いいなぁ、俺も狼に乗ってみたいな
俺達のクラスは全部で40人、先生を入れて41人だ。
当然、こんだけいれば好き勝手する奴がいても可笑しくない。
「でも、なんかみんな理性的だよね」
「それは違うぞ加賀」
俺の溢した言葉を松田が拾った。
一体、何が違うんだろうか。
「本当は好き勝手やりたいんだ。だが、みんなする意味がないからしないんだ」
「それまた何で」
「まぁ、俺達がいるからそんなことしても無駄だと判断しているんだろう。悟っているってことだ」
「なるほど、悟り世代って奴だな」
確かに何かしようとしても、俺達なら簡単に制圧できる。
抑止力って奴か。
あれ、じゃあ俺達がいなければ好き勝手するってことか。
「まぁ、先生が帰ることを目的にしているけど、みんな内心ではどうだろうな。自分達が迫害されるような世界に帰りたいとは思わない奴もいるはずだ」
「迫害って……」
「実際、制限されていることは多い。職業選択、居住区、移動制限、俺達は当たり前だと思っているが、やはり何処か無能力者とは違うんだ」
そうなのだろうか、俺達ギフトホルダーは迫害されているのか。
こんな状況になって初めて考えたが、その考えはヴィランに通じる危ない考えじゃないだろうか。
「まぁ、理解は出来ないだろうさ。俺は無能力者だと思って生きてた期間があるから、価値観も変わってるんだろ」
「でも、俺達は特別だから仕方ないんじゃ?」
「ギフトホルダーは異能に責任を持つべきだって教育されたけどな。特別だからって責任を果たす必要はない、と俺は思うんだ」
そうなのだろうかと首を傾げていると、俺達の話を盗み聞いていた江戸川が口を挟んできた。
何が楽しいのかニヤニヤと胡散臭い笑みを浮かべながらだ。
「それは違うぞ、諸君」
「なぁ、松田。椅子ってさ、疲れたときに座れるから便利だよね」
「いや、そもそも運ばなければ疲れないぞ」
「無視!ちょっと、僕のこと無視しないでよ!」
自分で運んだ椅子に座って、移動しているみんなを見ながら少し休憩。
ところで、この世界ってどんな世界なんだろう。
異世界ってことはゾンビだらけだったり、ロボットが人間を支配してたり、はたまた剣と魔法のファンタジーかもしれない。一番嫌なのは、文字とか言葉が微妙に違って拉致されて人体実験される異世界だな。
「おい加賀、江戸川の話を聞いてやれよ」
「しょうがないな」
「もう、いいかい諸君。僕達がこんなに理性的なのはね、ギフトホルダーだからなんだよ」
何の話だっけ?あぁ、どうしてみんな理性的なのかについてか。
ギフトホルダーだからってどうして理性的なんだろうか。
「よくあるネット小説を加賀は参考にしているけどね、あれって異世界に来てから能力に目覚めているんだ。つまり、子供の時から異能を持っている僕達は異世界に来たくらいでテンションが上がってノリの赴くままに行動したりしないわけだ」
「なるほど。でも、何も起きないとつまらないよね。物語だったらだけど」
やっぱり、こう、能力に溺れて仲間割れが発生するイベントとか起きそうなものだけど。
いや、その筆頭となりそうなのってコピー能力者か。
「そうか、俺だったのか」
「急にどうした?」
「いや、俺が悪役ならクラスの人間から能力を奪って皆殺しにするのかなって」
「……俺の能力を吸収したら使えなくなるんじゃないか?」
「そもそも吸収出来るのかな?」
松田と二人で生産性のない話をしていたら、クラスの方で何か発見があったようだ。
探知系の能力を持つ、安部君がハンドサインで待てと指示を出してきたのだ。
凄い、まるでプロの狩人が獲物を見つけた時のようだ。
その鋭い眼差しに、みんなの息が止まる。
「来る」
「何が来るんでしょうか」
安部君の宣言通り、森に変化が起きた。
ガサガサと茂みが揺れて中から何かが出てくる。
「来た!」
「い、犬だ!野犬だぁぁぁ!」
誰かの叫び声が聞こえた。
それは茂みから現れた動物に対する発言だ。
しかし、普通の動物ではない。
その大きさが車程の大きさなのだ。
なんだ、あの巨大な犬は……
「グルルルル!」
「なんか映画に出てきそうだね」
「みんな、森さんの近くに集まるんだ」
森さん、彼女は念力の使い手。
念力の応用力は凄まじく、バリアーのようなことが出来るのだ。
先生が森さんの近くに集まるように言うので指示に従う。
どうでもいいけど、明らかに危険なのに冷静だよね。
