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第5話 「魔法少女の特訓と真実」

 魔法少女生活三日目。昨日、服その他日用品を一通り買い揃えた俺は改めて魔法少女の力の練習をする――はずだった。


「バフォ、今日もか」


『ああ。今日も日の出過ぎまで起きていたな』


「そこはちゃんと止めてくれよ」


 俺は今日も魔法少女集を見ながら寝落ちしたセリナを見てため息をついた。


『ついつい熱が入ってしまってな』


 一方、バフォにも反省の色は見えなかった。


「……まあ、今日一日あるからいいだろう。――変身」


 セリナは起こすのも放置していくのも面倒くさくなりそうだったので、俺は昨日と同じく彼女が起きるまで待つことにした。そういう訳で俺は魔法少女に変身し、セリナをベッドまで運んだ。



◇◇◇◇



「この辺りでいいか」


「そうだね。ここなら多少派手にやっても大丈夫だろうし」


 昼下がり、俺たちは街から少し離れた場所にある岩場へやって来た。この辺りは動植物もおらず、貴重な好物資源があるわけでもないので多少暴れても問題はない。


「……よし――変身!」


 俺は深呼吸し、魔法少女姿に変身する。そして変身した俺は改めて自分の魔法少女姿をチラチラと確認した。


「……どうしたの?」


「いやあ、変身自体はもう結構してるんだけど未だにこの格好には慣れなくてさ」


 セリナをベッドに担いだり、ちょくちょく変身はしているがそれでもフリルがたくさんついた魔法少女衣装を着るのには未だに慣れなかった。


『まあ、すぐに慣れられては面白くないからな』


「……ははは、こいつめ」


 この数日で息が合うこともあったがバフォが本質的には分かり合えない存在だということをしっかりと覚えておこうと俺は思った。


「……で、魔法少女の力っていうのはどうやって使えばいいんだ?」


 軽くストレッチを終えた俺は、改めてバフォに魔法少女の力について尋ねた。


「基本的にしたいことを強く心に念じればいい。お前がセリナを助けた時もそうだっただろう?」


「……確かにあの時の力は凄かったな」


 バフォに言われて俺はセリナを助けるために謎の怪物を倒した時のことを思い浮かべた。その後も魔法少女になっている間は湧き上がる力はあるものの、あの時ほどの力は感じなかった。


『何もしなくても一定以上の強さはある。だが、強く心にこめるほど強くなるし、魔法少女集で見た通り武器やビームを出すこともできる』


「ふむ」


「えっ、そうなの。ねえ、リオン。ビーム出して、出して~」


 バフォの話を聞いたセリナは目を輝かせながら俺にビームを出すよう催促する。


「お前も魔法で出せるだろ」


「分かってないなあ。確かに出せるけどそれがどう違うのかそれが気になるんじゃない」


 俺の反論にセリナは得意げに、魔法少女ビームと普通の魔法は違うと語る。正直、興味がないので流しておく。


「まあ、せっかくだからやってみるか」


 とはいえ俺も派手なビームに興味がないわけではないので一度やってみることにした。


「……ビーム!」


 俺は試しに手のひらを前に突き出してそこからビームが出るよう念じた。だが、そこから発射されたのは拳より少し大きい程度の塊で、それは岩に当たると霧散してしまった。


「……ビーム?」


「いや、違うでしょあれは」


 ビームもどきはセリナからもビームとは認定されなかった。自分としても無理があるとは思っていた。


『想像力が足りんな。もっと魔法少女集であったようにイメージしろ』


「……イメージか」


「いっそ誰か一人を真似してみたらいいんじゃないかな?」


「なるほど」


 セリナの言葉に俺は魔法少女集で見た一人の魔法少女、シャイニーブルーという必殺技ブルーインパルスを思い浮かべた。そしてその発射シーンを思い出しながらそのポーズを取る。


