短編ギャグ小説【クイズ番組】
<とあるクイズ番組にて>
司会者(以降、司)「さぁ始まりました、『クイズ!日本一戦国に詳しい高校生は誰だ!決定戦!』。この番組では、激しい予選会を勝ち抜いた3人の中から優勝を決める、決勝戦を行いたいと思います!」
女子アナウンサー(以降、ア)「この中で栄えある優勝を手にするのは誰なんでしょうか!?」
司「さあ早速決勝戦に望む3人を紹介したいと思い・・・?あ、先に予選会の様子をご覧いただきましょう。」
ア「しっかりと台本通りに進めてくださいね~。」
司「ではこちらのVTRをご覧下さ・・・、あ、VTR無いんですね、じゃあ私のほうから説明していきましょう。」
ア「最初からこんなにズタボロで大丈夫なんですか?ていうか私この番組についてしっかり説明されて無いんですが大丈夫なんですか?」
司「大丈夫。私に任せなさい。」
ア「・・・ひどく心配です・・・。」
司「話を元に戻して予選会の様子を説明しますと、予選会はクイズというよりもちょっとしたゲームで行われました。」
ア「クイズじゃないんですね・・・。」
司「まぁそれはさておき、その内容が、まず我々のほうで特殊な箱を用意しました。そして予選会場に到着した順番にその箱の前に並んでいただき、箱の中に入っているたくさんのボールの内、1つを取っていただきました。もちろん、箱の中身は見えないようになっています。そして、その箱の中に入っている、金色のボールを取り出した方のみが、見事この決勝に進まれたわけです。以上が、予選会の説明です。」
ア「・・・・・・つまりくじ引きないしは抽選だったんですか?」
司「そういう意見もいただきました。しかし、世俗ではそう言うのかもしれませんが、これは立派な『予選会』なんです!勘違いしないようにお願いしたい!」
ア「何逆ギレしてるんですか!?クイズ番組の予選会がくじ引きは無いでしょう!普通!」
司「まぁ運も実力のうちなんですよ。織田信長だってあんなに有名だったのは、運であると説明しましたら、皆さん納得してくださったから大丈夫です。」
ア「まぁそうなんですけど・・・。ちなみに、その当りくじを引く確立はどれくらいだったんですか?ここにいる3人の方たちはどれくらいの強運だったんでしょうか?」
司「箱の中には当りの金色ボールが3つとそれから・・・他には何も入っていないのでまぁ大体100%ですね。」
ア「・・・くじ引きですら無ぇぇぇ!それはいわゆる『早い者勝ち』だよ!」
司「しかしそういうルールなんです。豊臣秀吉だって、天下を取れたのは、いち早く織田信長の仇をとったからなんですよ。そう説明したら、皆さん納得されました。」
ア「そうだよ・・・そうなんだけどさぁ!これクイズ番組だよ!他の落選した参加者があまりにも悲惨ですよ!・・・もう1つ聞きますと、参加者は、つまり並んだのに最初の3人で決勝進出が決まっちゃって、そんでもって変な理屈で納得してしまった方はどれぐらいいるんです?」
司「参加者はこの3人だけですね。」
ア「やっぱりぃぃ!この流れならそうだと思ったよ!もう予選会意味無いじゃん!やらなくてよかったじゃん!落選者いないんだからさぁ!」
司「まぁ過ぎたことを悔やんでも遅いんですよ。徳川家康だって、幼少時代のつらい思い出を・・・」
ア「もういいですから!わかりましたから!」
司「では、やっとこさ参加者の紹介をいたしましょう。まずは、東京都の〇〇高校の田中さんです!」
田中(以降、田)「え~と、友達と町を歩いていたら、急に声をかけられて、ホイホイついてきたら決勝戦でした。優勝目指してがんばりま~す。」
ア「応募したわけではないんですね・・・。」
田「あ、はい・・・すみません。」
ア「いえ、謝んなくていいですよ。てか謝るのはこちらですから。急にこんなところに連れてきてすみませんでした。」
司「次は、東京都の〇〇高校の高橋さんです。」
高橋(以降、高)「隣に座っている田中と歩いてたら、連れてこられました。がんばりま~す。」
