ゲームの世界
「悠、起きなさい!悠ってば!!」
聞きなれない声で私は目を覚ました。
「あれ、私って死んだはずじゃ……」
「何を言ってるの!?それより、ほら急いで準備しなさい!」
目の前には、見知らぬ美人がいた。私よりも少し若い…高校生ぐらいだろうか。
黒のロングヘアでどこぞのお嬢様のような気品が彼女から溢れている。
思わず見とれてしまった私だが、相手は、まだ寝ぼけていると取った模様、
「今日はお母さんの再婚相手と会う、大事な日でしょ!!!」
「再婚相手?」
「……もしかして、忘れちゃったの!?とにかく、急いで支度しなさい!」
彼女はそう言って去っていった。
「いったい全体どういうこと?」
死んだはずの私が、見知らぬ美人に『悠』と呼ばれる。当然『悠』は私の名前ではない。
それに再婚?私の両親は未だにラブラブなんだけど…。
この部屋もそうだ。ここは私のアパートとは全く違う……
―そこで、私は一つの結論へとたどり着く。
「もしかして、私、転生しちゃった?」
あまりにも馬鹿げた内容であるが、私の今の現状を説明するにはそれが一番しっくりきた。
私は『悠』という、別人へ転生したのではないだろうか…
さっきの美人は私の姉妹であろう。しかし、どこかで見た事があるような……
(まあいいわ。つまりは、やり残した人生(研究)のチャンスが与えられたってことね!!)
と、なれば早速行動である。まずは現状把握
私はベッドから起き上がり、着替えを探す
「身内があんなに美人ということは、転生した私も、きっと美人だろうな~。それにしても、随分と体が重いような……」
慣れない体を操作するのって難しいのかな。そんな事を考えつつ、私は鏡で自分の姿を確認して、
そして、衝撃の事実を知るのだった。
「ええええええええええええええええええええええええええ」
鏡の前に映っていたのは、あの姉妹とは似ても似つかない人間、もとい豚だった
(え、私ってばオークに転生しちゃったの?)
なんて現実逃避をしてしまうほどだ。
「いや、まって…待って。きっと疲れてたんだよ。うん!」
深呼吸してもう一度鏡を見ると……そこには一匹の豚がいた―
豚もとい悠もとい私、推定体重3桁OVER。
前世では男を虜にした悩殺スマイルを使ってみる。首の角度も絶対黄金比。
……。
「確かに容姿はどうでもいいといったけど。けど、神様。これはちょっとひど過ぎじゃない?」
私は天を仰いだ…しかし、首の肉が邪魔であんまり上がらなかった
(あ、でも姉妹があんだけ美人なら、私だって痩せたら美人かも!?)
ぐ~~~~~
壮大なお腹の音がする。どうやらこの体は食糧を欲しているようだ。
本日の運動量20歩。ダメだわ、こいつ。
私はもう一度天を仰いだ。あまり仰げなかった。
クローゼットの中から、超BIGサイズの服に着替える。
私は、着替えながら、この世界がとあるゲームの世界である事に気付いた。
『私立桜花学園~大きな栗の木の下で~』
いま巷でブームの乙女ゲームだった
物語は庶民の主人公『遥』が再婚により、御曹司が通う私立桜花学園へ転校するところから始まる。
元庶民の主人公が桜花学園でイケメン達と愛を育み、卒業式の日に大きな栗の木の下で愛を誓うのだ
そして私のキャラは、その主人公『遥』の妹『悠』だ。
このキャラは『絶対味覚』というスキルの持ち主で、一度食べた料理は絶対に忘れないという類まれなる才能を持つ。
そして、主人公にイケメン達の好みの料理やお菓子をアドバイスし、好感度を上げる手助けをするという重要な役割を担っているのだ。
つまるところサブキャラである。
どうやら、私は、サブキャラに転生してしまったようです―