表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絶晩成型  作者: 咫城麻呂
第一章 異世界ラオム
1/68

1-1 スーパー転校生

「ふぁ~~~」


 五月下旬

 入学のあわただしさや初めての中間テストの緊張感から解放されここ己御呂(おのごろ)高校1年部には穏やかな雰囲気が漂っていた。

 そんな雰囲気の中、先生の声には一切耳を傾けず、鳥の声を子守唄に僕こと夜持平よもつひら 千曳ちびきは眠りに就いていた。まあ嘘寝だけど。

 幸いなことに入ってすぐの自己紹介を「めんどくさい」の一言で切り捨てた僕は先生からもほとんどの生徒からも無視されてる。

 ただ二人を除いて。


「ちょっと、起きなって」

 小さな声とともに背中を小突かれる。

 しかしその程度の攻撃で僕の眠りが覚めることはない。

 だって嘘寝だし。

「ねえ、ちょっと」

「うるさいぞ、夜魅」

 周りから笑い声が漏れる。

 起こそうとするのを叱るあたり僕は相当嫌われてるらしい。

 夜魅はしぶしぶ僕を起こすことをあきらめたようだ。

 彼女の名前は出水下いずみした 夜魅よみ、僕の幼馴染だ。

 低身長のわりにスポーツ万能。でもちっとも勉強ができない。

 幼馴染ということもあってかいつも気にかけてくる。いじりがいのあるやつだ。


 しばらくしてチャイムが鳴りだした。

「じゃあ、しっかり予習、復習しろよ」

 そう言って先生は教室から出て行った。


「災難だったね」

 僕が笑いながら話しかけると夜魅はあからさまにいやな顔をしてきた。

 どうやら怒っていらっしゃるようだ。

「嘘寝するぐらいなら起きててよ」

「めんどくさい」

 夜魅はため息をついた。

 嘘寝ってだめなことなのかな?

「でも1.2.3時間目はちゃんと寝てたよ?」

「ちゃんとってなにさ。授業中に寝るとか。昨日何時間寝たの?」

「ん~~10時間くらい?」

 夜魅が思いっきりため息をついた。変なこと言ったかな?

