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絶晩成型  作者: 咫城麻呂
第二章 中立都市ツァオベラー
11/68

2-4 ギルド

 やっほー。千曳ちびきだよ。

 どんな異世界もののラノベでも、一回は私闘をすることになる気がするんだよね。

 ほんと、自分勝手に争い事を他者に押し付けないでほしいね。


 ――――――――――――――――――


 目の前のギルドことぼろぼろの建物は木造一階建て。正面の大きな扉には剣と本を合わせたようなマークが描かれている。

 屋根はところどころ穴が開いてるし、壁も一部が吹っ飛んで中が見えてる。

 大工じみた人や、明らかに大工じゃない見た目の人が屋根の上でハンマーを振り回していたり、しきりに出入りしている。

 とりあえず、ナミに確認を取っておく。


「えっと……これがギルド?」

「そ、そうなんじゃが……」

「ぼろぼろ~?」

「ひどい有様なのです」


 みんな驚いた表情をしている。いつもはこんなんじゃないのかって当たり前か。


「とりあえず、ギルドって何?」


 ラノベとかゲームとかである程度知ってるけど一応聞いておく。何か知らないことがあるかもしれないしね。


「そういえばまだ話してなかったのう。ギルドとは冒険者にとって最も重要な施設の一つなのじゃ。いろいろなところから依頼が来て、冒険者はその依頼を達成することで報酬を受け、生計を立てておるのじゃ。依頼は、魔物討伐や素材集め、店番など多岐にわたるのじゃ」


 うん、大体僕の知っているギルドと同じ感じだね。それにしてもひどい有様だ。いったいどうしてこうなったのか。


「ひっめちゃーん」

「うわぁ!?」


 その時、突然現れた虎耳幼女がとても怪しい言葉を吐きながらナミに飛びついた。日本だったら確実に通報されるレベルの言葉だ。

 と言うか、姫!今姫って言ったよね!?街ゆく人にもたびたび話しかけられるし、ナミっていったい何者なんだろう?


「ち、チーガル殿!?。降りるのじゃ!」

「まあまあいいじゃん。友好のしるしにさ。確か姫ちゃんはここら辺が――」

「あ…そこは、だめじゃぁぁぁ!!」


 しばらく謎の幼女とナミの楽しそうな声が、夕焼けの空にこだましていた。


「はぁ、はぁ。もう満足したかの……?」

「うん。やっぱ姫ちゃんは反応が面白いなぁ」


 遊び疲れたのかナミはへとへとだ。それに対して、幼女は全く疲れが見えない。


「やっぱりもっとスタミナ付けた方がいいよ?」

「それは、お主が、鍛え、て、くれぬからじゃろう」

「やっぱり?でもだめ。姫ちゃん達を危険な目には合わせられないよ」


 何やらよく分からない会話が繰り広げられてる。部外者の僕にはさっぱりだ。


 それから少しして、ナミの息も整ったようで、幼女に質問し始める。


「それで、チーガル殿。一体ギルドで何があったのじゃ?」


 ナミがギルドの方を指差して訪ねる。すると、幼女が困った顔をする。


「大規模な私闘があってね。その余波さ」


 私闘とは、冒険者が超個人的な理由でほかの冒険者に喧嘩を売ることである。あ、僕がいろんなラノベを読んで得た知識ね。


「私闘の余波じゃと?一体何人やったらこうなるのじゃ!?」

「合計で百人ぐらいかな。最初に五人グループ同士がギルド内で私闘を始めちゃってさ。それに触発されて、周りにいた冒険者がどんどん巻き込まれてってね。気づいたら、この有様さ」


 幼女が自嘲気味に笑う。何者だ?この娘。まるで自分が悪いような言い方だ。


「……やっぱり最近の異常な残留死念グラッジポイントの上昇の所為かの?」

「そ。姫ちゃん達ほど強ければ問題ないけど、ほとんどの冒険者は出都禁止令を出してる」


 残留死念グラッジポイント。凄い響きの言葉だ。後で意味を聞いておかないと。


「あ、そうそう。検査結果どうだった?」

「その報告に来たところじゃ。ほいっと。……森に近づくほど、濃度が高くなっているようじゃ」


 ナミが両手を合わせると、手の間から光が漏れだした。ナミが手を離すと、右手に一枚のカードが握られていた。

 そのカードを幼女に渡す。そのカードを見て、幼女は「もうしばらくは出都禁止令は解除できなさそうだね」とつぶやいた。え?禁止令ってこの娘が出したの?ホントに何者?


