first episode:An injury 第1話 「日常」
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第1話 「日常」
「神風くんほら、起きて!」
「……ハッ!」
被っていた毛布を撥ね退け、上半身だけが反射的に起きあがる。
目の前には、誰かがいた。よく見てみると、1人の女性が心配そうな顔で俺を覗き込んでいた。
整った顔。黒い髪であり、後ろで髪を整えた、ポニーテールと呼ばれている髪型がよく似会っている少女だった。
「だ、大丈夫?神風くん……汗、いっぱいかいてるけど……」
「大丈夫だ。何か、悪い夢を見てただけだ」
「どんな夢なの?」
思い出そうと必死に記憶を探ってみるも、いくつか思い浮かぶものの、それはすべて泡のように消えていった。
それにしても汗で気持ち悪いな……。何故か目の前の少女――凛に話すのは躊躇われるので、とりあえずでていってもらおう。
「あー……凛。とりあえずでていってくれないか。着替えるから」
「私は気にしないけど」
どうしてお前はそこで何もなくそんなことが言えるんだ。
とりあえず出てってくれ、と言って凛を追いだす。
「朝からやってんなぁ……」
「谷風……今起きたのか」
「いや、今も寝てる」
「何言ってんだよ……早くしないと遅刻するぞ。いくら学校に近い寮でもこの時間はまずい」
「何時だ」
「8時20分」
「は……!?早く起せよぉぉぉぉぉぉ!俺の朝のフィーバータイムが終わっちまうじゃねぇか!」
「お前もなんで早く起きないんだよ!しかもフィーバータイムって何する気だったんだよ、お前!」
「昨日は徹夜だったんだ!察しろ!」
こいつの徹夜、というのは多分、ろくでもないことだろう。
前にどんなことをやっているのか聞いてみたら「寝てたから」と帰ってきた。
あのあと、どう返事したらいいか分からなかったから、そうか…と言っておいた。
どうやったらコイツの馬鹿は治るんだろうな。
「早くしてね……?」
扉の外から凛の声が聞こえてきた。こんなこと言い争っている場合ではなかった。
「お前のせいで怒られただろ!」
「うるせぇ!核。俺の服をとれ!」
「自分でとれよ……」
なんで朝からこんなに声を出さなきゃいけないんだ。
……
…
扉を蹴るようにして開けると、そこには凛、愛瑠さん、優衣がいた。
「あぶねぇな!核」
「すまん。優衣」
「ん、谷風くんも一緒?」
「俺が居て何か文句ありますかねぇ、愛瑠姉さん!」
「……その姉さんはなんとかならないのかしら?私は谷風くんに興味なんてないわよ?」
「……はは、照れ隠しっすね」
おいおい……。
谷風イヤーは、自分に都合の悪いことはすべて聞きながされる、またはポジティブな発言に変換されるようだ。
でも、悪いことを聞くこともある。つまり、谷風は馬鹿なのだ。
「あと2分しかありませんよ……」
凛が絶望的な顔で言っていた。コイツは……いっつもだな……。
「大丈夫だ。俺に任せろ」
凛の頭を撫でながら言ってやる。触りやすい髪で、よく愛瑠さんにも触られているらしい。触っていると癒されるのだが、今はそんなことをしている暇はない。
凛に言った手前、裏切る訳にはいかない。
しかし、どれだけ走っても学校に着くまで5分はかかる。
だとすれば……この場合は――谷風以外の全員にアイコンタクトを送る。
谷風以外はそれをいち早く察知してくれる。凛は不思議そうな顔をしていたが。
「俺に任せろって……神風くん……」
「早くして、カサくん」
「早くしろ、核とクズ!」
