テスト勝負vs裕介
春休みが明けてすぐに行ったテストの結果が、壁一面に張り出されている。
私は小生意気な義弟こと裕介と一緒に結果を見ていた。
遡ること数日前、話の流れで裕介が頭が良い事を知った。
だが私も負けずにテストには自信があった。ここで、お互いに一歩も譲らず、そのまま勝負することになったのだ。
「じゃあ、負けた方が勝った方のいう事を何でも1つ聞くって事でどう?」
「いいぜ、その勝負のった!」
「後で後悔しても遅いからね」
「それはこっちのセリフだっつの!」
姉は私の成績を知っていたので心配したが、それは前世の記憶がない場合である。
このゲームでは、妹『悠』と姉『遥』の成績は平均の少し上程度。
裕介のスペックは知らんが、そこそこ上なんだろう。この自信、奴は勝利を確信してる。
だが、そう上手くいくかな?
☆裕介視点
裕介は目の前の結果に驚愕していた。
壁には成績順に全生徒の名前が張り出されている。
1位 如月 悠
2位 如月 裕介
3位 ・・・・・
「俺が…負けただと」
初等部の頃から成績は常に1位をキープしてきた。如月家の跡取りとして、これぐらいは出来て当然だろう。
言っておくが、がり勉していたわけじゃない。
俺は昔から記憶力が人よりいいのだ。『一度聞いたことは、ほぼ忘れない』
生まれた時からそうだった。だから、外部生すら俺にとって敵ではなかった。
上の学年には拓也さんのような化け物もいるから、1位をキープ出来るかは自信がないところだが。少なくとも、この学年において、俺は無双していたのだ。そう、今日このときまでは―
☆
結果を見て、自然と笑みがこぼれる。
1位、まあ当然である。前世の私は名門大学ですよ?
こんなガキの集団に負けるわけありませんくてよ。
とはいいつつも、受験勉強を離れてはや数年、内心びくびくしていたのは内緒。
それに、驚いたのは裕介が2位だったことだ。
(こんなに成績がよかったのかー)
確かに成績が良いとは言っていた、言っていたが、よもやここまでとは。腐っても如月家の跡取りか。
横にいる奴の顔を見ると、信じられないといった様子で、その結果を凝視していた。
「え…嘘だろ。如月裕介が2位だってよ」
「信じられませんわ」
「初等部の頃からずっと1位でいらしたのに……」
なに?そんなに優秀だったの?
本当に危なかったかも知れん。
未だに茫然自失の義弟の肩を叩く。彼はハッと我に返り、私を見た。
「約束、覚えてるよね?」
「あ……いや」
もう一度、優しく彼の肩を叩く。
「忘れたなんて、言わせないよ?」
「お……おぅ」
怯えるように私を見ていた。
私はにっこりと素晴らしい笑みを浮かべた。
まさに、エンジェルスマイル。
「『すみません、お姉様。僕は負け犬の裕介です。ワン』。はい、リピート・アフタ・ミー?」
「おい、ふざけ…」
「や・く・そ・く」
「……」
誠意がこもってない、と何度かやり直しさせたのは言うまでもない。