「あれって狼なんじゃね?」
「テロの方が怖いよね、何が起きるか分からないし」
「アレって飼えるかな?」
雑音を拾うと、なんだか危機感を抱いていなかった。
まぁ、そりゃ、ヴィランがテロとか起こすことに比べたら怖くないか。
外国の人は日本の地震にビビッたりするらしいが、日本人は普通にしている。
それと同じでテロに無能力者はビビッたりするらしいが、異能者はビビらない。
だって、回復系に治して貰えばいいからね。
「そうだ、細内!あれ、行け!ゴー!」
「そ、そうか!こんにちわ、狼さん」
ざわざわするクラスの中で、押し出されるように女子が狼の前に立った。
彼女は応援されながら、狼に向かって視線を合わせながら挨拶した。
いきなり動物に話しかけて頭可笑しいと思うかもしれないが、細内さんは大真面目であった。
というのも、彼女の能力は思念伝達。英語で言うと、テレパシーだ。
つまり、言葉は要らず気持ちで通じるのだ。
コイツ、直接脳内に……みたいな。
『これって口を動かさない分、楽だよね』
「細内の能力を持ってたのは分かったが、頭の中で大音量だからやめてくれ」
『人の異能力だから、調節が難しくて』
「うるせぇ……」
さて、細内さんの御友達作戦は如何に……
「どうだ、細内」
「俺様、お前ら、丸齧り」
「本当にそう言ってるのか!お前、意訳じゃないだろうな!」
随分とネタに走った動物である。
っていうか動物、それともモンスター?サイズ可笑しいし動物じゃないような。
「ここは任せろ!漆黒の炎に抱かれて消えろ!ダークネス――」
「グラァァァ!」
「ひぃ!?なんで、火に怯えないんだ。魔法か、魔法で慣れてるのか」
調子に乗って黒い炎を腕に纏いながらカッコ付けた田中が狼さんに吠えられて退却した。
何しにきたんだよ、田中ぁ!
アホな田中の挑発で、狼さんは恐ろしい速度で飛び掛ってきた。
おぉ、迫力あるなぁ……
「バリアー!」
「おぉ、凄いぞ森!田中と大違いだ!」
「頑張って森さん、田中君と大違いだわ!」
「おい、みんなしてディスるのやめてくれよ!」
俺達に、鋭い爪が突き刺さるかもという寸前で空中に狼はピタッと静止した。
森さんの念力で固定されたからだ。
原理は単純、狼の対表面にバリアーを念力で構築しているのだ。
全身がコンクリに包まれているようなものだ。
「それで、アレってどうするんだろう」
「取り合えず、テイムしてみればいいんじゃないか。ゲームみたいに」
「先生、洗脳すると良いと思います」
「そうか加賀、洗脳か。誰か洗脳出来たか?」
取り合えず、狼が仲間に加わった。
因みに狼は、記憶を操作できる長島君が、生まれてからずっと一緒に生活していたという偽の記憶を植えつけて仲間にした。
「クゥーン、クゥーン」
「おぉ、よしよし!」
「あんなに威嚇してたのに、長島の能力はえげつないな」
「いいなぁ、俺も狼に乗ってみたいな」
高山先生 能力???
生徒一覧
1相沢達也 能力???
2安部裕也 能力 生命感知 生物を認識する能力。
3伊藤香織 能力???
4飯塚綾子 能力???
5一之瀬菜緒 能力???
6江戸川啓 能力 探偵 探偵になる。
7加賀満 能力 吸収 吸収した物の性質を得る。
8菊池順子 能力???
9倉橋香奈 能力???
10佐々木次郎 能力???
11佐藤玲央 能力???
12佐野桃子 能力???
13清水葵 能力???
14鈴木亮太 能力???
15鈴木玲子 能力???
16田中龍之介 能力 炎操作 炎を操る、色や温度は自由自在。
17長島秀雄 能力 記憶操作 記憶を植えつけたり読み取ったりすることが出来る。
18長野真 能力???
19葉山幸彦 能力???
20樋口秋帆 能力???
21藤俊介 能力???
22保坂真由 能力???
23細内京子 能力 思念伝達 思念を送る。
24松下芽衣 能力???
25松田英雄 能力 無効化 対象を無効化する。
26松永清 能力???
27三浦和子 能力???
28水谷凜 能力???
29皆本和馬 能力???
30宮野茜 能力???
31毛利友則 能力???
32最上可憐 能力???
33森蘭子 能力 念力 思念による物理干渉。
34薬師幸太郎 能力???
35矢口美緒 能力???
36八雲響 能力???
37安田正弘 能力???
38和田翔 能力???
39若林隼人 能力???
40渡辺咲 能力???