「わらわ達でもピンチになるほどじゃしの」

「え?姫ちゃんたちがピンチに!?」

「そうじゃ。千曳がいなかったら、わらわ達はどうなっていたことか……」


 チラっチラっとさりげなく何かをアピールするナミ。多分さっきの話だろうなぁ。


「千曳ってこの少年?」


 ナミのアピールをがん無視して、幼女が僕をまじまじと見つめる。幼女なのに僕のことを少年呼ばわり。ホントに何者だ?


「こんな少年が?」


 幼女が胡散臭そうな目でこっちを見つめてくる。まあ確かにやったのは僕じゃないし、僕自身バクってるんじゃないかと思うくらい弱いからあながち間違いでもないんだけど。

 だけど幼女は荷物持ちのマジックハンドをしばらく凝視した後、何かを呟くと納得の言ったように頷いた。


「なるほど。少年は頼りないけど、この手なら余裕そうだね」

「じゃろ?千曳自体はとてつもなく弱いんじゃが、この手が強いんじゃ」


 納得したように頷きあう二人。……何が何だか わからない……。ただ一つ分かることと言えば、マジックハンドが見破られたってことかな。まさかもうばれるとは。

 さっきから黙ってる三人に話しかける。


「あれ誰?」

「チーガルさん。この都市のギルド長っす。見た目は幼女っすけど、元SSランクの冒険者っす」

「油断禁物~?」

「とっても強いのです」


 なるほど、ギルド長か。道理でそれっぽいセリフが聞こえると思った。……この見た目でギルド長って、成長遅すぎない?

 それにしても幼女っていうのはどこの世界でも強いんだね。日本でだって幼女は、とある種族の人間を出血多量にしたり、刑務所行きにしたり、社会的地位を崩壊させたりと最強の生物だもんね。


「まあいいや、この少年どうしたの?」

「森の方から歩いて来たんじゃ。しかも色々と訳ありでの」


 ナミが周りを見渡すと、それだけで何の意味か察したチーガルは僕らについてくるように言った。


 ギルドの中は外以上にぼろぼろだ。テーブルや椅子の残骸がそこかしこに転がっている。酒場みたいな感じかな?床にも穴やら爪跡やらが残っている。外よりも多くの人が修復作業をいている。中にはけが人もいる。自業自得だね。

