表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/18

拓也先輩とお出かけ

私と姉は待ち合わせ場所へと来ていた。

遥の格好は私も入念にチェックした。ばっちり!

普段より5割増で可愛いぞ、我が姉よ。


私ももちろん空腹、ばっちり!


まだ、男子2人の姿はない。

「二階堂先輩と一緒なんて緊張してきた……」

「あの人イケメンだしね。まあ、基本的に無害だから、大丈夫だよ」

「はは、酷いなー。俺は、嫌がる子に無茶はしないよ」


まったく、神出鬼没の人である。


振り返った先にいたのは、私服の拓也先輩だった。学校の時以上に輝いてみえる。

この人、芸能人か何かですか。

姉の頬は微かにピンク色に染まっていた。

「あの…二階堂先輩。初めまして、如月遥と言います。今日は、よろしくお願いします」

「うん、よろしく。遥ちゃん、その服とっても可愛いね」

姉の顔が真っ赤に染まる。「ありがとうございます」と、か細い声で恥ずかしながらお礼を言う。

妹ながらにその姿は本当に可愛らしい。私としても、頑張ったかいがあるってもんだ。


「遥ちゃんの事は、弟からよく聞いてるよ」

「…竹夫君は、何て言ってました?」

「とても真面目で良い子だって。あと、とても可愛い子だって。俺も噂では聞いてたけど、こんなに素敵だとは思わなかったな」

「そ、そんな……」

姉は、ぶー太が来る前に昇天してしまいそうだ。

流石に私も口を挟むことにする。


「ちょっと、先輩。ほどほどでお願いします」

「怒られちゃった。悠ちゃん、ごめんね」

まったく、フェロモンだだ漏れも問題だな。


周りの一般女性も拓也先輩を食い入るように見つめている。

すでにもう彼の餌食になった人が出ているようだ。


「あいつが迷惑かけたら、遠慮しないで俺に教えてね。俺から、しっかり注意しとくから」

「竹夫君には、むしろ感謝してます。最近は、私に勉強も教えてくれて…」

姉と二階堂弟は、あれ以来、うまくやっているようである。

お互いに誤解が解けたようで、何より。


兄と弟の方は…聞くまでもないだろう


しばらくして、ぶー太が最後にやってきた。

そして、4人で目的の場所へと向かった。




前にも後ろにも、長蛇の列が出来ている。

私達もその中に混ざって並んでいた。


「ねえねえ、あの人達、芸能人か何かかなー」

「スタイルもいいし、モデルさんじゃない?」

「いいなー、あんなカッコいい彼氏、私も欲しいなー」


今更だが、この人達は本当に目立つのだ。

当然、その中に私とぶー太は含まれていない。


恥ずかしそうに、少し俯き加減の姉

余裕綽々で、気にも止めてない拓也先輩

少し距離をあけている、私とぶー太


まさに、三者三様


「いやーすごいですね、ぶーた君」

「そうですねー、悠さん。僕たちとは、まるで別世界のようですね」


美男美女、理想のカップルが目の前にいた。

キラキラと輝いていて眩しい。

あまりに眩しすぎて、目から汁が出てくるよ…


超えられない壁が、そこにはあった。


「あそこの二人、何だかお似合いだね」

「ほんとだー。でも彼女さん、ちょっと、太り過ぎじゃない」

「あれじゃあ、彼氏も大変だよね」


私達もある意味、目立っていた。

「…これが現実ですね」

「そうだね、そうだよね……」


だが、このぶー太、リアルでは美人な彼女がいる。

そう、こいつは敵(リア充)なのだ。

負け組は私一人なのだよ。


メイン二人と一定の距離を保ちつつ、

サブ二人は順番を待った。



――店内

待つこと、およそ1時間

ようやくお目当てのケーキとのご対面である

モンブランと苺のショートケーキ


私とぶー太は、他にも気になった数種類のケーキを頼んでいた

悲しみなんて一瞬で吹き飛んだぜ。


「そういえば、拓也先輩って彼女いないんですか?」