ア「あ、友達だったんですね・・・連れてきてすみませんでした・・・。」
司「さぁ、そして最後は、〇〇高校のジョンソンさんです。」
ア「ジョンソン!?日本史クイズなのに外国人!?ちょっと無茶じゃないですかね~。」
ジョンソン(以降、ジ)「はじめましてジョンソンと申します。この大会に参加できることに対し、心から御礼申し上げると共に、必ず優勝を勝ち取ることをお誓いいたしましょう。」
ア「ものすごく日本語上手だぁぁぁ!これは期待ができますね!」
司「意外と外国の方々は、本気で日本のことを勉強していますので、意外な伏兵になります。だからこそ、ジョンソンさんも誘ったんです。」
ジ「隣の田中と高橋と歩いていたら連行されました。」
ア「・・・ただ単純に高校生3人グループ選んだら、おまけで外人ついてきただけじゃないのこれ?」
司「う、うるさいな。そうですよ。なんか文句あるんですか?」
ア「じゃあ、さっきの伏兵云々は嘘ですか?」
司「そうだよ!悪いか!」
ア「だから逆ギレしないでくださいよ!」
司「はぁ、はぁ、・・・・・・ではアナウンサーが空気を悪くしてしまいましたが、クイズに参りましょう!」
ア「いや正当なツッコミをしただけだろ・・・。」
司「では、ステージ1に参りましょう!ステージ1では、問題文が流れますので、答えを手元のクリップにお書きください。」
司「では第1問!1560年、織田信長が、奇襲によって今川義元を討ち取った戦いを何と言うでしょう?」
・・・・・・
司「はいっ、時間です!それでは皆さんの答えを見てみましょう!」
田『桶狭間の戦い』
高『桶狭間の戦い』
ジ『俺、狭間での戦い』
ア「・・・正解者はどなたでしょうか!?」
司「正解者は・・・お見事!田中さんと高橋さん、正解です!ジョンソンさんは少し惜しかった!」
ア「惜しいというか、根本的な部分が間違ってるよ。うろ覚えしたのバレバレだよ。てか、こんな簡単な問題を間違えているんじゃ、先が見えましたね。」
司「ジョンソンさん、次は頑張って正解してくださいね!では、第2問参りましょう。」
ア「では、問題をお願いします。」
司「第2問!先ほどの問題で出た、織田信長の天下統一を空気を読まずに潰した張本人で、本能寺を起こした人物は誰でしょう?」
ア「空気読まずにとか言わないで下さい。彼にもいろいろ事情があったんですよ、きっと。」
司「さぁ、解答をお書きください!」
ア「私のツッコミ、スルーされた・・・。」
・・・・・・
司「さぁ、皆さんの答えを見てみましょう!」
田『明智光秀』
高『明智光秀』
ジ『アーッ、ケチーッ!3つー!?ヒデーッ!』
ア「・・・正解者はどなたでしょうか!?・・・これ絶対言わなきゃいけないんですか?もうアホらしいんですけど・・・。」
司「正解者は・・・。お見事!全員正解です!さすがに簡単だったかこれは!」
ア「待て待て待て待て待てー!どう見たって約1名おかしいだろ!人名なのに『!』とか『?』とか『ッ』とか入ってるよ!」
司「なにいちゃもんつけてるんですか。じゃあ確認してみましょうか?ジョンソンさん、答えを言ってみてください。」
ジ「あ、けち、み、み、みつ、みつひ・・・?で?」
ア「はい!?」
司「『あけちみつひで』ですね?」
ジ「は、はい、それで結構でございます。」
司「ほら見なさい。正解じゃないですか。解答者にいちゃもんつけるのは止めていただきたいものだね!」
ア「どこが正解だよ!あんた最後誘導しただろ!最終的に答えは『それで結構でございます』って、これあいつの意思じゃねーじゃん!しかもあんた、『止めていただきたいものだね!』って、こちらからすればその逆ギレを止めていただきたいんですけどー!」
司「まぁまぁカッカしないで。さぁ次の問題に参りましょう。」
ア「人の話を『カッカしないで』で流すなぁぁぁぁ!」
司「第3問!」
ア「人の話を聞けぇぇぇぇ!そしてしっかり返答しろぉぉぉぉ!」
