ドアマットヒロインの倍返し~加虐するのは構いませんが、怨みが蓄積するほど魔力が上がるスキル持ってますけど大丈夫ですか?~
「何度言ったらわかるの!」
銀のスプーンからこぼれ落ちたスープがテーブルクロスを濡らしたと同時に、私の右頬に義母の平手が飛んできた。
赤くなった頬を押さえながら私は利き手とは逆の手でスプーンを皿に置く。
「申し訳ございません、お義母様」
「スープひとつまともに飲めないなんて、どんな教育をしていたのかしらね、あの売女は」
義母はいつものように、私の亡き母を侮辱する。
重厚な長卓の上座に腰を下ろしている実の父は、叩かれた私に目を向けることもなく、名家であるクロムウェル家の伯爵らしく綺麗にスープをすすっていた。
先妻が侮辱されているというのにだ。
しかし、これが私の日常である。
利き手が左であることをあらかじめ伝えてあろうが、たったほんの一滴のスープが落ちただけだろうが、義母にとっての教育は暴力であり、父にとっての教育は傍観である。
私がどんな目に遭おうと彼女らには、寵愛すべき対象が他にいるので問題ないのだ。
義母の連れ子。私の義妹、エルシアだ。
エルシアがいる限り、私に愛は注がれない。義母はこの屋敷に来てから私の名前であるニーナという単語すら発したことがない。『あれ』だとか『そこの』だとか。私を呼ぶときはその程度で十分なのだ。
「魔力もないできそこないが」
義母が冷たい目でこちらを見て、吐き捨てる。
六歳の時に母が亡くなり、七歳の時に義母と義妹がやってきた。
そこから三年、毎日がこのような日常だ。
さすがにもう慣れた。
夕食が終わると、部屋に戻るため私は暗がりの長い廊下を進む。
まだ頬がジンジンと痛む。
そんな私の背後に二歳下のエルシアがやってきて言った。
「お姉様、大丈夫?」
振り返ると、エルシアは綺麗に畳まれたハンカチを私に差しだした。
「ありがとうエルシア」
私は四つ折りのハンカチを受けとると、そのまま開く。
すると、大量のウジ虫が開かれたハンカチから湧いてきて、私の腕をよじ登ってきた。
「きゃあっ!!」
動転しながら必死に腕についたウジ虫を振り払う。気持ち悪くて気を失いそうだ。
「あら~、お姉様のお仲間だと思って魔法を使って集めたのに、どうしてそんな嫌そうな態度をとるの? 落ち込んでいるお姉様を励まそうと思ったのに、エル悲しいわ」
クスクス笑うエルシアの足元で、私の払ったウジ虫が煙のように消えていく。彼女が得意とする簡易的な召喚魔法だろう。
「ああ、お姉様はエルのように魔力がないから、魔法を使えることに嫉妬しているのね。お姉様想いの健気な妹のプレゼントにまでそんな私情を挟むなんて、性格が悪い義姉ね」
嫌になっちゃう、なんて言いながら背中を向ける。そして、
「明日いらっしゃる王子も性格の悪いお姉様よりエルを婚約者として選ばれるでしょうね。まあ、もとより魔力がゼロの人間は候補にもあがらないでしょうけど。ふふふ」
楽しそうに自室へと消えていくエルシアを見ても、私は何も感じない。これが日常だから。
「そう……日常だ」
つぶやき、自室のドアを開け、ベッドにダイブ。
枕に顔をうずめる。
日常……日常……昨日は義母に腹を蹴られた。一昨日はエルシアから泥水を被せられた。
そんな日常……こんな日常……。
私はさらに深く枕に顔を押し付けて――。
笑った。
「ぷ……ぷはははは! あはははは!」
そしてベッドから飛び起きて指を顔の前で振った。
自分だけが見えるステータスのチャートを出現させるためだ。
目の前に浮かぶ半透明のステータスウィンドウ。そこには、この世界の誰もが驚愕するであろう数値が刻まれている。
【魔力値: 103,085】
「どれどれ……今日の分は。うん……上出来ね」
