taking ひろくん・和くん
個室
「30分かー。何話そっか?」
「そうだなー。決めて。」
「好きな人いる?」
なぜ、そっち系?
まあ、いいけど。
「アイドルで、いる。けど、一緒にいたい
ってほどじゃない。」
「じゃあ、3人の中なら、誰がいい?」
初対面の人に、それ聞く?
無茶だね。
「まだ、初対面だから、わかんないや。」
「じゃ、タイプは?」
「タイプ?リードしてくれる人。」
「そっか。てか、これ由香ちゃんいつご飯食べるの?」
「あぁ、いつだろ。
わかんない。」
「じゃあ、俺もういいから、食べてきな。」
「ありがとう。じゃあ、早めに切り上げちゃうね。ごめん。」
「大丈夫。ちゃんとお昼食べて、レッスンに備えてね。」
カウンター
「あっ、由香早いじゃん。」
嬉しそうに話してくる。
「早めに切り上げてもらった。とりあえず、注文しないと。」
うざいので、冷たいトーンで言ったが、めげずに
「あっ、このオムライスすごい美味しいんだよ!」
近寄ってくる。
「じゃあ、それにする。」
「和は、いい人だから。」
いきなり、言ってきた。
なんかいつもと違う事言うから、調子狂う。
「わかってる。嫌でも、ファンの人と関わらないと
いけないから、よく聞かされてる。」
「そっか。すごいね。お勤め毎日ご苦労様です。」
「明後日からは、またw務めだよ。」
「ごめんな。いつも。
あのさ…」
「あっ、ごめん。時間だから、行くね。」
勇気を出して、言おうとした言葉は、無惨に途切れた。
「和くんよろしく!」
やっぱ、ただの兄妹としか見てもらえないかな。
てか、ほんとはそうでもないのかもね。
「あっ。料理来たら、話せないの。ごめんね。」
「あぁ、いい。てか、由香ちゃんしっかり者だよね。何で?」
「うーん。お兄ちゃんが、あんな感じだから、
しっかりしないとって、思ったんじゃない?」
「もはや、逆じゃん。」
「そうだよねー。もっと違うお兄ちゃんが、よかった。」
「有理の事嫌い?」
「うん。言ってはないけど、嫌い感はすごい出てると思う。」
「そっか。何かあったの?」
まあ、ありすぎるね。
「まだ初対面だし、そんな言えない。けど、
お兄ちゃんの妹だからって、いじめられてたの。
妬まれるなら、自分の事の方が、いいよ。だって、
私何も悪くないのにさ。ほんと不公平だよね。」
お兄ちゃんは、自分の事ばっか。
「そっか…。それ有理に言った?」
「言ってない。あんまり言いたくなかったから。」
「何で?」
「昔いじめられてて、他の事で。お兄ちゃんに言ったら、
収まったけど…。一人になっちゃってさ。寂しかったんだ。」
「そっか。でも、有理に言った方が、いいと思う。
有理も、直しようないし。」
「うん。そうだ。最近お兄ちゃんと話してると、
全然違う事言っちゃうの。何でかな?」
「医者じゃないから、わからないけど…。
由香ちゃんが思ってるより、
たまの事嫌いじゃないんじゃない?」
思ってるより、嫌いじゃない。
そう言われると、うなずける。
元は、好きだったし。
お兄ちゃんの事案外嫌いじゃない…か。
「ありがとね。何かスッキリした。じゃ、
時間だから、行くね。」
自分の気持ちわかんない。
自分でさえ。
もう嫌だよ。
だから、嫌なんだよ。
お兄ちゃんは。
いつも私の事を、苦しめてさ。
もう知らない。