第1章:世界構造の基本モデルを比較する
人類は、太古の昔から「この世界はどう成り立っているのか?」という問いを繰り返してきた。
これは単なる知的好奇心ではなく、「自分がどこに存在し、どこへ向かうべきか」を知るための根源的欲求である。
そしてその問いに対する答えとして、歴史上さまざまな**“世界構造モデル”**が提案されてきた。
本章では、その代表的なモデルをいくつか取り上げ、それぞれの前提・長所・限界を比較しながら、なぜ「無限螺旋構造」という新しい視点が必要なのかを導き出す。
1. 宗教的モデル ― 世界は神の意志である
宗教的世界観は、最も古く、最も広く人類に共有されてきたモデルである。
例えばキリスト教では、世界は神によって創造され、人間はその秩序の中に生きている。
仏教では、因果の法則に基づく輪廻があり、魂は生と死を超えて循環する。
これらのモデルの共通点は、世界に目的や意味が存在するという前提であり、人間は「与えられた構造の中で生き方を選ぶ存在」として定義される点にある。
長所としては、「倫理的安定性」や「心の拠り所」を提供するが、限界としては、検証性が乏しく、変化や矛盾を柔軟に説明しにくいことが挙げられる。
2. 科学的モデル ― 世界は物理法則に従うシステムである
17世紀以降、科学革命によって主流となったのが、「世界は物理法則によって成り立っている」というモデルである。
ニュートン力学、相対性理論、量子力学、進化論──
これらは世界を因果関係と数式で記述し、人間の観測によって世界の“仕組み”を明らかにしてきた。
このモデルの長所は、再現性と説明力の高さである。
しかし限界もある。
意識や主観、価値判断といった「非物質的な要素」が扱いづらい
世界を“静的”に見る傾向があり、自己参照的な変化や複雑系に弱い
つまり、「どう成り立っているか」は解明できても、「なぜそうなっているか」や「何を意味するか」は語りづらい。
3. 仮想・情報的モデル ― 世界はデータでできている
近年注目されているのが、「この世界は情報で構成されている」という仮想モデルである。
これは、デジタル物理学やシミュレーション仮説といった理論とも関係が深く、宇宙そのものを“コンピューター的な構造”として捉える視点である。
このモデルの利点は、物質・意識・記憶などの統合的理解が可能になることにある。
また、観測と現実の関係性、再帰性、多層構造の仮定なども自然に扱える。
一方で、「誰が」「なぜ」「どうやって」このシステムを構築しているのかという問いに対し、仮定が多く、実証が難しいという限界も存在する。
4. 螺旋構造モデル ― 世界は循環しながら変化する
本書が提唱する「無限螺旋構造モデル」は、前述のモデルすべてと部分的に重なりながら、それらの**分断を統合する“動的な枠組み”**である。
宗教的な円環性(輪廻)
科学的な因果と変化
情報的な多層構造と観測の影響
これらを一つの「構造」として捉え直し、
“繰り返しながら成長する”“階層的に展開される”という螺旋構造に置き換えることで、より柔軟に、より統合的に世界を解釈することが可能となる。
5. なぜ今、「構造の再定義」が必要なのか
複雑化した社会では、単一のモデルで全てを説明することはもはや不可能である。
科学と宗教、感情と論理、仮想と現実──
その境界を越えた“思考の構造”が求められている。
螺旋構造という視点は、「矛盾の中に意味を見出す」ことができる。
過去を否定するのではなく、繰り返す中で高次へと昇華させていく。
それは、進化し続ける世界の“かたち”そのものなのである。
この章を終えた読者は、従来の世界構造モデルの特徴と限界を認識し、次章から展開される「無限螺旋構造」の理論を、より深く受け入れる準備が整う。