司「では、後でゆっくり話し合いましょう。今は時間が無いので先に進みます。」
ア「・・・まぁ、それならいいでしょう。」
司「では、第3問。これは少し難しい問題です。武田四天王を全員お答えください」
ア「・・・無理だろぉ!まず私は『武田四天王』を知らないわ!」
司「皆さん、ぜひ頑張ってください」
・・・・・・
司「せは、答えを見てみましょう」
田『カンナ、シバ、キクコ、ワタル』
高『カゲツ、フヨウ、プリム、ゲンジ』
ジ『馬場信房、山県昌景、内藤昌豊、高坂昌信』
ア「っ!?・・・正解者はどなたでしょう?」
司「正解者は・・・。なんとお見事!ジョンソンさん、正解です!なんとなんと!凄すぎる!」
ア「おかしい・・・。何かがおかしい・・・。あいつなんかスタッフに言われたのか?カンニングしたのか?」
司「いちゃもんはつけないように。おそらく・・・。今までのは簡単すぎて付き合ってられないから、ふざけていたのでは・・・。そして、少しまともな問題を出したから、真面目になったのでは・・・。」
ア「え~と・・・。ジョンソンさん、どうなんでしょうか?」
ジ「コ、コレガ、ワ、ワタシノ、シンノスガ、スガタダ!」
ア「本気になったら日本語がたがたになってるぅ!今までのはなんだったんだよ!」
司「世界にはいろいろな人がいるものですねぇ・・・。」
ア「いろいろにもほどがあるよ!もうおふざけの段階に入りつつあるよ!」
司「・・・いろいろビックリしたところで、第1ステージは終了です。第2ステージ、つまり最終ステージに入りたいと思います!第2ステージは、早押しクイズです。先に2問正解された方が、見事優勝者となります。」
ア「なるほど・・・って、ちょっと待ってください。先程の第1ステージの結果はどう影響するんですか?」
司「全くしません。あれは優勝とは関係無い、ちょっとしたお遊びですよ。」
ア「はい!?関係無いんですか!?じゃあ無駄な時間だったわけですか!?」
司「無駄とは失礼な!あれはいわゆる腕試しですよ。そして、これからが本番です。」
ア「完璧無駄な時間じゃないですか!」
司「ギャーギャーギャーギャー喚かないで下さいよ。時間が無いんです。」
ア「じゃあいらない第1ステージを削れ!」
司「そういう進行方法なんですから仕方ないでしょう。この話はまた後でゆっくり話し合いましょう。」
ア「後での話し合い、物凄く長くなりそうですね・・・。」
司「それでは気を取り直して、第2ステージ、スタートしたいと思います。第1問!甲斐の虎と呼ばれた武田信玄と、越後の龍と呼ばれた上杉謙信が5回も戦いながら、決着がつかずに終わった戦いは・・・」
『ピンポーン!』
司「お!田中さんどうぞ!」
田「川中島の戦い。」
司「・・・お見事!正解です!田中さん早かった!」
ア「高橋さんも押したんですけどね~。少し遅かった。」
司「これで早くも田中さんリーチです!」
ア「まぁ2問先取ですからね。ということはこのクイズ番組、最速10分くらいで終わりますよね。無駄な部分カットしたら。」
司「人生はいろいろ寄り道して、最高の道に辿り着けるものです・・・。」
ア「いや格好良くないからね。ちょっと悟ったと見せかけて全然悟ってないからね。」
司「さぁ田中さんがこのまま独走で優勝するのか!第2問!織田信長によって滅ぼされた室町幕府最後の将・・・」
『ピンポーン!』
司「お!今度は高橋さん、どうぞ!」
高「足利義昭。」
ア「さぁどうでしょうか!」
司「・・・お見事!高橋さん正解です!田中さんに追い付きました!リーチです!」
ア「田中さんは1秒程遅かった!惜しかったですね~。そして全く動きが無いジョンソンさん!この人は凄いのか凄くないのかよくわかりません!」
司「さぁ次の問題で優勝が決まります!」
ア「まだ決まらないからね。あんた完全にジョンソンをシカトしたろ。」
司「・・・第3問!」
ア「無視するな聞いてないフリをするな返答をよこせ!」