この世界の貴族にとって、魔力は資産であり、その者が持つ魔力量は家柄と同等の価値がある。
天才と呼ばれるエルシアの魔力量は一万弱。八歳にして成人並みの値だ。
義母やエルシアが執拗に魔力ゼロの私を卑しめるのはこれが理由だ。
伯爵家の令嬢が一国の第一王子の婚約者として候補に挙がるのもエルシアの魔力が圧倒的だからであり、
逆に、父が実の娘である私にまったく関心がないのもまた、私の魔力がゼロだからである。
しかし今、私のステータスウィンドウに記されている魔力は10万超え。魔力ゼロと蔑まれる、この私がだ。
私がこの魔力を溜めこんだ『特殊スキル』の存在……そして、『前世の記憶』を思い出したのは一週間前のこと。
私の世界が、音を立てて塗り替えられた日の出来事だ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その日、私は自室で唯一の宝物を眺めていた。
亡き母の形見、魔法で写し取られた「魔写」の一枚。
それは触れると微かに母の体温が伝わってくるような、奇跡のような品だった。
この地獄みたいな生活で、唯一、私を救ってくれる存在だった。
そこへ、予告もなく部屋の扉が蹴破られた。
「あら、まだそんなゴミを持っていたの? お姉様」
現れたのは、意地の悪い笑みを浮かべたエルシアだった。
エルシアは私の手から、不意を突くように写真を奪い取った。
「返して、エルシア! それだけは……」
「嫌よ。お母様が仰っていたわ。この屋敷に先妻の未練を残しておくのは、精霊占術的によくないって。だから処分しなきゃね」
体温が一気に下がった。やだ……。やだやだ……!
「やめて、お願い!」
私がすがりつこうとした瞬間、エルシアが私の足を払い、床に這いつくばらせた。
彼女はそのまま私の背中を靴のまま踏みつけ、写真を暖炉の火にかざす素振りを見せる。
「騒がしいわね。何事?」
開かれたままのドアから義母が部屋に入ってきて私たちを一瞥した。
「お義母様……エルシアが……エルシアが母の……写真を……形見を……」
上手く動かない喉を必死に開いて私は義母に訴えかける。
しかし、義母は私を見下ろしながら、
「ああ、やっと処分する気になったのね。その写真は、あなたの執着の象徴。そんなものにいつまでもすがっているから、魔力がゼロのままなのよ」
「ちが……お義母様……」
義母はエルシアから写真を取り上げるとそのまま躊躇なく暖炉に放った。
赤い火の中に吸い込まれる写真。
母の優しい微笑みが、端から茶色く変色し、丸まっていく。
そんな苦悶に歪むような写真の母を見て義母は鼻で笑い、言った。
「醜い顔。まるであの売女そのものね」
その瞬間、私の中で「何か」が、ダムが決壊するように弾けた。
――ピコン。
脳内で、あまりにも場違いで軽快な、電子音が鳴り響く。
『アラームが作動しました。蓄積魔力が規定の値を突破したため、固有スキル【被虐投資】のセーフティを解除。記憶を解放します』
視界がホワイトアウトした。
なだれ込んできたのは、前世で教室の隅、泥靴を投げつけられながら加虐され続けた記憶。
そして死後、異世界に転生させてくれると言った神と交わした、あの約束。
『神様……。もう私はあんな記憶を抱えるのも、加虐されるのもこりごりです。どうか前世の記憶を消去し、新しい平凡な人生を歩ませください』
『わかった。しかし、不憫な人間よ……一つだけ好きなスキルを授けることもできるぞ』
『ならば……万が一また加虐されるような人生を歩んでしまった時の保険に、その怨みの分だけ魔力を蓄積するスキルをください。魔力がその世界の平均値の十倍に達した時、全ての記憶を呼び戻し、蓄積した魔力をこの体に宿してください』
