【1−0】選ぶ者達
開けた窓から春風が通り去った。亜麻色の髪を靡かせ乍、四天王が一人、ニック・レナード は言った。
「そろそろ、最後の一人を決めなければならない」
静かな風が流れる。沈黙を破る様、金髪の女性、ルミナス・キャメル は口を開いた。
「なら、良い人間が一人居るわ」
「へぇ、連れて来れるか?」
「そうね、暇が有れば連れてきましょう」
ルミナスはつまらなそうに言った。こんな会議、もう何十回としてる。早く終わらせてほしかったのだ。
「あぁ、宜しく頼むよ」
そんなルミナスに、ニックは笑い掛け、目線を隣の少年、シャルル・クライスへと向けた。半泣き状態のシャルルは俯き呟いた。
「怖い人はやだ怖い人はやだ怖い人はやだ…………。ど、同年代ですように…………」
「あら、丁度良いわ。シャルル、貴方より二つ歳下の女の子よ」
そう言われ、シャルルは顔を上げた。彼はたったの十九歳、この中でもっとも歳が低い。その二つ下となれば―――。
「えっと…………十七歳…………? 僕ですら、四天王になったのは十八の頃なのに……」
そもそも、四天王は国王と同等、とまでもいかなくとも、それなりの権力を持つ。本来、成人もしてない子供が座れる席では無いのだ。
「えぇ。頭脳明晰、そして多才。とても十七とは思えないわ。…………そうね。欠点を挙げるなら、庶民である事位かしら」
「そんな事は気にしない。王族だろうと平民だろうとね」
ニックはシャルルに「そうだろ?」と問い掛けるよう微笑んだ。シャルルはそれを見て頷くしかなかった。
平民は魔法を使えない者も多く、金も権力も無い。そんな平民から四天王が出たら、当然非難の声もあるだろう。
「私達が判断するのは、あくまで実力。身分なんかで良し悪しを決めたりしないわ」
ルミナスはそう言って席を立った。
「これで会議は終わりね。私は予定があるの。帰らせてもらうわ」
「ああ。君の言う新人、期待してるよ」
ニックの言葉を聞き終えれば、ルミナスは扉の奥へと消えていった。