「長すぎでしょいくらなんでも。なんでそんなに寝てまだ寝れるの?」

「眠いから」

「そのくせ身長平均以下だし」

「僕はこれで満足してるの。年齢偽装もできるしね」

「それは同感だけど」

「それに夜魅より身長高いし」

「うるさい」

 夜魅は自分の身長を気にしている。

「牛乳飲んだら?」

「私乳製品嫌いなんだよね」

「そうだった。煮干は?」

「無理。てゆうかカルシウムが入ってるのは大体嫌い」

「じゃあその身長で諦めて」

「うぐぐ」

 やっぱり夜魅はいじると楽しい。

「寝るしかないのかな」

「それしか無いね」

「でもそんな時間無いんだよね。勉強忙しいし」

「え?あの点数で勉強してるの?。」

「う、うるさい。そういうそっちはどうだったの?」

「まあ平均ぐらい?」

「どうやったらあんなに寝てて点数取れるようになるの?カンニング?」

「してないよ。ただ毎日12時間以上睡眠学習してるだけだって」

「それは勉強じゃない。ねえ、今度勉強教えてよ」

「めんどくさい。公仁に聞いて」

「あいつ勉強できるの?」

「お前よりわな」

「わっ。びっくりした。いたなら声くらいかけてよ」

 夜魅が跳び上がる。

 夜魅ってドッキリ弱いんだよね。

「次から善処する」

 こいつの名前は音野おとの 公仁こうじん。僕の幼馴染その2だ。

 かなりのイケメンでスタイルもいい。

 しかし欠点もあり、こいつはかなりのロリコンで二次オタだ。

「大成功。さすが公仁」

「ふっ。夜魅を驚かせるくらいわけねーよ」

「ちょっと千曳。気づいてたなら言ってよ」

「めんどくさくて、つい」

「まあいいや。ところで何しに来たの?」

「何って、周り見てみろよ」

 そう言われて周りを見てみるとやたらクラスメートが窓に群がってる。

 まるで獲物に群がるハイエナのように。

「何その例え」

「声に出てた?」

「ばっちり」

「アレどうしたの?」

「どうやらかなりお高い車が止まってるらしい。見に行ってみるか?」

「めんどい」

 とその時、教室中が、いや校舎中が沸いた。

 そんなに見てる人いるんだ。

 どうやらだれか出てきたらしくイケメンとか何とか聞こえてくる。

 見ると男子は青ざめた様子で窓から離れていき、女子は興奮した様子で外を見ている。

「そう言うと思って調べてきたぜ」

「お疲れー」

「相変わらずはやいね」

 公仁の趣味は情報収集と画像収集だ。

 その早さは凄まじく、また誰よりも情報を持っている。

「どうやら転校生らしい。それもうちのクラスに」

「なんでこのタイミング?」

「わからん。どこから来たか、何をしてたのか、名前以外全て不明だ。校長に金握らせてるかもしれないな」

 うちの学校の校長は金が大好きなのだ。

 でも、そこまでして入る必要この学校にあるのかな?


 しばらくして先生が戻ってきた。

「みんな席に着け」

 しかし女子は外に夢中で席に着く様子がない。

 その人はそんなに長い間外にいるの?

「その外の男子についてだ」

 ビシッ!!!。

 気づいたらみんな席に着いていた。

 はやい…!

「あの生徒はこのクラスの転校生だ」

 みんながざわめき始める。

 女子なんかは興奮が抑えられないらしい。

 しばらくして扉がノックされる。

「入りなさい」

 先生がそう言うと一人の男子が入ってきた。

 その瞬間、女子の興奮の理由がわかった。

 一言で言うと、とてもイケメンだ。

 身長は高く、鋭い眼は気の強さをうかがわせる。

 歩き方は優雅で堂々としている。

「我が名は天王あまおう 一御いちごだ。よろしく」

 低めのハリがある声。

 それだけでクラスの女子の半分がダウンしたようだ。

 免疫なさすぎとも思ったが、うちのクラスの男子の顔面偏差値とイケメンに属する人の残念さからしたらしょうがないと思った。

 え、僕? 話を聞く限りカワイイに属するらしい。 なんか複雑だな。

 にしても一人称が我って今時珍しいな。


 それから一週間もたたないうちに彼の人気は瞬く間に広まり、一年部だけでなく二年部や三年部にまでファンが出来たようだ。あの高圧的な上から目線がイケメンさに磨きをかけるんだって。告った人は100人を超えたらしい。けど、全員振られたみたい。

 イケメンって大変だね。つくづく嫌われていてよかったと思う。彼女なんているだけ無駄だし。

 彼は勉強やスポーツ、料理や音楽までできるまさにエリートだった。

 一年部の女子は1人を除いて休み時間には彼の周りに壁を作って質問攻めにしている。

 まったく。うるさすぎてろくに寝れやしない。


 そして今日。

 クラス委員長たっての希望で天王君に質問しようの会が開かれた。

 休み時間ごとにあれだけ聞いといてまだ足りないと申すか。

 女子ってこえ―。

「天王君ってなにが好きなの?」

「どこに住んでるの?」

「誕生日はいつ?」

 ここにきてそんな初歩的な質問?

 今までいったい何を聞いてたの?

 天王君は一応全部答えてるらしい。こいつ慣れてやがる。

「どこから来たの?」

 誰かが小さく「きた」と言った気がした。

 そしてその時彼の雰囲気が変わった。

「ラオムというところだ」

「へー。そんな国あるんだ」

 もちろんそんな国あるわけがない。

 周りにいる人は気づいていない。

 いや、数人は気づいているようだ。

「来てみたいか?」

「もちろん。でも、遠いんじゃない?」

「いや、我の力を使えばすぐに着く。どうだ?」

「ホントに?行きたい行きたい」

 周りの女子たちが口ぐちに賛同する。

 彼女らはもう彼のとりこのようだ。

 彼がなんと言おうが無意識にそれが正しいと信じている。

 さっきから彼が言ってることが分からない。

 とても嫌な予感がする。

 急いでその場から離れようとした。

 だが遅かった。

「では招待しよう。我が故郷へ」

 そう聞こえた瞬間床が光り始めた。

 それと同時に意識が遠のき始める。

 薄れつつある意識の中で最後に見たのは満足そうに笑う天王君の姿だった。

書いちゃった。

いつまで続けられるかな…。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