魔女みたいな人
俺の名前は、久山春樹。今年で25歳になる。ちなみに独身だ。
生協のドライバーをやっている。
仕事としては、生活に必要な食べ物や雑貨など様々なものを個人宅へ週1回ずつお届けすることだ。
簡単なようで、実はきついことばかりだ。
夏の暑さはとても厳しく、冬はとても寒い。団地や階段の上り下りなどそうゆう場所に限って、2リットルのペットボトルなどもろもろ生協で利用するお客様が多いのは事実だ。
配達以外では、お客様を増やすための営業活動や販売促進など到底達成できないような膨大なノルマが毎週といっていいほどあり、仕事にはとてもうんざりとしていた。
「転職しようかな・・・。」
と毎日ように頭によぎる文字。
そんな中でも、俺の楽しみは、やっぱり美人の奥さんとの何気ない会話である。
曜日ごとに自分のコースは変わらないため、当然お客様とも仲良くなる機会が多い。
「あぁ・・・。俺もこんな綺麗な女性と結婚できたらな。」
配達で出会う度、毎日のように思いを募らせる。
とりあえず、生きていくためには働かなくてはならないため、何となく決めた会社に、何となく入り、なんとなく3年がたった冬の出来事である。
営業活動で加入して頂いたお客様が新しく俺のコースに組み込まれたと会社から報告を受けたので、
お伺いしてみると、還暦を過ぎた魔女みたいな怪しげな女性だった。
しかし、せっかく自分のところに新しく入っていただいたお客様だと思い、
「始めまして、これから対応させて頂きます。久山春樹です。宜しくお願いします。」
と元気よく挨拶をすると、
「木村です・・・。よろしくどうぞ・・・。君・・・。こっちの世界にきてみないかい・・・。」
と意味深な発言をしてきた。
色々な人間がいる中でも、この女性だけは特に奇妙な雰囲気を感じた。
お客様にも色々といるな感じ、とりあえずその日は挨拶で終わった。