「分かってる!」
「クズって誰!?」
「反応してる時点でお前だろ」
「お前だ」
「谷風くんね」
「……う、うわぁぁぁぁ――――ん!」
「休むなら携帯でちゃんと連絡しろよー!」
優衣が、手をメガホンのようにして谷風に声を発していた。聴こえてるかは、不明だ。
その間にも、谷風は手を顔にあてて、走っていた。寮はもうすぐ通り過ぎる。
きっと何処までもいくんだろう。
「え、谷風くん!?神風くん!言いすぎですよ!」
「あ、ああ。すまん。とりあえず急ごう」
「いきましょう。足止めできるとしても5分が限界だわ」
「……体を鍛えられる感じでいいな」
「優衣、お前、変だよ」
「うっせ」
走りだす。学校への続く、真っすぐな道を、そこには木が並木のようにつらなっていて、一種の永遠に続く道のように見える。
「核、遅いぞ」
「お前が……体力有り過ぎなんだろ……」
優衣は女子の中でも、とりわけ体力が多い。
「ほら、手、引っ張ってやるからよ」
優衣は振り返る。その時に風にゆられてか、短い、ショートカットの茶髪が揺れる。
そして、優衣は俺の手を握って、引っ張りだした。
彼女の手は温かかった。それなのに、何故か震えているようでもあった。
……
…
「到着っと」
いつの間にか教室の中へ到着。
凛とは1階で分かれ、愛瑠さんとは2階で分かれた。
凛は1年。愛瑠さんは3年生だから3階へ階段を上って行った。
俺達はというと、階段で2階にあがり、さらに右奥の教室にきていた。
優衣とは同じクラス、隣の席だ。
……俺は息を乱しながら、優衣に話しかける。
「……おい。……いくらなんでも教室まで引っ張らなくてもよかったんだが……」
「ん?照れてんのか?」
「いや、そんなことはねぇけど……」
「そうか、とりあえず早く着席しようぜ」
「お前、何時の間に自分の席まで移動してんだよ」
さっきまで扉に入った所にいたはずなんだが。
俺もとりあえず席まで移動する。周りの視線が痛い。
「瞬間移動だ」
「……はいはい」
「信じてねぇな!?」
「今反応すんな!座れ!」
「チッ……」
……どうして逆切れみたいなことされなきゃいけないんだ。
しばらく、隣にいた優衣は機嫌が悪かったが、いつしか落ち着きを取り戻していた。
「おーい、ホームルーム始めるぞー」
「お……谷風のわりにはもったな」
「そうだな……記録更新だ」
谷風が、休みを連絡する間、先生は足止めをくらうことになる。
だからいつも遅刻しそうな日にはこうしている。凛は知らないみたいだけど
「出席取るぞー。あと、前から言ってるが、俺に悩みの手紙を送るのはやめてくれ。じゃあ終了だ」
先生は、遅れている分、すぐにホームルームを終了させ、扉を手で開け、でていく。
先生……彼は、色々な人から好かれており、生徒の信頼は厚いものの。
誰にも名前を呼んでもらえなくて困っているらしい。俺自身も先生と呼んでいるんだが……本当の名前を知らないのだ。
可哀そうといえば、可哀そうな先生だ……。
それから、別の科目の先生が来て、授業を始めた。
隣の優衣は、一生懸命に黒板に書かれることを写している。
俺もそれを見習って、写すことに集中する。
谷風が来たのは、3限目の授業が終わった時間頃だった。
休むんじゃなかったのか、と声をかけたかったものの、もう燃え尽きて、屍になっているので話しかけても無駄な気がして、話しかけなかった。
……
…
昼休みになった。
俺はまだ机に突っ伏している谷風に声をかけるべく、近づく。優衣も俺が谷風の所に行くのを察知してか、後ろからついてくる。
