移動するのも大変だなぁ
翌日、エステリア王国へ向けての準備が始まる。
エステリア王国に行くためには、まず食料や水を確保する必要がある。
俺達が生きている時代よりも遙かに文明の劣っているかもしれないこの世界では、隣町に行くことすら困難なのである。
「ハイッハイッハイッ!」
「みんな、丸太を持ったか!」
すごく、かませ犬みたいな掛け声でギフトを使うのは、出席番号一番の相沢だ。
相沢が威嚇する熊みたいなポーズの後、引っ掻くように腕を振るうと暫く経ってから直線上にある樹木に傷が付く。
それは、相沢の風を操る能力によるカマイタチによる物だ。
竜巻から突風、カマイタチまで結構応用の利くその能力で伐採を行っているのだ。
相沢が何度もカマイタチを使って、そして漸く倒れた木をみんなで回収する。
そして、みんなで佐々木が金属操作で作ったノコギリを使ってバラしていく。
何を隠そう、俺達は馬車を作っていたのだ。
「むむ、むむむ……」
「先生、どうでしょうか」
「なっとらーん!」
俺達が木をバラバラにしている横では陶芸家ごっこするアホな奴らの姿があった。
それは、土を操る能力の樋口さんと田中である。
樋口さんが土を操って壺を作り、田中が焼き上げる。
ただ、焼き加減とかあるのか罅が発生したりする。
そして、そんな罅がある奴が出ると田中は樋口さんに持って行って、ガシャーンと割って貰ってるのだ。
なんだかんだ、二人とも笑っているので楽しいらしい。
この壺には水を貯める必要があるため、罅などのチェックは必須である。
最悪、金属で補強しても良いが金属には限りがあるので最後の手段にしたい。
そんなこんなで好き勝手やっていると、まぁ村の人達は気分がよろしくないわけである。
ということで、一応俺達は外交係を作っておいた。
「んっ……パッ!」
「おぉ!?」
「むぅ……パッ!」
「おぉ!」
それはギフトを使った促進栽培である。
畑の前でありがたい雰囲気を出しながら、植物を操る渡辺さんがなんか儀式っぽい動きをしながら植物を生長させるのだ。
どっかで見たなとか、あれとなりの何たらのパクリじゃないかと思うけど、一応リスペクトだから大丈夫らしい。
何が大丈夫なのか、著作権とかだろうか。
まぁ、難しいことは大体魔法ですといえば誤魔化せるので野菜を作る魔法ってことで食料を増やしている。
ただ、急激に成長するため畑の栄養は根こそぎなくなるので肥料を撒くことを忘れないで欲しい。
一応、森の土を集めて畑に混ぜるように指示をしているけど俺達が居なくなってからもやってくれるだろうか心配である。
こうして、食料や水、運搬の道具などを作ることに数週間の時間を掛けていた。
まぁ、ある意味で図工や技術の授業というか校外学習というか、勉強にはなったと思う。
村にある荷馬車を参考に作ってみたが、そう簡単には見本があってもできない良い勉強にはなった。
「ところでさ、どうやって大量の荷馬車を引くの」
「そんなの、馬を使ってに……」
「馬……いないよね」
みんなが喜び、出発計画を好き勝手好きなグループで集まって離している間、俺は近くに居たいつものメンバーである松田と江戸川と喋っていた。
そして、会話の中で致命的なミスに気付いていた。
「これ、先生に言った方がいいかな?」
「加賀、先生だぞ。きっと、その問題には何か対策を考えているに違いない」
そうなのだろうか、と思っていたら離れたところで馬のこと忘れてたという声が聞こえた。
どうやら、先生がその発信源らしい。
「先生も人間だ。失敗することもあるさ」
「やっぱり忘れてたね」
「まさか、考えていないとは」
緊急事態が発生したのでホームルームである。
教室は壁も黒板もない村はずれです。
「ホームルーム始めまーす。先生からの連絡、ぶっちゃけ馬がいないけど荷馬車どうしよう」
「はい、みんなで引けば良いと思います」
「無理だろ、重いんだぞ、出来るわけねぇーよ」
「うわぁ、やりたくねー」
「そうだ、動物を捕まえるとか?」
「動物を探せ、森に行くぞ!」
一気に騒がしくなり、収集が付かないと判断したのか先生は柏手を打って意識を集める。
それから、静かになるのを待ってから静かになるまで十五秒掛かりましたとかイラッとくるようなことを言って決定したことを話し始めた。
