【1−1】正義の光
ここは、アステリア学院。次期勇者、聖騎士等を数多く輩出する名門校でもある。
そんな学院の中でも名が馳せるのは、今国で最も有名な勇者、アラン・ケイスターとその仲間達であろう。
勇者としての実力は本物。様々な人を救ったのも事実。校内でも街でも持て囃され、勇者達は天狗になっていた。
気に入らない物、不都合な事は力で捻じ伏せた。でも、国民はそんな事知らない。残るのは、勇者の偉大なる活躍のみ。
そんなを有頂天になった勇者達を良く思わない者は沢山居た。特に、兵士等は罵詈雑言を浴びせられる、散々な扱いにうんざりしていた。
そしてここにも、また一人。ヒナ・アーロンと名乗る少女は、勇者パーティーの荷物持ちだ。
戦闘も出来ず足手まとい。仲間…………いや、仲間とすら言えないかもしれない。勇者達からの扱いも酷いものだった。
「またアラン様は竜を討伐なさったらしいわよ」
「まぁ凄い。それに比べて、あの子は…………」
クラスメイトはヒナを見て笑った。足手まといだ、なんて散々言われてきた。もう慣れっこだ。
そんな時、校内放送が流れた。
「第二学年、ヒナ・アーロン。至急、校長室まで来るように」
校長じゃない、別の女性の声。周りの密々声がより騒がしくなった。
「ねぇ聞いた?今の放送」
「ヒナってあの子よね、荷物持ちの」
「やっと退学するんじゃなくて?」
そんな事も気にせず、ヒナは席を立った。何も聞かないふりをして、校長室へ向かった。
校長室の扉をノックすれば、「入れ」なんて声が聞こえた。恐る恐る扉を開ければ、そこに居たのは校長ではない。
「貴方がヒナ・アーロンね。よく来てくれたわ」
気高く冷たい声の主は、中央に立つ金髪の女性だ。でも、ここにこんな人は居ない筈。女性はまた口を開いた。
「じゃあ、自己紹介させてもらうわね。私の名はルミナス・キャメル」
そう言ってルミナスはスカートの裾を持ち上げ、優雅にお辞儀した。
「【 正義の光 】。四天王が一人、ルミナスよ」
そう。これが全ての始まりだ。