いあそんとアルゴ船と、黄金の羊毛の冒険
「へらくれす、アルゴ船に乗らない?」
その日、ぼくは筋トレ(岩投げ)をしていた。
そこに現れたのが、いあそん。
爽やか系リーダーで、笑顔がまぶしい。だけど、だいたい無茶ぶりしてくるタイプ。
「え、アルゴ船って、あの伝説の……?」
「そう。黄金の羊毛を取りに行くんだ。仲間も集めたし、船もあるし、あとは冒険するだけ!」
「いやいや、黄金の羊毛って、ドラゴンが守ってるやつですよね?
それ、マジで取りに行くんですか?」
「うん。マジで」
即答かよ。
でも、ぼくの中の“冒険したい欲”がうずいた。
気づいたら、ぼくはアルゴ船の甲板に立っていた。
アルゴ船には、ギリシャ中から集まった猛者たちが乗っていた。
おるぺうす(音楽担当)、かすとるとぽるくす(双子の格闘兄弟)、あと、なんかやたら弓がうまい人とか。
そしてぼくは――筋肉担当。
荷物運び、帆の上げ下げ、船の修理、怪物との戦闘、全部ぼく。
筋トレのつもりでやってたけど、途中から気づいた。
「これ、筋トレじゃなくて労働じゃん!」
でも、仲間たちとの日々は楽しかった。
夜は焚き火を囲んで、冒険の話をしたり、星を見上げたり。
いあそんは、いつも前を向いていて、みんなを引っ張っていた。
ついに目的地、コルキスに到着。
そこには、黄金の羊毛と、それを守る巨大なドラゴンがいた。
「へらくれす、時間稼ぎ頼む!」
「またそれ!? ぼく、いつも時間稼ぎ担当じゃないですか!」
でも、やるしかない。
ぼくはドラゴンの前に立ちふさがり、全力で叫んだ。
「おーい! こっちだよ! こっちの筋肉見てー!」
ドラゴンがこっちを向いた瞬間、いあそんが羊毛をゲット!
作戦成功!
帰りの船の上。
いあそんが、ぼくの隣に座って言った。
「お前がいてくれて、本当によかった」
その一言で、全部報われた気がした。
筋肉痛も、ドラゴンの火傷も、全部。
「……まあ、筋肉は裏切らないんで」
そう言って笑ったぼくに、いあそんも笑い返した。