「ブルーインパルス!」


 突き出した手の平から魔法少女集で見たものと同じ青い閃光が発射され、前方の岩を薙ぎ払い、地面にはその軌跡がしっかりと刻まれた。


『やるではないか』


「今のシャイニーブルーのブルーインパルスだよね。いいなあ。私もやってみたいなあ」


 俺のブルーインパルスはなかなか好評だった。個人的にも結構うまくできたと思う。


「意外と楽勝……っと」


 思ったよりうまくいったことに喜ぶ俺だったが急に体の力が抜け、あやうく倒れそうになる。


「リオン、大丈夫?」


「ああ、思ったよりも疲れるみたいだ」


「そっか。あんまり乱発は出来ないかもね」


『まあ、何度かやれば慣れるだろう』


 強力で派手なビームは多用してみたかったが、使いどころには気をつける必要がありそうだった。


『それと他のパクリではなくオリジナル技にしたいところだな』


「まあ、確かに」


 せっかくならオリジナル技にしたいのは同感だったので俺はバフォの言葉に同意した。


「それだったら技名もだけど魔法少女としての名前も考えないとね。魔法少女リオンだけじゃ味気ないし」


「いや、ちょっと待てよ」


 セリナの意見も分からなくはなかったが名前まで変えるのはまだ抵抗があった。


『その辺りはまた追々だな。とりあえず次は武器でも出したらどうだ? お前も素手では戦いづらいだろう?』


「……確かにそうだな。武器も念じたら出せるのか?」


 魔法少女になってから、攻撃のリーチが気になっていた俺はバフォの案に乗ることにした。


『ああ、どういう形でどういう性能かを念じれば武器も生成されるはずだ。なんでも切れる剣などを出そうとすれば負担は大きくなるからほどほどにした方がいいと思うがな』


「分かった」


 バフォの話を聞いた俺は目を瞑り、生成したい武器を頭に思い浮かべる。すると数秒後、それが俺の手のひらに収まった。


「それっていつもの剣?」


「ああ、思い浮かべるのもこれが一番楽だったからな」


 俺が生成した剣は俺が魔法少女になるまで使っていた長剣だ。本来は盾と併用して扱う片手剣だが魔法少女の俺にとっては両手持ちするのにちょうどいいサイズだった。


「……流石に勝手は違うけど悪くない」


 早速、剣を振ってみる。体格が変わっているので違和感はある。それでも元になった剣は二年は愛用していたものなので手にはしっくりきた。


「でもせっかくだから他にも色々出してみようよ」


「それ、お前が魔法少女の力を色々見たいだけだろ?」


「あははは……」


 図星をつかれたセリナは俺から目を逸らした。


「まあせっかくだしやってみるよ」


 とはいえせっかくなので俺は武器に限らず色々なものを生成してみた。だが、イメージ不足からか愛剣ほどしっかりとした形に生成することは出来なかった。



◇◇◇◇



「……ふぅ、もう日が沈むな」


 武器の生成やビーム、純粋な身体能力の練習をしていると夕暮れになっていた。もっとも一番大きかったのはセリナの寝坊のせいだが。


「今日はこれぐらいにしておくか」


「そうだね」


「後は本番で……」


 そしてそろそろ帰ろうかとしたその時、急に周囲の空気が重くなる。その感覚に俺たちは覚えがあった。


「……やっぱりこいつらか」


「……多い、多くない?」


 予想通り、地面から黒い泥から湧きだしそれは人型を取る。その姿は以前よりも小さかったがその代わりに八体の泥の怪物が目の前に現れた。


「……セリナ、下がっていろ」


「う、うん」


 俺はセリナに後ろに下がるよう指示すると剣を生成し、構える。何度も練習したおかげで剣の生成は一瞬で出来るようになっていた。


「くらえっ!」


 生成完了と共に駆け出した俺は一番手前の怪物に切りかかる。一閃、怪物の体は上と下に両断された。


「……いける」


 確かな手ごたえを感じた俺は残った怪物たちにも切りかかる。力はあるものの動きは緩慢な怪物たちは俺の練習相手としてちょうどいい相手だった。


「……」


 そして俺は戦いながらバフォの姿を探す。するとバフォは後ろに下がるよう伝えたセリナと共にかなり近いところで俺と怪物との戦いを観戦していた。


「やったね、リオン」


『悪くない動きだったぞ』


 その後、あっさり怪物たちを全滅させた俺にセリナとバフォが駆け寄ってくる。怪物とかなり近い位置にいた二人だったが最後まで二人が怪物に襲われることはなかった。


 そしてそれは怪物の襲撃のタイミングが良すぎたことと併せて俺の疑惑を確信へと変えた。


「お前たち、すっとぼけるのもいい加減にしろよ」


「……何のことかな?」


 問いただす俺にセリナは視線を泳がせる。五分五分だったがこっちも黒だったらしい。


「怪物の登場のタイミングが良すぎる。バフォ、お前の仕込みだろ」


『ウム、その通りだ』


「……流石に気づくよね」


 そのまま二人を問いただすと最初の怪物からバフォの仕込みだったこと、セリナは初日の時点でそのことに気づいていたが魔法少女への興味を優先し俺には伝えなかったことを白状した。


「下手に揉めるよりうまく進めた方がいいかなって」


「お前の場合は魔法少女の知識が欲しかっただけだろ」


「……うん」


 セリナは俺から目を逸らしながら小さく頷いた。


『強くなったのだから問題はなかろう』


「それとこれとは話が別だろうが!!」


 ここ数日、ストレスを貯め込んでいた俺の説教は日が沈むまで続いた。

次回『魔法少女と討伐依頼』

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