引っ越し(攻略キャラ3名+ライバル1名の説明)
――新居
本日、如月家の住まいへと引っ越しが決まった。
迎えのリムジンに乗って私たち3人は如月家へと向かう。
健介は仕事で留守のようで、家にいるのは裕介だけのようだ。
再婚するにあたり、義父が新たに購入した
私も自室へと入ると、まずこのゲームの世界について、ここ数日の考えをまとめることにした。
何度も言うが、ここはゲームの世界だ
ある程度は未来を予測できるはずなのだが…残念な事にこのゲームの内容は、そこまで詳しくない。
だって、このゲームは超人気で、どこも品切れ状態
あらゆる伝手を駆使して、あの日に何とか知り合いから借りる事が出来たのだ。
研究も一定の目途がたち、ルンルンで歩いていたところをグサッである。世の中の何と無情な事か
話がそれてしまった。だが、友人やネットから、いくつかの情報は、私も入手してる。
まず、基本的な情報だが、このゲームの攻略キャラは全部で3名。それぞれの御三家から1人ずつだ
☆☆☆
如月 裕介 1年生
無愛想無口のキャラ
イケメンだから無愛想でも許される、とは思うなよ!
二階堂 拓也 3年生
生徒会副会長にして、爽やか系の好青年
とは、説明書。私の予想では、定番の腹黒キャラだと思ってる。
堀田 邦明 3年生
生徒会会長にして、自信過剰の俺様キャラ
あらやだ、私のストーカー男にそっくり!?
さらにもう一人、忘れてはいけないのがライバルキャラである。
天王寺 日花里 3年生
生徒会役員にして、高慢ちきで我儘女
家柄は、御三家には及ばないものの、かなりの格上
友人曰く、何度殺意がわいたか分からないとのこと。
この4人を合わせて、私立桜花学園では四天王と呼んでいる。
さらに、拓也と邦明と日花里の3人は幼馴染で、矢印で表すと、
拓也→日花里→邦明 という大変面倒くさい恋愛感情を抱いているのだ。
☆☆☆
誰を攻略しても、面倒そうなこの展開、私が主人公じゃなくてよかったかも。
さて、本題、私は今後どうするべきなのか?
考えに考え出した結論は―――
『私のやりたいように、攻略?する』 である。
もちろん目標もある。無事に高校を卒業する。そして、大学へ進学してやり残した研究の続きを行う。
恋愛?豚キャラの私は、そっち方面ではお察しですよ。
近づく男がいたら、120%、家柄目当てだろ。
もちろん、主人公の姉に対しては、精一杯の協力をしていくつもりである。
ただ、ここで注意しなければならないのに離婚ルートというのがある。
私の数少ない攻略情報によると、義弟裕介との好感度が低すぎると強制的に離婚させられるのだ。
あいつ、マジ迷惑な奴め。
貧乏な家に生まれた、私の夢の一つはお金持ちになる事。
それが折角叶ったのに手放すのは非常に惜しい。
というわけで、本来なら主人公である姉の役目だが、私も義弟キャラこと裕介との好感度UPに一役かっていこうと思う。
そうなれば、善は急げ。早速、私は義弟裕介の部屋へと向かった。
コンコン
数回ノックすると、部屋の主が出てきた。
「……何か用?」
どっかに行け、明らかにそう訴えている。
だが、私は気づかないふりをした。
「じつは、裕介くんの事を一目見た時から……」
バタン
問答無言でドアを閉められる。
「うそ、嘘だって!ほら、私たち折角家族になったんだし、もう少しお話したいなって思って!」
ドンドン叩きながらそういうと、彼は渋々といった様子でもう一度出てきた。
「別に、俺はそういうの興味ないから」
「私が興味あるの!いいから、きて!」
嫌がる彼を無理やり部屋から引きづり出す。
今の私は男にさえも力では負けない。何てたって横綱級。
それに、こいつは女を少しなめている節があるからな。
これは教育せねばなるまい。
――百貨店
そんなわけで、やってきました。百貨店。
私たち3人+1名は、嫌がる彼を無理やり拉致して連れてきたのだ。
「おい、あんたら。いい加減にしろよ!」
「うーん、私はこっちの方が似合うと思うわ」
「私はこっちかなー」
「私はこれが一番だと思う」
「おい、人の話を聞けよ!」
ここは、とあるメンズ服のお店。裕介はいま女3人の着せ替え人形にされています。
ずっと、女だけの環境で育って数十年。そこに出来たイケメン義弟。
私たちは当然3人で可愛がった。いまはいったい何件目だろう。
前世の私も一人っ子だし、欲しかったんだ弟。もちろん、姉も。しかも、しかもですよ、イケメンですよ。
最初こそ抵抗を見せていた彼であるが、
「もう、好きにしてください」
すぐに順々なおもちゃとなった。
午前はずっと義弟の服選び。いまは、昼食を食べつつ休憩中だ。
ついでに義弟への教育も忘れない。
「ほらほら、私の事は義母さんって呼ぶのよー」
「か、義母さん」
「私は遥姉さんね」
「は、遥姉さん」
「私は悠姉さんね」
「…悠姉さん」
私の時だけ対応が違うが、気にしない事にする。
一応、私と裕介は同じ年だが、私の方が1か月だけ先に生まれている。
正真正銘、私の方がお姉様なのだ。
まあどうでもいい。午前中は運動して、腹が減ってしまった。早く食事をせねば。
食事中もじっとこっちを見てくる裕介は、何か言いたげである。
(あれは、アレだな。きっと、もうお腹いっぱいだし残りはあげるよって事だな)
「ふぁりがお(ありがと)」
咀嚼をしながらも、素早く裕介から食い物を頂く。私の体は恐ろしく燃費が悪い。
彼は少し驚いたような素振りをみせた後で「あ、どうぞ」と私に譲ってくれた。
いずれはダイエットして痩せようかと思うが、それは当分先になりそうだ。
お、裕介が選んだメニューも中々に美味しいぞ。これは、絶対味覚の出番である。
食事も終わり休憩しながら私たちは談笑する。
義弟君はどうやらすぐにも帰りたいようだ。まだまだこれからなのだよ、義弟君。
私たち3人は示し合わせたようにお互いを見て、ニヤリと微笑む。
「さて食事も済んだことだし、つぎは、私たちの番よね」
「そうよねぇー、男性の買い物はすぐ終わるけど、女性の場合は長いものねぇー」
「いや…ちょっと待て」
喚いてる義弟は放置して、女3人の会話は続く
「私のサイズの服あると思う?」
「悠ちゃんのいつものお店も、ここには入ってるわよー」
「え、本当?だったら、私、新しい服欲しいな」
「私もじつは欲しい服あったんだ」
「あら、私もよー」
「……」
「「「ということでそれじゃあ、荷物持ちよろしく」」」
その後、私たちが家へと戻ったのは夜も遅くの事だった。
この日以来、義弟こと裕介との距離は確かに縮まった。
義弟の好感度が5上がった。
義弟の姉たちへの恐怖度が50上がった。