そう、それが復讐を覚悟した時の合図。
「……あ、は。あはは」
灰になった写真を見つめながら、私は声を漏らした。
悲しみは一瞬で霧散した。代わりに、この三年間、家族から受けたすべての『加虐』が、莫大な『魔力』へと変換されていくのを感じた。
「お姉様、大丈夫? ゴミ処分の手間が省けて嬉しいのかしら」
エルシアの皮肉が耳に届く。
(いいわ、好きなだけ笑いなさい)
私は床に顔を伏せたまま、内側に溢れ出す魔力を必死に抑え込んだ。
今ここで解放すれば、伯爵邸ごと彼女たちを消し飛ばしてしまう。
そんな一瞬の死では、この三年の『投資』に対する『配当』としては少なすぎる。
私は、顔を上げた。
瞳の奥に宿った、冷徹な憎悪を隠して。
「……申し訳ございません。お義母様、エルシア。片付けの手間を省いていただき、感謝いたしますわ」
その言葉に、義母たちは気味悪そうに鼻を鳴らして去っていった。
彼女たちは気づいていない。
自らの手で、この世で最も恐ろしい「怪物」の眠りを覚ましてしまったことに。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
婚約者候補の視察に王子が我が伯爵家にやってくる、その日。
私は庭にある小さな物置小屋で柱に縛られていた。
もちろん縛ったのはエルシア。
加減を知らないのか、わざとなのか、ギチギチに縛られた縄が体中に食い込んで痛い。
「王子が来た時に、魔力ゼロのお姉様がいたら恥ずかしいでしょ? だから今日はここでお留守番ね」
「こんなことしなくても自室で大人しくしてるわ」
「あら……そうだったの? でも、もう縛っちゃったから。言うの遅いわよお姉様。鈍くさいのね」
エルシアはケラケラと笑う。
「それにしても、王子まだかしら。退屈だわ」
「……」
「あっ、そうだ。お姉様、ダーツって遊び知っている? ボードに向かって矢を投げる遊びなの」
意地の悪い笑みを浮かべるエルシアを見て嫌な予感がする。
予感通り、エルシアはポケットから小さなナイフを取り出した。
予感は合っていても、予想は外す。まさかナイフを取り出すとは予想外だ。
「ダーツしたいんだけど、ナイフしかないわ。まあ、矢の代わりになるでしょう。あとは的になるボードだけど……」
ニヤリと悪魔みたいに笑うエルシア。
まさか……いくら、こんな性悪な妹でも、さすがに……。
「お姉様、的になって」
噓でしょ……?
「いくわよ」
私が制止する間も与えず、エルシアは振りかぶった。
「エルシア! どこにいるの! 王子がいらっしゃったわよ!」
すんでのところで義母の声が庭から聞こえた。
エルシアはつまらなそうにナイフをしまい、物置小屋の戸に手をかける。
「いい、お姉様? ここから出てきたら、ただじゃおかないからね」
そんなの、言われなくてもわかっている。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「アステイル殿下、ようこそお越しいただきました」
父の媚びを含んだ声とともに、屋敷の玄関先に銀髪の麗人が現れた。
第一王子、アステイル。
まだ十六の青年ではあるが背は高く、中性的な綺麗な顔立ちとは逆に、貫禄のある立ち姿だ。
彼は若くして高い魔力感知能力を持つことでも知られている。
アステイル王子は庭に足を踏み入れると、わずかに眉をひそめた。
「……ほう。この屋敷には、非常に興味深い『力』が満ちているようだ」
義母はそれをエルシアへの賛辞だと勘違いし、鼻を高くした。
「ええ、殿下! うちのエルシアは、この若さで上級魔法の一端を操る天才でございますの」
エルシアもまた、得意げに一歩前に出る。