時々すすり泣くような音が耳に入る。
おいおい……。
「谷風」
「……核か。もう放っておいてくれ。俺は……どうせクズだよ」
「コイツ馬鹿だろ?」
「いつも谷風は馬鹿だっていってるだろ、優衣」
「……そういやそうだったな……」
「俺に哀れむような目を向けるのはやめてくれませんかねぇ!?」
「……」
「……」
「可哀そうな目で見るのもやめていただけるか!?というか、お前だって成績悪いだろ!」
「お前は毎回赤点だろ。俺はまだギリギリだ」
「……それは胸張って言えることじゃねぇぞ」
「優衣は……成績よかったな」
「そうだな……。まぁまぁだ」
「けっ優等生が、俺達の仲に入ってくんな!」
「……クズ」
「ゴメンなさい。やめてくださると嬉しいです」
「なら、メロンパン買ってこい」
「優衣様の頼みとあらば……」
「おい、谷風」
「なんだ、核」
「俺はカツサンドな」
「ふざけんな!てめぇ!」
「……」
優衣の無言の圧力。
俺だってあの無言の圧力には耐えられそうにはない。
「……お前ら……そうやっていつもいじめて楽しいかよおぉぉぉ」
泣きながら谷風は去っていった。女の子走りをしながら……。
「……取り合えず学食いこうぜ」
「優衣……谷風にパン買わせに行ったのによくそんなことが言えるな」
「学食に行ってるうちに出くわすって」
「それもそうだな。行くか」
「おう」
……
…
学校の廊下を歩く。廊下は五人ほどが横にならんでも歩ける構造になっていて、広い。
目指すは1階にある、学食だ。
「――優衣ちゃん、カサくん。今から学食?」
愛瑠さんだ。黒髪……そして長髪を揺らしながら、こちらにきた。
「愛瑠さんもくるか?」
「ええ、いくわ。お腹がすいてたまらないもの……」
「朝、相変わらず何も食べてないのか?」
「えぇ、そうね。朝はお腹がすいてないのよ。体に悪いって分かってるんだけどね」
「運動すればいいと思うぜ」
「優衣ちゃん。運動は効率的にしないと意味ないのよ?」
「え?いや……」
「優衣、愛瑠さんに何言っても無駄だ。ここを譲る人じゃないぞ」
「それもそうだったな」
「その納得のされ方は遺憾だけど、その通りだからまぁいいわ」
階段を下り、1階に到着。
辺りを見回す。階段を下りた直後の左には、職員室と書いてあるプレート。
次は右を見回す。
いた。俺達を見つけたのがうれしかったのか、突然笑顔になって、後ろの髪を揺らしながら、近づいてきた。
「待ってなくていいのよ?トリちゃん」
「その呼び方はやめてくださいって言いましたよね?ふーかちゃん」
「その呼び方をやめてくれたらやめてあげるわよ?トリちゃん」
「……」
「……」
「……まーた始まったよ……」
「どうする?優衣」
「とっとといこうぜ。谷風がパン買ってくるっていっても、立ち往生してる可能性のほうが高い」
「それもそうだな……行くか」
俺と優衣は凛と愛瑠さんに背を向け、歩きだそうとする。
「「ちょっと待った!」」
「……いこうぜ」
「「だから、待ちなさい!」
「なんだよ!?」
俺は仕方なく、振り返る。
すると、凛と愛瑠さんはお互いの頬をつねりあっていた。
凛も変な所で頑固だし……愛瑠さんはあの呼び方をやめて欲しいだけだろうし……。
いつになったら解決するんだ。この問題。
「「ひゃわひぃわふー」」
「いや、意味が解らないから……」
「……」
凛と愛瑠さんの無言の圧力が俺を貫く。
どうしてこういう時の判断は俺なんだ。
「だー!イライラするなぁ!もういいだろ!早くいくぞ!」
「あ、おい。優衣!」
優衣が俺の手を引っ張って学食へ向かう。
