言うと、とても美味しい。
すると、セルが感想を求めてきた。
「どんな、感じ?」
「ん~。食レポなんてしたことないから上手く表現は出来ないかな。とりあえず食ってみろ」
そういいながら、食べかけを差し出す。でも、セルはなかなか食べようとしない。
「どうした? 遠慮してんのか?」
「いや、別に……」
「じゃあさっさと食え。うまいぞ」
それでもまだ渋っているから、強引に押し付ける。
セルはそれでも悩んでいたけど、諦めたように食べ始めた。
「ん。美味しい」
「だろ?」
セルが食べ終わるのを見計らって、レジの人が購入を進めてきた。買おうと思ったけど、お使いの途中だから、お金が余ったら買うことにした。
「じゃあ、さっさと買って帰るか」
「ん」
メモを頼りにしつつ、人ごみをかき分けて食材を探す。いつも食べている果物や、まったく見たことがない物、食べ物なのかも怪しい見た目の物まで様々なものが売っている。名前も聞いたことないものばかりだ。それもそっか。異世界だしね。
しばらくそうしていたが、どうしても見つからないものが出てきたから、セルに聞いてみた。
「なあ、ライターってどこにあるか分かるか?」
探し物はライターだ。なんで異世界にこんなものがと思ったけど、異世界人って単語があるくらいには異世界から来た人がいるみたいだから、誰かが開発していてもおかしくはない……かな?
「これは、二階、生活用品売り場」
話によると、一階は食品売り場で、野菜や果物が売っている。二階は生活用品売り場で、本やら簡単な魔道具やらが置いてあるらしい。武器や防具、服なんかは置いてないようだ。
階段を上って二階へ。二階には、一階以上に人がいない。まあ昼間だし、みんなご飯食べてるんだろう。
目的の物はすぐに見つかった。地球のライターよりも一回り大きめだ。説明書が置いてあったから軽く読んでみると、炎を出す不思議な石があって、それをあれやこれやして使ってるらしい。専門用語が多くて分かり辛い。まあ、どうでもいいか。
ライターを袋に入れて、カウンターに持っていく。すると、レジの人はそれを秤の様なものに乗せた。中に入っている物の合計金額が分かるらしい。便利だな。
「合計で43BSになります」
冒険者カードを見ると、50バス入っていた。お、黒鬼稲妻買えるじゃん。とりあえず4つ程。
「これも追加でお願いします」
「はい。では47|《BS》バスになります」
レジの人は、僕が出した冒険者カードを受け取ると、機械に差し込んだ。しばらくしてから引き抜くと、僕に返してくる。確認すると、残りが3バスになっていた。……便利すぎじゃね?
袋を受け取って、レジの人から距離をとりつつ、うっかり聞き忘れていたことを訊いてみる。
「なあ、バスって何だ?」
「この世界の、お金の単位」
四字熟語がなくなるだけで大分話しやすくなったセルの話を聞いてると、大体1バス=30円くらいだということが分かった。
すると、あのお菓子は30円なのか。そこそこボリュームあったし、かなり安いんじゃないかな?
二人で『クロイナ(長ったらしいから縮めてみた)』を食べながら城に戻った。
クロイナはナミ達にはあまり受けが良くなかった。セルは大丈夫だったのに、味覚の違いってやつかな?
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