「よし、パッと聞いた感じだと俺達が引くのは嫌みたいだから動物を見つけたいと思います。長島が捕まえたオオカミがいるんだ、でっかい鹿とか山羊とか馬とかいるだろう、たぶん」
「確かにあの大きさなら一頭捕まえられたら荷馬車一台くらい余裕だね」
荷馬車の数は全部で五台、うち一台は巨大オオカミ命名モロが運ぶので四匹の動物を見つけないといけない。
名のある山の主とか、なんかそういう巨大な何かが必要である。
でも、森にどんな動物がいるのか正直分からない。
「やっぱり猪かな、でっかいし」
「そうだな、猪の繁殖力は高そうだ」
「森でしょ?普通に兎とか鳥くらいしかいないんじゃない?」
そんな感じで移動手段を確保することが決定した。
森に入ることになる上で一番の活躍は、村での人気取り、アイドル活動もとい外交を行っていた渡辺さんだ。
「森の精霊達よ、私の声を聞き届け、我が目前に道を拓きたまえ」
「それっぽい、それっぽい雰囲気だね」
「様式美だな。ただ、ちょっと恥ずかしそうだぞ」
「本当だ、耳が真っ赤だ」
プルプルしている渡辺さんが頑張ったお陰で、森がミシミシ良いながら成長する。
地面を突き破るように勢いよく木の根が飛び出したと思えば自重で倒れる木々、それによってゆっくりとだが道が出来ていく。
独りでに左右に分かれるように木々が倒壊していくので凄い光景だ。
倒れた木は急激に成長して、あっという間に枯れていく。
そんな枯れて横に倒れた木の側面から小さな芽が出て、枝となり、それが大きくなり、樹木となる。
倒れた木から新しい木が生えてくる、自然ってすごい。
で、植物の映像を早送りで流したような光景を作りながら森の中に広場を作る。
ここを拠点に探索して、動物を見つけるのだ。
「ついでに家を建てよう」
「んな無茶な」
「渡辺は植物を操れるから、こう枝を絡めるとかしてみれば家くらい出来るだろ」
流石に無理じゃないかと思うがそんな無茶を実際にやるらしい。
応援される中、渡辺さんが実際にやり始めたからだ。
地面から等間隔で横一列に植物が生えてくる光景は実に圧巻である。
すごい、本当にやっちゃってるよこの人。
「精霊マスターの……私に掛かれば……このくらい……チョロいわ……」
「ノリノリな所悪いけど、既に満身創痍だよね」
「へ、平気だし!」
とは言いつつ、膝に手をついてゼェゼェ肩で息をしているので説得力に欠けていた。
獣探しは案外、簡単に出来た。
大型の動物というのは一度に食べる量も多く、痕跡が残りやすかったからだ。
不思議なことに、すべて巨大なオオカミである。
まぁ、元々オオカミは群れで行動するからそれは必然だったのかもしれない。
こうして、俺達はエステリア王国までの足を得たのだった。
高山先生 能力???
生徒一覧
1相沢達也 能力 風操作 風を操る能力。
2安部裕也 能力 生命感知 生物を認識する能力。
3伊藤香織 能力???
4飯塚綾子 能力???
5一之瀬菜緒 能力???
6江戸川啓 能力 探偵 探偵になる。
7加賀満 能力 吸収 吸収した物の性質を得る。
8菊池順子 能力???
9倉橋香奈 能力???
10佐々木次郎 能力 金属操作 周囲の金属を操作する。
11佐藤玲央 能力???
12佐野桃子 能力???
13清水葵 能力 調理 料理に関する事柄を理解し行使する。
14鈴木亮太 能力???
15鈴木玲子 能力???
16田中龍之介 能力 炎操作 炎を操る、色や温度は自由自在。
17長島秀雄 能力 記憶操作 記憶を植えつけたり読み取ったりすることが出来る。
18長野真 能力???
19葉山幸彦 能力???
20樋口秋帆 能力 土操作 土を操ることが出来る。
21藤俊介 能力???
22保坂真由 能力???
23細内京子 能力 思念伝達 思念を送る。
24松下芽衣 能力???
25松田英雄 能力 無効化 対象を無効化する。
26松永清 能力???
27三浦和子 能力???
28水谷凜 能力???
29皆本和馬 能力???
30宮野茜 能力???
31毛利友則 能力???
32最上可憐 能力???
33森蘭子 能力 念力 思念による物理干渉。
34薬師幸太郎 能力???
35矢口美緒 能力???
36八雲響 能力???
37安田正弘 能力???
38和田翔 能力???
39若林隼人 能力 空中浮遊 空気抵抗や重力を無視して浮遊できる。
40渡辺咲 能力 植物操作 植物の成長や突然変異などさせられる。