司「そんな一気にいっぱい言わないでくださいよ。冗談ですよ。ジョンソンさんには期待してますからね。是非頑張って下さい。」
ジ「そのご期待に添えるような活躍をいたしましょう。」
ア「やっぱり言葉遣いはやたらと丁寧だな・・・。」
司「では第3問!少し難しい問題です。」
ア「またやたらと難しいんじゃないんでしょうね・・・。」
司「豊州三老の1人、立花道雪の養子である、立花宗茂の実父は・・・」
『ピンポーン!』司「さぁ来た!ジョンソンさんどうぞ!」
ジ「高橋紹雲。」
ア「・・・さぁどうでしょうか!」
司「・・・お見事正解!さすがジョンソンさんここで本気を出したぁ!」
ア「それはさておき問題難しすぎだろ!他の2人ポカンとしてますよ!」
司「まぁ日本一決定戦ですから難しくしてますよそりゃ。」
ア「スタッフがただ適当に選んだ3人組ですよこの人達は!」
司「さすがに適当は無いでしょう。ちゃんと日本史に詳しい高校生を選らんですよ。」
ア「え?そうだったんですか?」
司「まぁ見かけですけど。」
ア「外見で判断をするな!てか見かけで選ぶのに外人選ぶってセンス無さすぎだろ!まぁ残念ながらその外人が一番強いんだけどさ!」
司「ならいいでしょ。結果オーライ結果オーライ。最終問題に移りたいんですがよろしいですか?」
ア「・・・もういいです。疲れました・・・。」
司「それでは最終問題!泣いても笑ってもこれが最後です!ではいきます!油売りから美濃の大名になったと言われている、斎藤道三のあだ名は何でしょう?」
・・・・・・
ア「誰も分からないようですね。」
『ピンポーン!』
司「さぁ来た!これで優勝が決まるのか!田中さんどうぞ!」
田「成り上がり者。」
ア「さぁどうでしょうか?」
司「・・・残念、不正解です。そんなに可哀想なあだ名ではないです。」
『ピンポーン!』
司「さぁ今度は高橋さんだ!どうぞ!」
高「油売りのおっさん。」
ア「さぁ今度はどうでしょうか!」
司「・・・それも違います!別に油燃やして幻覚を見ていたわけではないです。」
ア「さぁついに残るはジョンソンさんのみとなりました!」
・・・・・・
『ピンポーン!』
司「ついに、ついに、これで優勝が決まるのか!ジョンソン、どうぞ!」
ジ「マムシ・・・?」
ア「なんだか随分と的外れな答えですがどうでしょう?」
司「・・・おめでとうございます!お見事正解!優勝です!」
ア「嘘ぉぉぉ!マムシなの!?」
司「はい。これはマジです。ジョンソンさん、おめでとう!本当におめでとう!優勝賞品として、このベンツを差し上げます!・・・と言いたいところですが・・・。」
ア「差し上ないんですか?」
司「彼らは高校生なので運転免許を取得できません。なので・・・このベンツと、写真を撮らせてあげましょう!」
ア「・・・いらねぇぇぇ!この長時間の見返りが写真かよ!てかじゃあそのためだけにベンツ用意したのかよ!金の無駄にも程があるぞ!」
司「いや、そのベンツは私のです。」
ア「お前のかよ!」
司「そうですよ。何か問題でも、庶民ども。」
ア「すげぇ嫌な奴だぁ!いやまぁ前々からわかってたけど改めて実感したわ!」
司「さぁさぁみんな集まって。」
ア「みんな!?ジョンソンさんだけじゃないんですか?」
司「もうメンドイので、みんなで記念写真撮って帰りましょう。」
ア「・・・はぁ・・・。」
司「じゃあ撮りますよ。ハイッチーズッ!」
『カシャ!』
司「さぁでは終わりたいと思います。いつ放送されるのか、てか放送できるのかわかりませんが、皆さんさようなら~!」
ア「さようなら~!・・・・・・はぁ終わった・・・。・・・・・・・・・司会者、帰らないでください。ゆっくり話しましょうと言いましたよね。」
完
どうも今回がデビュー作となりました、Cain と申します。なにぶん初めてですので、改善点などありましたら、どしどし教えてください。宜しくお願いします。次回も、短編ギャグをやるつもりです。