「お初にお目にかかります、殿下。私に、その……魔法の演武をご覧いただく機会をいただけませんか?」
アステイル王子は、エルシアには目もくれず、庭の奥……私のいる物置小屋をじっと見つめた。
視察魔法で庭先の様子を伺っていた私の魔力を感知されたらしい。
「そこに誰かいるのか」
王子が言う。
その言葉に慌てて義母が割って入る。
「あ、あそこはただの物置小屋です。誰もいませんわ。さあ王子、どうぞ屋敷の中へ」
義母のあの口ぶりだと、私をここに縛りつけたのはエルシアの独断ではなかったようだ。
しかし、王子は義母の言葉にも耳を傾けず、物置小屋に近づいてくる。
物置小屋で縛られた少女の姿を見たら、王子はどんな反応をするだろうか。
それはそれで面白いかもしれない。
王子はゆっくりと物置小屋の戸に手をかける。
「王子! いけません!」
エルシアが駆け寄るも、数秒遅かった。
庭の光は既に小屋の中に差し込み、私の姿を照らしていた。
縄が解け、凛とたたずむ私を。
「ほう……、確かこの屋敷には令嬢が二人いると聞いていたが、君がそのうちの一人か?」
「はい、王子。このような場所で失礼いたします。私は魔力がないため、王子の前に姿を現すこと自体、無礼かと思い、小屋の掃除をしていました」
「魔力がない……それは本当か?」
王子の問いに答えたのは私でなく、父だ。
「殿下、あれは……先妻の子でして、魔力もほとんどない落ちこぼれです。それよりも、こちらのエルシアを……」
「黙れ。私は彼女に話しかけている」
王子の声には、抗いがたい威圧感があった。 私は静かに一歩、前へ出た。
「名前は?」
「……ニーナ・クロムウェルと申します」
「ニーナ。君は、本当に自分の魔力がゼロだと思っているのか? 正直に言ってみろ」
小屋の前で風が吹く。
その風が通り過ぎるのを待って、私は言った。
「いいえ、思っていません」
その場にいる、家族が丸い目をして、私を見た。
そして、すぐにその目つきは睨みに変わる。
彼らの目には私が王子の気を引きたい大ぼら吹きに見えてるのだろう。
その証拠に義母は激昂し、
「殿下、このエルシアこそ我が家の至宝。先代の聖女に匹敵する魔力を持っております。それに比べて、あそこにいるニーナは……石ころも同然の無能。王子の前だからとすぐわかる嘘までついて、お恥ずかしい」
「ほう……では、どちらが真実を述べているか、実際に比べてみようか」
王子の合図で、庭園に簡易的な結界が張られた。
「エルシアだったか。ニーナの相手をしろ。本当に君が婚約者としてふさわしいほどの才能があるならば、その魔力で彼女を圧倒することも可能だろう?」
つまり、実戦をしろと。
顔に似合わず、えらくヤンチャな王子だ。嫌いじゃない。
当然、エルシアも受けて立つ。
「もちろんです、殿下! お姉様相手なら、三秒もいりませんわ!」
エルシアは勝ち誇った顔で結界の中へ入った。
義母は「無能な娘にも使い道があったわね」と嘲笑い、父は余計なことをと言わんばかりに私を睨みつけている。
私も小屋から出て、結界の中に入る。
すると、エルシアが私に向かって言う。
「縄の縛りが甘かったみたい」
「そうね。魔法でも使わない限り、そうそう縄なんて解けないものね」
結界の中での対峙。
エルシアは手を前に掲げ、加虐心に満ちた笑みを浮かべた。
「お姉様、ダーツの続きしましょうか」
彼女が放ったのは、上級魔法『火炎槍』。
並の魔術師なら即死する威力の炎の槍が私に迫る。
(ダーツの矢はそんなに大きくないって)
私は呆れながら、微動だにせず、その炎を待つ。
そして、ただ胸の内に眠る『怨み』で蓄積された魔力を、魔法へと変換させた。
「――お返しするわ、エルシア。三年間、ずっと溜めていた分よ」
私の周囲に、漆黒の魔力が渦巻いた。