ま、待って!と後ろで聞こえるものの、それを無視して、優衣は進んでいった。
……
…
「この波に飛び込むのかよ……」
「怖いか?」
「いや……いつものことだけど!」
「だろ。じゃあいくぜ!」
優衣が、俺の手を引っ張りながら、学食のパンの購買へ一直線に向かう。
…………。蹴散らしていく、と言ったほうがいいかもしれない。
優衣は、パンの購買に群がる一般生徒を蹴散らしながら進んでいく。
「お、核じゃ――うぼあ!」
ああ、谷風が飛んでいった……。
あ、落ちた。
すぐさま立ち上がり、谷風がこっちに追いついてきた。
「なんだよ、つれねぇな」
「いや、谷風。他に突っ込むことがあるだろう」
俺の体がほぼ横に向いてるんだが。しかし谷風が優衣に追いついてくるなんて……体力だけはあるらしい。
「優衣は凄いな」
「そこ突っ込む所か!?被害が尋常じゃないぞ!」
「まぁ、いいんじゃね?」
「お前も、今大変なことになってるからな」
「へ?ハハ。なんのことやら」
腕がありえない方向に向いているのは大変なことじゃないらしい。
「核、何がいい」
この速度で走ってる……いや、俺は浮いてるが。
なのにまだ購買につかないのか。
「カツサンド」
「よし、分かった」
「聞くタイミングおかしくないか?」
「こまけぇことは気にするな!」
ああ……谷口が小さくなっていく。
きっと優衣のスピードが上がったんだろう。
前を見ると、優衣が笑顔で、満点の笑顔で笑っている姿が見えた。
……
…
「いやぁ、大変だったな」
「谷風。お前いい加減保健室にいけよ」
「そうよ、谷風くん」
「愛瑠さん!俺の心配してくれるんですか!」
「あら、心配して欲しい?」
「ええ!頼みます!」
「……ロウソク買ってきたらいいわよ」
「何に使う気ですか!?ああ、でも俺……愛瑠さんにいじめられるならいいかも……」
「谷風……」
「なんだ」
「生きて道を踏み外せ」
「……ああ、嘘だよ、嘘。ハハハ」
嘘じゃなかったな。こいつ……。しかし、元から踏み外しているので今の言葉にはそれほど意味がないかもしれない。
優衣が暴走もとい、学食で暴れたあと、俺達は空き教室に来ていた。
優衣はもうとっくにパンを買っており、俺はただ連れ回されただけというオチがついていた。
どういうこった……。
「それにしても、よく空き教室なんてあったわね」
「そうだね。ふーかちゃん」
「……トリちゃん。いくら欲しいの?」
「愛瑠さん……」
いよいよ買収しだしたぞ、この人。
「でも、まぁ、本当によく空いてたな。ここ一応マンモス高だぜ?」
「そうだな……不思議なこともあるもんだ」
「……」
「凛、愛瑠さん、優衣、どうかしたか?」
「「「なんでもない」」」と口をそろえて返された。
しばらく無言で食べる。それにしても、よく空き教室があったな……しかも丁度いい感じに綺麗にされている。
谷風を見る。あいつは静かだった。なんだろう。何かの前振りというのか。
嵐の前の静寂だ。
「……なにかやりてーな」
谷風がふと、外を見て呟いた。
きっと全員がそう思っている……そのはずだ。馬鹿をできるなんて今だけ。
愛瑠さんはもう馬鹿ができる時期は通りすぎているけど……でも、何故か一緒にやってくれそうな気がした。
全員が一丸となって。
「探検部」
凛がふともらした言葉。
全員がえ?と振り返る。
「探検部を作ろうよ」
もう一度言いなおした。その目には、凛がいつも真剣な時に見せる目をしていた。
「……いいわね」
「ああ、いいな」
優衣と愛瑠さんはやる気なようだった。どうしてだろう?
