義弟登場
――高級レストラン
今日はこの世界の母『希』の再婚が正式に決まってから、初めての顔合わせ。
場所は高級レストランの完全個室。流石だぞ、お金持ち。
『希』は、儚げで放っておけない雰囲気と独特の色気を兼ね備え、数多の男を虜にしてきた。
その中で見事に希のハートを射止めたのが、日本御三家にも数えられる如月家の『健介』だった。
それが母の再婚相手である。健介は若くして妻を亡くし、一人息子の裕介と二人で暮らしていたが、偶然出会った希に一目ぼれし
何年にも渡るプロポーズを経て、二人はめでたく結婚するのだ。
健介とは何度か会った事があるが、裕介と会うのはこの日が初めてであった。
如月裕介:主人公の攻略キャラ一人だ。不愛想で無口で、不良のような少しワイルドな印象の青年
身長180cmで顔はもちろん美形。そして如月家の跡取り。だが昔から家柄や顔目当てで近づく女性達にウンザリしており、女性に対して冷めた考えを持っている。
「初めまして、健介様、裕介様」
私はミスコン時代に鍛えた笑顔&アヒル口で二人へ挨拶する。
あからさまに裕介が顔をしかめた。前評通りの失礼な奴だ。
「様なんていらないよ、悠ちゃん。だって、僕たちは家族になるんだから。僕の事は是非お義父さんって呼んでくれ」
「分かりました、お義父さん」
「いいねぇ…。お義父さんて呼ばれるのはいつぶりだろうか」
「あらやだ、健介さんってば」
目の前でイチャイチャする二人に、姉と私は苦笑する。
裕介は無愛想なまま、別の方を見ていた。
「こら、裕介。お前も挨拶をしないか!」
「……初めまして、如月裕介です。」
こちらも見ずに、ボソッと話す。態度がすごく悪いが、イケメンなので、またそれがかっこよく見える。
これが、イケメン補正か!
「すいませんね、こいつ態度が悪くて」
「いいのよ、健介さん。男の子は少し無口な方が素敵よ」
「そうか?そうだな!」
母と義父はイチャイチャ
姉も初対面の人間には、人見知りな方で、先ほどから軽く相槌をする程度
裕介は黙々と料理を食べている
仕方ない、私も料理を楽しむ事にしよう。
それにしてもここの料理、上手いな
和やかとは、いかないまでも、裕介自身、結婚に反対する気はないようで、
恐らくどうでもいいんだろう。二人の結婚は正式に決まった。
こうして私と姉は私立桜花学園へと転校することが決まったのだ。
都合良く今は春休みなので、4月の入学式から通うことになるのだが。
裕介は中等部からエスカレーター、私と姉は高等部へ入学する。
編入に必要なのは、難しい試験をパスする学力か、ボンボン学校に相応しい家柄か
この世界では、『如月』、『二階堂』、『堀田』の3家を御三家といい、上流階級の中の上流階級、他家とは一線を引いている。
私たちが再婚したのは、その1つ、名門『如月家』
私立桜花学園への編入条件など、容易に満たしているのだ。
そんな相手を一目ぼれする、お母様。凄すぎです。
こうしてゲームの世界は、動き出したのだった。