エルシアの放った炎は、私の魔力の奔流に触れた瞬間、霧のように一瞬で消火されていく。
「は……? な、なに、これ……」
そういえば、私のスキルにはとっておきの『裏』がある。
原理として蓄積された魔力は使えば当然減るが、怨みの原因となった相手に叩き込む時だけは、消費ゼロ、威力は二倍となる。
つまり倍返しだ。
「利息もたっぷりつけて、一括返済してあげる」
私がエルシアに近づこうと一歩踏み出すごとに、結界全体がミシミシと悲鳴を上げる。
彼女は困惑の表情を浮かべながら、必死に次の魔法を放つが、全て煙と化す。
次第にその困惑は、恐怖へと形を変えていった。
「や、やめて! 来ないで!」
「いやよ」
私は右手をエルシアの胸元にかざした。
発動したのは、彼女が最も得意とし、私をなぶり続けた召喚魔法の、究極版。
「食いつくせ、奈落の眷属」
地面から、エルシアが見せたウジ虫の数万倍は大きい、黒い蟲の群れが溢れ出した。
それは彼女を食い破るのではなく、ただひたすらに、彼女の「魔力」を食らい尽くしていく。
「あああああ! エルの、エルの魔力が……消える、消えちゃう!」
魔力を失うことは、貴族として、傲慢な彼女の価値そのものを失うこと。
私は泣き叫ぶエルシアの隣で、優雅に微笑んだまま、結界の外にいる義母と父に視線を送った。
「お義母様、お父様。次はお二人の番です。……私に溜まった『怨み』、まだ一割も使っていませんのよ?」
「そこまで!!」
私を制止したのはアステイル王子だった。
「クロムウェル伯爵。これほどの才能を魔力のない無能として隠匿していた罪、重いぞ。……この娘は、私が連れて行く」
「殿下、お待ちください! あれは、何かの間違いで……!」
「黙れ!」
アステイル王子は父を一蹴すると、私のもとにやってきて、ひざまずく。
そして、昨夜、義母に叩かれ、赤く腫れた私の頬に、優しく指を触れた。
「ほう……【被虐投資】か。世にも珍しいスキルを持っている」
「……!? アステイル王子……なぜ私のスキルを」
「私が優れているのは魔力感知だけではない。その者に触れれば特有のスキルも把握できるのだ」
「でしたら……なぜ、私がこのような莫大な魔力を持っているかも、おわかりでしょう。そして、その魔力をどのように使ったかも」
「ああ、そうだな。……ニーナ・クロムウェル。君を婚約者として王都に招きたい」
「王子……? 本当に理解していますか? 私は怨みに囚われた哀れな人間です。王子の婚約者などには……」
「ああ、理解している。この膨大な魔力……。君はこの屋敷で、どれほどの『代償』を支払ってこの力を練り上げたのか。私は今の傲慢な王である父の国政を変えたい。そのためには君のような強い心を持つ者が横にいてほしい」
「……わかりました。ですが、王子。王都に行く前に家族に別れを言わなければ」
私はちらりと、顔を青ざめさせて震えている父と義母、そして小さく丸まったエルシアを見た。
「お父様、お義母様……エルシア。ご安心ください。皆様が私に教えてくださった『教育』の数々……。王宮で私が権力を得た暁には、その何倍、何十倍にして、丁寧にお返しいたしますから」
私の瞳に宿る、今度は隠すことのなかった冷徹な憎悪に気づいた義母は、悲鳴を上げて腰を抜かした。
そんな義母の情けない姿を見て、私は笑った。
まあ、今日はこれくらいにしとこうか。
「さあ、行きましょうか。アステイル王子」
私は王子の差し出した手を取り、一度も振り返ることなく、地獄だった家を後にした。
これから始まるのは、積み上げられた怨みの「清算」の時間だ。
別に報復するならすればいい。
私の魔力は、彼女たちが加虐するたびに、さらに高まっていくのだから。




