生徒会に入ります1
☆堀田邦明視点
最近、拓也の様子がおかしい。
きいた話では、たまに学園の女と出かけているという。
「女でも出来たか」と尋ねたら、「友達だよ」と笑って返された。
俺は驚いた。
相手の検討はついている。如月遥、今や、その存在を知らぬ者はいない。
俺も実際に見かけたが、噂通り、いや噂以上に美しい女であった。
日花里も美しい女だが、あの女と比べたら霞んでみえる。
生徒会役員は俺の言葉をじっと待っている。
あの拓也が気に入る相手だ、問題ないだろう。
俺は、今年の推薦者について、考えを述べた―
☆
――自宅
「生徒会メンバーに、選ばれた?」
「うん。昨日突然、告げられて…」
リビングで寛いでいると、遥からそう告げられた。
本人も少し戸惑っているようにみえる。
「で、生徒会に入るの?」
「それが、悩んでいて……」
「生徒会なんて入らない方がいいぞ。面倒なだけだからな」
そう答えたのは、裕介
振り向くと、ソファーで寝転がりながら雑誌を読んでいた。
一応話は聞いているようだが、ほとんど興味はなさそうである。
「裕介君は、毎年選ばれてるんだよね」
「毎回、断わってるけどな」
裕介はとても嫌そうに答える。
彼曰く、邦明さんによる、ただの嫌がらせとのこと。
「そもそも生徒会って、何するの?」
寝転がる男から雑誌を取り上げつつ、尋ねる。
「雑用だよ、雑用。そのかわりに学校で偉ぶれる。それだけだ」
下らないだろ?と彼はばっさり切り捨てる。
早く本返せよ、と言われたが、そっちはスルーする。
『人気スイーツ100選』ねぇー
「生徒会になるには、どうしたらいいの?」
「生徒会からの推薦だよ」
つまらなそうに答える男
なるほどね。
「で、私には来てないんだけど?」
「…」
「ねぇ、ねぇねぇー?」
「あ、ああー、それよりぃ?遥ねぇは、どうするんだ」
私から視線を逸らす裕介。
何ですか、美貌も選考基準ですか?
世の中、結局顔ですか?
イライラした私は裕介めがけて、雑誌を投げつける。
…慌てもせずにしっかり片手でキャッチされた。
本にあたるなよ。
その上、注意までされる。はい、ごもっともです。
「興味はあるんだけど、1人だと不安で…」
「それなら、裕介が一緒に入ってあげ―」
「面倒、パス」
言い終える前に即答された。
彼はと言えば、また寝転がって雑誌を読んでいた。
しかし、生徒会か
ゲームでは、遥は生徒会に入るはずだ
何より私の拓也先輩に近づくチャンスでもあるし?
「私としては、悠に一緒に入って欲しいと、思ってるんだけど」
「うーん、今回は流石に無理だよ」
「そうだよねぇ…」
悩んでいると、裕介はふと何か思いついたようだ。こちらへ視線を向けた、
「悠は拓也さんと知り合いなんだろ。頼めば、何とかしてくれるんじゃね?」
「確かに」
拓也先輩は生徒会副会長だ。お願いしたら、意外と行けるかもしれない。
「悠、お願い~」
姉による必死の懇願
美人の困り顔とは、なんとも卑怯である。
「分かった、とりあえず聞いてみるよ。ただ、あんまり期待しないでよ?」
「ありがと~」
可愛い姉に根負けし、
私はその日のうちに、拓也先輩へと連絡を取った。
――裕介の部屋
あの後、裕介から呼び出された。
「お前は、遥姉を生徒会に入れたいのか?」
「うん、まーね」
「…だったら、3年の天王寺日花里って女には、注意した方がいいぞ」
「っ!!ライバルのことすっかり忘れてた!」
「なんだ、知ってたのか」
接点がなさ過ぎて空気化してた天王寺 日花里、3年生。
生徒会役員にて、拓也先輩と生徒会長の幼馴染。そして、主人公のライバル。
このゲームにおいて、一番気をつけなければいけない相手である。
その存在から、学園の女王とも呼ばれているとか
…ふ、私のが格上っぽいな。
「遥姉のことを、相当憎んでるらしいぞ。今まで安泰だった一番の座が危うくなってるんだから、当然だよな」
ざまーみろ、と裕介は吐き捨てた。
言葉はいつになく厳しい。
「裕介は日花里先輩のこと嫌いなの?」
「大っ嫌いだ。パーティーで何度か話した事あるんだが、高慢ちきな糞女だぜ」
「なるほどね。でも、それだと確かに遥一人は心配だな。拓也先輩には多少無理を言っても、お願いしてみますか」
「俺としては、生徒会に関わらないのが一番だと思うけどな」
これは一応は心配してくれているのだろう。何気に良いとこあるじゃないか。
裕介の言う通り、生徒会に関わらないのも1つの方法である。
だが姉は入りたがっているし、日花里とは、生徒会に関係なくいずれ一悶着起きるであろう…
それなら、答えは決まっている。
「どーせ戦うなら、逃げの一手より攻めの一手!」
「…お前のそーいうとこ、マジで尊敬するわ」
「尊敬するなら、手伝え」
「い・や・だ」
ここまで頑なとは相当嫌なんだな。
私としては裕介もいてくれた方が、安心なのだが…
何より、コイツ暇そうだし
仕方ない、さっき覚えた必殺奥義を使うとしよう
「裕介、お願い~」
姉による必死の懇願
美人の困り顔とは、なんとも卑怯である(代弁)
「……出てけ」
部屋から、無理やりつまみ出された。
ドアを叩くが応答がない。
ふむ…人生とはなかなかに難しいものであるな
さて、では姉のため妹は頑張りますか。
私は決意を新たにするのであった―