 僕らは酒場には要は無いから壁際に進む。壁際にはカウンターがいくつかあるけど、今はだれもいない。

 チーガルさんは、カウンター横の扉から、裏に入って行った。僕らも続く。

 狭い廊下を通って、応接間みたいな部屋に着いた。向かい合って置かれたソファーとその間のテーブル以外は特に何もない、質素な作りだった。


「さてと、ここなら他の人に聞かれることはほとんどない。詳しく聞かせてもらうよ」


 チーガルがソファーに座りながら言う。僕とナミも倣って座る。セル、ポワブル、シュルクの三人は後ろに立っていた。

 ナミが話し出す。


「実はじゃな、千曳は残留死念グラッジポイントの上昇にかかわっていての」


 チーガルの目つきが鋭くなる。と同時に、息が出来ないほどの覇気に当てられる。


「落ち着くんじゃ。別に千曳に悪気はないんじゃよ。ただ成り行きでこうなったというか、生き残るために仕方なくやったというか……」

「それもそっか。異世界人ならそんなこと知らないだろうし」


 チーガルが元の表情に戻る。助かった。もう少しで窒息死するところだった。いやマジで。


「ようするに、魔物の群れに囲まれたから仕方なく倒しまくった。それも尋常じゃない量を。ってことでしょ?」

「ええ。まあ、はい。と言うか、なんでばれた!?」


 すっかり流されそうになったけど、なぜかばれてしまった。問いただすしかない。


「さっき姫ちゃんに教えてもらった」

「しょうがないじゃろ。チーガル殿の前に嘘は通じぬ」


 チーガルがあっさり白状すると、すかさずナミが弁明するように言う。


「どういうこと?」

「あたしは解析魔法の使い手でね。その手がサブアームじゃない、しかもスキルで、かなり強いってことぐらいすぐに分かるの」


 なるほど。だからマジックハンドの強さに気がついたのか。

 解析魔法。所見殺しに引っかからない凄い魔法だ。


「スキル持ってるのは大体が異世界人って話だからね。それに、魔力を感じられないのにも関わらず成長が遅すぎる」

「お前も魔力感知か」


 持ってる比率多くない?今のところ五分の二。


「あ、自分も持ってるっす。この二人ほどじゃないっすけど」


 訂正。五分の三。


「魔力感知って結構みんな持ってるのです」

「あたしもシュルクちゃんには負けるけどね」

「ところでさ、魔力の話と成長ってどんなつながりが?」


 突っ込みに気を取られて聞きそびれていたことを聞いてみる。


「そこら辺は今度一気に教えるから後。まずは冒険者カード作らないとね。姫ちゃん、説明は任せたよ」


 そいう言うと、チーガルは立ち上がって、廊下に出て行った。


「冒険者カードって?」


 そういえば受付のおっちゃんもそんな単語出してたが気がする。


「冒険者カードとは……まあ便利なカードじゃ。身分証明にもなる、お財布にもなる、強さの証明にもなる、一枚で三度おいしい素敵カードじゃ」


 そうしている間に、チーガルが戻ってきた。手には水晶玉みたいなものを持っている。


「説明受けた?受けたね。じゃあ、早速作りますか」


 チーガルが水晶をテーブルに置く。ゴトッ!!っと音がしたのは気のせいだろう。


「じゃ、この水晶に触れて、魔力を流してみて」

「魔力を流すってどうやって?」

「まだ流したことないか。えっとね、血の流れを意識して、次に血が魔力を流したい場所に集中するように意識するの。で、最後にその集中させた血を外に出すように意識するのさ」


 言われた通りにすると、水晶が光り出した。

 何も言われないからしばらくそのままにしていたら、カチャッという音が聞こえてきた。するとチーガルに離して大丈夫って言われた。


「はい、これが少年の冒険者カード」


 渡されたカードは、昨日ナミに見せてもらったカードに似ていた。何も書いてないけど、ステータスとか見れるのかな。

 とか考えてると、文字が浮かんできた。見ると、僕のステータスだ。見れば見るほど泣けてくる。


「そのカード凄いところは、自分自身の冒険者としての情報なら望むだけで見れるようになることだね」


 望むだけで、ねえ。じゃあ、魔物討伐数。

 お、出てきた出てきた。次レベルまでの経験値には程遠いけど、まあまあの数だな。

 が、ナミが覗き込んで唖然としている。


「お、お主、そんな数倒したのか?」

「ん?どれどれ。……あちゃー、こりゃまじいな」


 ナミに渡されたカードを見てチーガルが唸る。


「まずいのか?」

「まずいのさ」

「そんなにまずいのか?」

「大分まずいのじゃ」


 ん~。と二人が唸る。相当まずいみたいだな。


「そうすると、どうなる?」

「捕まる?」

「投獄?」

「死刑?」

「碌なことにならないようだな」


 やばいよやばいよ。異世界歴一週間で投獄かぁ。


「避けることは?」

「無理~?」

「ですよねー」


 まずったなー。


「そこを何とか」

「ん~~」

「せめてなにやったかぐらい教えて」

「知らないのか……ってそれもそうか」


 チーガルが説明してくれたことをまとめるとこうだ。

 魔物は普通に倒されると残留死念グラッジポイントと呼ばれる目に見えないものを放出するらしい。

 その残留死念グラッジポイントが一定の濃度に達すると、魔物がスポーンする。

 濃度が高いほど魔物の強さが変わるらしい。


「魔物が損害を与えると周囲の残留死念グラッジポイントが消えるんじゃ」

「じゃあ、ほっとけばグラッジポイントは増えなくなるんだね」

「そうじゃ」


 なるほど。だから冒険者は出都禁止なのか。魔物が強いってのもあるけど、勝手に倒してさらにグラッジポイントが増えなおかつ強い魔物がスポーンしかねないから。


「いつの間にか姫ちゃんが説明してるけどまあいいか。で、少年。どう?このまま牢屋行き、したい?」

「断固拒否する。僕の異世界生活はまだ始まったばっかりだからね」

「言うと思った。だからさ、あたしの弟子ってことでオッケー?そうすれば、身分をばらすことなく穏便に済ませられるけど」

「穏便に済むならそれに越したことはないね」

「じゃ決定ね」 


 それを聞いた瞬間、ナミの目が光った。


「それを待ってたんじゃ。千曳を弟子にするなら、当然千曳の弟子であるわらわ達も弟子にしてくれるんじゃろうな?」

「姫ちゃんたちってそんな関係だったの!?」


 しまった!って顔するチーガル。ヤバい。話についていけない。


「まあ、言っちゃったことはしょうがないね。いいよ、姫ちゃんたちも鍛えてあげる」

「やったのじゃ」


 喜ぶあベんしゃーの面々。あれ?僕だしにされてる?


「けど、一日やそこらで強くなれるわけじゃないってことは理解してよね。かなり長い修行になるからそこんとこよろしく!」

「望むところじゃ!」


 こうして、僕は成り行きでかなり厳しいらしい修行に参加することになった。

良ければ誤字脱字の指摘、感想お願いします。

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