友達、出来ました
学校生活にも慣れてきた今日この頃。私にもついに友達が出来たのだ。
美穂とぶー太だ。美穂は思った事を隠さずに言う裏表のない女の子だ。少しキツめの性格だが、
内面とは裏腹に、一見大人しそうな見た目をしている。
「ご機嫌よう、美穂さん」
周りのお嬢様の真似をして、そう挨拶したら笑われた。
みんながみんなあんな口調ではないようだ。
そういう彼女も、格式あるとこのお嬢様なのだが。
そして、もう一人はぶー太、これはあだ名だが。本名は風太。
イケメン?いいえポチャ面です。こっちは癒しオーラ垂れ流しで、おっとり系男子だった。
彼は大手の食品流通メーカーの跡取りで、特にお菓子業界において、彼の家が裏で牛耳ってるといってもよい。
そういうわけでコネも情報も凄い。
今もこうして彼が極秘入手した、某有名店の試作品お菓子を片手に談笑していた。
「あぁ~幸せー」
「ホント?悠ちゃんにそういって貰えると頑張って手に入れたかいがあったなぁ……」
「ぶー太様、今後も末永くお付き合いの程、お願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「ぶー太も悠もほどほどにしなさいよ。…まぁ、その体じゃもう手遅れかも知れないけど」
休み時間はこうして3人で会話するのが日課であった。
はじめに声をかけてきたのはぶー太から。私がよく食べているお菓子が、自分の大好物で、思わず声をかけたのだという。
話をしたらすっかり意気投合、今や一緒に人気のお店に行ったり、お菓子を食べたりといった食べ歩きメイツになっている。
因みに二人は付き合っている。初等部の頃からと言っていたからもう長い年数になるだろう。
真逆の二人だが、だからこそバランスが取れててちょうどいいのかもしれない。
だが、美穂は甘いものが大の苦手で、ぶー太としてはそれが少々不満であったらしい。
美穂は美穂で、ぶー太の趣味に付き合えないのが心苦しかったそうだ。
そこへ私という仲間が出来て、お互いに満足している様子
私?私はこうしてぶー太からの賄賂が貰えて、非常に満足である。
「それにしても、如月君にあんなことを出来る人って、初めて見たよ」
「ホントよ。悠以外の人間がやったら、今頃消されてると思うわ」
「我儘な義弟の教育をするのは、姉の役目ですから」
「……ホント、凄いわよアンタ」
裕介負け犬事件の後、私は周りから女帝と呼ばれ、恐れられているらしい。これは美穂達から聞いた。
確かにあれは、私も調子に乗り過ぎた。今は反省している。そのせいか、クラスメイトとはあんまり馴染めていない。
何より元庶民である私には、お嬢様達と感性が合わないのも原因だった。美穂は別だが。
しかし女帝か。オークとかでなく良かった。
「その……さっきから如月君の視線が……」
ぶー太の指摘で裕介の方を向くと、彼は友人と話をしながらも、ちら、ちら、とこっちを伺っていた。
私と目が合うと、何か合図を送ってくる。これは、いつものやつだな。
「あれは私への連絡、みたいなものだから。気にしないでいいわよ」
「そうなんだ…」
ホッと安堵するぶー太、会話の内容が裕介の怒りをかったとでも思っていたのか。
むしろ逆で、裕介はぶー太に感謝・感激してるのだが…。
「2人はまだ家族になって間もないのに。もう、すっかり兄弟姉妹って感じよね。ホント、凄いわ」
「あの如月君とだもんねー」
「姉や母と一緒に3人で仲良くコミュニケーション取っているからね」
…正確には、おもちゃにして遊んでいたんだけど、これは彼の名誉の為に黙っておこう。
「悠のお姉さんって、2年生の如月遥先輩でしょ?」
「悠ちゃんもすごいけど、如月遥先輩もすごいよね」
如月家の再婚は当然のごとくみんなが知っている。そのため私たちは、入学した直後から注目されていた。
さらに姉は如月家という家柄に加えて、あの美貌の持ち主だ。すぐにそれは学園中で噂になり、既にもう何人からか告白をされたらしい。
流石、主人公。脇役の私とは違うぜ。
私?今のとこゼロですよ。これからもゼロ更新予定ですが?
――帰りの車
帰りの迎えの車内、私と裕介は二人で乗っていた。
姉は用事があるので別れた。恐らく部活だろう。確か調理部だった。
私はもちろん食べる専門である。
「それで…ほら、あれだ。あれだよ。」
裕介はモジモジしながら、話しかけてくる。無愛想な硬派な青年っていうイメージはどこにもない。
「はいはい、これでしょ」
「おぅ、流石、悠!サンキュー!!!」
そういって、さっきの休み時間のぶー太のお菓子を差し出す。何個か、あの後にお持ち帰りさせていただいたのだ。
そう、何を隠そうコイツは甘党だった。そして、お菓子大好き人間だった。乙男である。
今も私の横で幸せそうにお菓子を食べてる。
「何だこれ、マジうめー」
幸せそうで何よりである。
ただ、コイツは自分のイメージ維持の為に、学校内では甘い物を嫌いと言う事にしているらしい。面倒くさい限りだ。
「っつか、俺チョコとか甘いもの、大嫌いだから」
バレンタインの時に彼が言い放ったセリフだとか。
私の横には、幸せそうにお菓子を貪る、一人のイケメンがいた。