お姫様の答えと、ふたりの新しい旅路
「……ほんと、無茶するんだから」
戦いのあと、でいあねいらはぼくの腕に包帯を巻いてくれていた。
その手は小さくて、でもすごく丁寧で、優しくて――
ちょっとだけ、頬を赤らめながら。
「痛くない?」
「うん、大丈夫。でいあねいらの手、あったかいから」
「……ばか。そういうこと、さらっと言わないでよ」
ぷいっと顔をそらしながらも、彼女の手はぼくの腕にそっと添えられたままだった。
そのぬくもりが、なんだか心まで包んでくれる気がした。
「でも……嬉しかった。私の気持ちを、ちゃんと聞いてくれたこと。
誰かに決められるんじゃなくて、自分で選びたかったの。あなたを」
「でいあねいら……」
「だから……」
彼女は、そっとぼくの手を握った。
その指先は少し震えていたけど、ぎゅっと強く、離さないように。
「私も、あなたが好き。だから――よろしくね、へらくれす」
その瞬間、ぼくの心は空を飛んだ。
神様の息子とか、英雄とか、そんなの関係ない。
ただ、彼女の隣にいたいって、それだけだった。
「……これから、ずっと一緒にいてくれる?」
「もちろん。どんなことがあっても、ぼくが守るよ。でいあねいらのこと」
「……ふふっ、ほんとに変な人。でも……」
彼女は、ぼくの胸にそっと額を預けて、
まるで安心するように、静かに目を閉じた。
「……あなたの腕の中、すごく落ち着く。なんか、ずっとこうしてたいかも」
「じゃあ、ずっとこうしてよう。ぼくも、離したくないから」
「……うん。わたしも」
そのまま、ふたりはしばらく何も言わずに寄り添っていた。
風がそよぎ、木漏れ日が揺れて、世界がふたりだけになったみたいだった。
そして――
「へらくれす」
「うん?」
「……好き。すごく、すごく好き」
その言葉は、ぼくの胸の奥に、まっすぐ届いた。
こんなにも誰かを大切に思えるなんて、知らなかった。
「ぼくも。でいあねいらが、世界でいちばん好きだよ」
ふたりの旅は、ここから始まる。
神々の都合も、運命のいたずらも、全部乗り越えて――
この手を、絶対に離さない。




