表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/18

二階堂拓也、登場

「悠さん、少しお時間よろしいかしら?」

ある日の放課後、私は見知らぬ女子数人に呼び出された。心配する美穂達を宥めて、彼女達についていく

「えっーと、何か用事ですか?」

…返事がない。もう一度尋ねるが、完全シカト。

見たところ先輩のようだ、少し怖いお姉さま達。


不肖デブ。私は無実です。


たどり着いた先は視聴覚室であった。

そこには、人の好さそうな笑みを浮かべる一人のイケメンがいた。

彼の名は二階堂拓也、攻略キャラの1人で爽やか系の好青年。

じつは私が攻略を楽しみにしていたキャラでもある。


王子様っぽくてカッコよくて、素敵じゃないか。腹黒、マザコン、何でも来やがれ

もちろん、2次元の話であるが



「二階堂様、悠さんをお連れしましたわ」

「ごめんね、手伝ってもらっちゃって。ホント、ありがと」

必殺イケメンスマイル。私を連れてきた怖いお姉さま達は、レジスト出来ずに悩殺されてしまった模様。

頬を染めて、夢見る乙女状態だ。私は何とか耐えて見せる。


「そんな、二階堂様が気にする事はございませんわ」

「そうですわよ。私たちは二階堂様のお役に立てただけで、光栄です」

「え、ホント?そういってくれると、俺としても嬉しいな。いつも、感謝してるよ」

またまた、王子スマイル。二階堂拓也、彼の事はキラキラ王子と呼ぶことにしよう。


「彼女と二人だけで話があるから、悪いんだけど、二人にしてもらっていいかな?」

空気が張り詰める。

周囲の温度が2度ほど下がった、気がした。


「あ……あら?そうなんですの」

顔が全く笑ってないんですが


「うん、わざわざ呼んでもらったのに悪いね」

「お、お気になさらずとも。」

「それでしたら、私たちは失礼しますわ」

彼女達は、ものすごい形相で私を睨みながら、この場所を去っていく。

あれが、世にきく親衛隊様だろう。恐ろしい。

私は完全に被害者である。


「ごめんね。俺のせいで、何だか怒らせちゃったみたい」

恨めし気に彼を見ると、彼はまた素敵な笑顔で謝罪した。


「それで、私に話ってなんですか?」

気を取り直して、私は尋ねる。

このキラキラ王子から呼び出される理由が思い浮かばない。

長居は無用だし、とっとと済ませて退散することにしよう。


「じつは、君に相談したい事があるんだ」

「相談、ですか」

「うん。相談というのは、俺の弟の事なんだけど」

「えーっと、私は先輩の弟について何も知らないですよ。そもそも、弟さんいたんですね」

「あれ、知らなかった?でも、そうか。来たばかりだし、知らないのも無理ないか。俺の弟は『竹夫』って言って、2年で俺の1つ下、君のお姉さんと同じクラスなんだ」


初耳である。そもそも私の攻略情報には、そんな情報はないんだけど

恐らくモブキャラだろうな。一人、納得する。


「それで、その竹夫さんがどうかしたんですか?」

「…じつは俺たち、ここ数年はどうにもうまくいってないんだ。昔はそんなことなかったんだけどさ。最近は、さらにクラスからも孤立してるみたいで、俺も流石に心配になってきたわけ」

「竹夫先輩の事は分かりましたが…それと私に、なんの関係が?」

「簡単なことさ。君に協力をお願いしたいんだ」

なんですと?


「いやいや。どーして私が?」

「じつは君があの裕介と仲が良いと聞いてね。裕介が女子と仲良くするのって初めてなんだよ。あいつ、女嫌いだから。そんな君なら、俺の弟とも打ち解けられるんじゃないかと思ったんだ。俺の弟も、祐介に負けないくらい気難しい奴でさ。」

「そんな相手じゃ、私には無理ですって。裕介とは、家族なんで上手くやってるだけですよ」


何度か断わろうと試みるも、一向に引き下がらない拓也先輩、

「そこをどうか、お願い出来ないかな。1度、話を聞くだけでもいいんだ」


お願いします。

最終的に王子はそういって深く私に頭を下げた。弟の事を真剣に心配する兄の姿であった。

流石の私もここまでされたら気が引けてくる。

それに、この世界に来てから芽生えたのは、姉を大切に思う『悠』としての気持ち。


覚悟を決めると、私はまだ頭を下げる先輩へと声をかけた。

「分かりました。出来る限り頑張ってみますね。拓也先輩」

拓也先輩は一瞬驚いた後で、「お願いします。悠ちゃん」笑顔でそう言ったのだった―




「それで、ケンカの原因に何か心当たりはあるんですか?」

私は拓也先輩から詳しく聞く。引き受けた以上は頑張りたい。

「昔から俺と竹夫は比較されて育ってきたんだ。だから、俺に対してライバル意識みたいなものを持ってるんじゃないかと、俺は考えてる」

「つまりは、優秀な兄にダメな弟が一方的にコンプを抱いている、と」

「はっきり言うね。まあ、あくまで俺の想像だけどね」


否定しないと。まあいい。

攻略キャラでイケメンな兄、モブキャラで残念な弟。

確かに不仲になるのも分からんでもない。私だってグレる自信があるぞ。

さらに兄は弟を心配するいい奴ときた。傷口に塩をぬるとはまさに、コレ。


ドンマイ、竹夫。

というか境遇が私と微妙に似ていて、何だか親近感がわいてきた。

私の場合は、姉LOVEだけどな。


「でも私じゃなくて、同じクラスの姉の方が適任なんじゃ」

「はは、俺の知る限りじゃ、あいつに美人とまともに会話出来るスキルはないよ」

「……遠まわしに私を馬鹿にしてますよね、それ」

「ごめん、ごめん」

「別にいいですけどね。姉の遥が美人なのも、私がこんなんなのも事実ですし」

そういって、腹を叩いて見せる。

拓也先輩は楽しそうに笑った。ホント、イケメンだわーこの人。


「弁解するわけじゃないけど、悠ちゃんは、俺に対してさっきの子達みたいな反応をしないし。これでも、かなり信用してるんだぜ」

そういって、ウインクをしてみせた。この時ばかりは、私も反応してしまう。心なしか少し熱くなった気が。

改めて思う、この人は危険だ、と


「先輩、次からはもう少しお手柔らかに、お願いします」

「はは、なにそれ」

拓也先輩は楽しそうに笑った。



本日、キラキラ王子こと拓也先輩と、仲良くなりました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