「…ホント、遠慮がないよね。まあ、いいけど。今はいないよ」

流石、モテ男、発言も余裕だ。


「これでも受験生だしね。恋愛って色々と面倒だから」

「はいはい」

「二階堂先輩は、すごく成績もいいですよね」

「それなりに勉強してるからね。ただ、いつも邦明に負けるんだよな。一度くらい邦明に勝ちたいよ」

「僕たちにはレベルが違い過ぎます…」

「成績なら、悠ちゃんもすごいよね。前回のテストで、1位だったんでしょ?」

「そうなんですよ!昔は私と同じくらいの成績だったのに。高校入ったら優秀になって…私は置いてけぼりなんです」

「へぇー」

「そうなんだ」

なぜか遥が答えた。私以上に誇らしげである。そんな姿も可愛いのぅー。

だが、この話はちょっと色々とまずいぞ、


「私の成績とかどーでもいいっしょ?それより、ほら。早くケーキ食べましょ。ケーキ!」

慌てて話をそらす。やっぱ話して気持ちのいいものではない。

皆もそれ以上は深追いしてこない。空気のよめる人達で助かる。


前情報のとおり、別格でうまかったのはモンブランと苺のショートケーキ。

他にも何個か美味しかったものを、持ち帰る予定だ。


いやー、お金を気にしない生活って本当にいいですね。


神様、私は今とても幸せです



「長居すると、待ってる人に悪いし、俺たちも帰ろうか」

先輩の言葉で私達は席を立つ。私たちがレジに行く頃には、先輩が既に会計を済ませてくれた。

なんと、私のお土産代までもである。


お土産代は流石に払うといったんだが、

「女の子の前では、良い恰好させてよ」

と、言われてしまってはどうしようもない。素直に甘える事にした。

男といえば…横のぶー太を見る、良い人そうだが残念な人オーラが出ていた。


比べるのはやめて、悲しくなるから……

可哀想だったので、ぶー太にもいいところあるよ、と励ましてみるものの逆効果


今はそっとしておくことにしよう。



――帰り道

帰り際に拓也先輩から話があると言われ、私は二人と離れ、先輩についていく。


「これ、悠ちゃんにプレゼント」

そういって渡されたのは、小さな子豚のガラス細工であった。

豚に悪意が感じられなくもないが、とても可愛いらしいのでよしとする。


「弟と仲直り出来たお礼だよ。どんなの選んだいいか、かなり悩んだんだけど…どうだった?」

「とても気に入りました。大切にしますね、ありがとうございます」

「そっか、よかった」

あの王子が、少し照れていた。

そんな拓也先輩を見て、私も照れる。

…反則です、先輩。


誤魔化すように弟の様子を尋ねたら、案の定ブラコンに目覚めていたようでる。

ただ、困惑そうにも話をする拓也先輩は、嬉しそうだった。


「二人をあんまり待たせるわけにもいかないし、戻ろうか」


私と拓也先輩は並んで、二人のもとへと戻って行った。



――自宅

家へと帰ると義弟がリビングにいた。

何だか落ち着きがない。

私の手にもっているものを、しきりに気にしている。


私からは何も言わないでいると、義弟から声をかけてきた。

「悠、あのさ……」


はっきりしろや。

そう思ったが、あんまり焦らすのも可哀想になってきたので、お望みのものを与えてやる。

「ほら、ちゃんと買ってきたやったぞ!」


途端に顔をパッと明るくする義弟。私には尻尾が見えた。餌を喜ぶ大型犬そのものである。

「サンキュー」

その満面の笑みに胸がキュンとときめいた。くそ、義弟のくせに。


神様、この世界は、前世の世界よりちょっとだけ、トキメキイベントが多いみたいです。



家族全員の分を買ってきたつもりであった。

…ところが、義父さんが帰る頃にはなくなっていた。


彼は泣いていた。すまん、義父よ。



悠は『子豚のガラス細工』を手に入れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