「えー、めんどくせー」
谷風はやる気がないらしい。
コイツが呟いたから凛が言ったはずなのに。
「核はどうする?」
優衣が、俺の顔を真っすぐ見据えて、聞いてきた。
まるで、返事は決まっているんだろ?と言う風に……ああ、そうだ。決まっている。
「やろう。探検部」
「はっ!?核まじかよ!俺達は心の友だろ!」
「お前だけだ!そんな前時代的なことを言ってるのは!」
「……ああ、やればいいんだろ」
「別にお前を誘った覚えはねぇけど」
「そうよ。谷風くんはいなくてもいいわよ」
「………………」
よっぽどショックだったのだろう。時が止まったように止まっている。
その時、凛が谷風がいる所まで動いた。
「谷風くんも、やりますか?」
「……」
項垂れていた谷風の顔がみるみるうちに元気になっていく。アイツは分かりやすい。
だから……誰もアイツを本当に嫌ったりしないんだろう。
馬鹿だからかもしれないけど。
「やります!やらせていただきます!命をかけますとも!」
「そんなに背負う必要は――」
「谷風くん、私、喉渇いたわ。カフェオレ」
「喉乾いた。アクエリアス」
「いかねぇよ!?俺は凛だけについて行く!」
「あ、じゃあ私も喉渇いたから、オレンジジュースお願いします」
「……うわぁぁぁぁぁぁぁ――――ぁぁぁぁん」
扉を強引に開け、走っていった。
「凛……お前も結構アレだよな……」
「そうね……」
「そうだな……」
「?]
凛は首を傾げていた。
今日は、探検部を作る!という所だけで、何も進まず、寮へ帰宅した。
……
…
「……」
「どうした、谷風。自分の部屋だろ」
「戻ったら……誰もいなかった」
「ああ……そうか。それは悪かった」
「……てめぇ!」
「うるせぇ!静かにしてろ!」
「どうしてそんなに俺が悪い、みたいになってんだ」
「とりあえず静かにしてろ。今宿題やってるんだ」
「ああ、そうかよ」
しばらく、会話をしない時間が続く。
谷風は……後ろで何かゴソゴソやっていた。
あいつ、相変わらず宿題しないな……。
そしてまた時間がたって、宿題が終わる、と同時に部屋の扉がたたかれた。
「私です」
「凛?」
扉まで近づき、ゆっくり開ける。
「よ!」
「お邪魔するわね」
「お邪魔します」
「って、何入ってきてるんだよ」
「いいでしょ?別に。なに、何か見られたら困るようなことやってたの?」
「いや、何もやってねぇけど……」
「それならいいだろ。核もケチケチすんなよ」
とりあえず、もう入ってきたんだから追いだすことはできない。
どうしてきたのか、用件を聞くことにした。
「どうして来たか……それはトリちゃんが話してくれるわ!」
「ええとですね……。探検部の活動についてです」
「あ、ああ。そういやそんなのも言ってたな……」
「忘れてたのかよ……」
「忘れちゃダメでしょ。カサくん」
そこまで攻められにゃならんことなのか。
「探検部は……地下を掘って未知の生物を探すんです!」
……。
「……は?」
「は?じゃなくて、そういうことよ、カサくん」
「そういうことだぜ」
「……分かった。まず他の問題はスルーしておいてやる。でも、未知の生物を探すってなんだ!?」
「知らないんですか?ツチノコ……とかそんなものに準ずるものが地下にもいるらしいんです」
凛がうるうるさせた瞳でこちらを見る。そんな目で見つめないでくれ。
はい、としか言えなくなるだろう。
「……わかった。わかった。でも、そんな部が許可されるのか?」
「トリちゃんはもう帰り際には部活の申請書をだしてたわよ……」
通りで帰る間際にいなかった訳だ。
「それで顧問は?」
これは問題だった。こんなものを許可してくれる先生は……。
「先生です」
「やっぱりか……」
先生。つまり……俺達の担任だ。
あの人……顧問にはつかない、って言ってたのにな……どうしてだろう。
「んで部長は?」
「神風くんにしちゃいましたけど……」
「……はい?凛。もう一度ちゃんと説明してくれるか?」
「……だから、部長は神風くんです」
「誰も許可だしてねーぞ!」
「そうよね。やめておきなさいって言ってたんだけどね……」
「え!?ふーかちゃんがそうしておきなさいって言ったのに!」
「愛瑠さん……?」
「覚えてないわ」
この人はずっと覚えてないわ、で済ます人だ……。
「核」
「優衣……」
俺はすがるように優衣を見つめる。
「頑張れ」
「……」
俺は探検部の部長になったらしい。
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第2話「探検部」へ続く