トンネルを抜けたら異世界だった
『アレ?』
トンネルを抜けてからなんか違和感を感じる。
トンネルを抜けたら雪国だったじゃ無いけど、なんかおかしい。
トンネルに入る前と同じくノロノロ運転は続いてはいる、入る前は1センチ刻みで止まったり進んだりのノロノロ運転だったのが、抜けてからはノロノロではあるけど止まらずに進んでいる。
でも、違和感はそこじゃ無い。
前後に見える車を見ていたら気がついた。
さっきまで2台程前の車のタイヤがチェーンを巻いて無いノーマルタイヤだったのに、タイヤにチェーンが付けられている。
ノーマルタイヤのまま雪が踏み固められアイスバーンになった高速道路を走行しているのを見て、お前みたいな奴がノロノロ運転の元凶なんだぞと心の中で毒づいていたから覚えていた。
だいたい雪国以外の地域の奴等は冬になってもタイヤ交換しない奴が多いんだよな。
それなのにノーマルタイヤのまま雪国に来てスタックする。
今日も昨晩の天気予報で積雪注意報が出ていてテレビやネットのニュースでは、タイヤ交換してから外出しろと国交省や警察が注意していたにもかかわらず、交換せずに走ってる馬鹿がいるんだからな。
そんな奴等は皆んな捕まえてしまえば良いんだなんて事を考えていたら、前方に異様な物が見えた。
国防軍の兵士のようなっていうか外国の武装警察官みたいに、軍の兵士が被ってるヘルメットを被り防弾チョッキを着込んで自動小銃を所持した警官が、ノロノロと走行している車列を誘導していた。
国防軍の兵士では無く警察官だと分かるのは、防弾チョッキの胸元に大きな字で警察と書かれその下に警察の字より小さな字で、POLICEと書かれているから。
警官の後ろ側に何かが書かれたボードが掲げられていてその先の路側帯にはトラックが止められ、運転手らしい下着姿にされた男が荷台に縛り付けられている。
縛り付けられている男の前をノロノロと通り過ぎて行く多数の車両の助手席から、唾が吐きかけられたり雪玉をぶっつけたりペットボトルの水が掛けられたりしていた。
中には態々路側帯に車を止め、「非国民のクソ野郎」などと罵声を浴びせながらペットボトルの水を頭から振りかけてる人たちもいる。
近づくと警官の後ろに掲げられたボードの文字が読めた。
ボードには、『ノーマルタイヤで高速道路を走行し、渋滞を発生させたのはこの男です。ノーマルタイヤで雪道を走行し国家の生産率を阻害した罪で、この男は強制労働所に収容され再教育されます。日本社会主義人民共和国保安警察』と書かれ、下着姿にされた男は警官に殴られたのか顔が腫れ上がり雪が舞う中水を頭からかぶせられ唇が真っ青になっている。
私はその腫れ上がった男の顔を見ながら、トンネルを抜けたら異世界に転移していたのだと理解した。




