表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法使いに育てられた少女、男装して第一皇子専属魔法使いとなる。  作者: 山法師


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/19

11 後見人

『じゃあ、これも伝えておこう。君を選んだ最大の理由は、私の護衛として側についていて欲しいからだよ』

『へえ』


 二週間前のアフタヌーンティーの場にて、そう言われたアルニカは気のない返事を返した。


『アル』


 コルネリウスの少し咎めるような声に、アルニカは肩を竦めて両手を上げる。


『はい。気を抜きすぎました。で、その内容は? 殿下』

『私を殺すことを目的として、その仮面舞踏会が襲撃されるという情報を得ていてね。いつもならそのままにしておくんだけれど、今回は少し、規模が大きいらしいから』

『周りの被害を抑えろって?』

『うん、その通り』


 フィリベルトはにこやかに、


『私を守るだとか、襲撃者を捕らえるだとか言わないところが、とても好ましいよ』

『まあ、でも、俺流にやるよ?』


 頭の後ろで手を組んだアルニカに、フィリベルトは笑みを深める。


『どうやるかは教えてくれないのかな』

『……ま、いいか。殿下たちなら平気な顔で隠し通せるだろ。で、会場の見取り図とか諸々は?』

『君は本当に話が早くて助かる。ネリ』

『はい』


 コルネリウスは警護の態勢を解くと、上着の内側から紙を数枚取り出し、テーブルに置いた。


『これが今回仮面舞踏会に使われる会場の案内図、これがその設計図、これは今分かる範囲での参加者のリストと、私への襲撃を目論んでいるだろう者の候補者リスト。そして想定出来る襲撃者の人数と襲撃パターン』


 フィリベルトはそれぞれを示しながら簡潔に説明し、『何か思うところはあるかな』と、アルニカに微笑んだ。


『これだけ揃ってりゃ、俺はいらないんじゃないですかね』


 紙をそれぞれ手に取り眺めながら、アルニカは呆れた声を出す。


『いつもならね。ただ、今回はいつもとは違う』

『へえ。……黒幕と想定してる人達に、殿下を皇にと持ち上げているはずの人が結構いるから?』


 アルニカの言葉に、フィリベルトは目を細めた。


『……君の意見、詳しく聞こうか』

『あ? 単純な話だろ。第一皇子を傷付けた、もしくは殺した罪を第二皇子側に擦り付けるか。もしくは』


 アルニカは、パサリと紙をテーブルに置き、


『純粋に殿下を退かせたい。そして、何もできなくなった殿下の後見人に媚を売って、甘い汁を吸いたい』

『私の後見人になるだろう人物が、誰だか分かって言ってる?』

『ヨアヒム・バルシュミーデ。殿下のお母さんの父親で、エーレンフリート皇の叔父さんで、今この国で一番力のある公爵サマ』


 言い終え、アルニカはクッキーを手に取り、サクリと一口齧った。

 それを見ていたフィリベルトは、ふぅ、と息を吐くと、


『じゃあ、君は自分がどう動くべきか、三日以内に考えを纏めて教えてくれ』

『もう考えたけど、聞く?』

『それが稚拙な思いつきなら、君の給料を減らすよ?』

『うぇぇ、横暴。まあ、聞いてみなよ、殿下が思うほど稚拙でもないと思うぜ?』


 ◆


「あー……第二の任務完了ぅ……」


 帰り道を行く馬車の中、アルニカは『アル』の姿で、室内に取り付けてある転倒防止の取っ手を握り、壁にもたれかかっていた。


「お疲れ様。君でも、あれほどの魔法を使えば疲れるんだね」

「いんや? これはダンスの疲労」


 それを聞いて苦笑するフィリベルトも、その隣に座るコルネリウスも仮面を取っており、馬車の中にはその三人しかいない。

 仮面舞踏会で騒ぎが起こった後、どうなったかというと。

 展開された古代魔法文字の魔法陣で作られた魔法は、アルニカが作動させたもの。そしてそれは、魔法陣で囲われた生物を眠らせ、無生物の機能を停止させる、大規模な強制睡眠の魔法。そうしてそれはとても正確に、ホールの中だけに作用した。舞踏会の参加者も、ホールスタッフも兵士も天井に張り付いていた襲撃者も、アルニカを除いた全ての人が深い眠りにつく。そこに、外からの救援。アルニカは、眠ったふりをしたまま状況を把握する。救護が呼ばれ、人々が運ばれ、曲者に気付いた兵士や会場の管理者たちが曲者どもを縛り上げていく。

 そして、ここからが重要だ。

 ここは仮面舞踏会の会場。招かれた者は皆、身分や名前を偽ってここに来ている。襲撃者はともかく、彼らはこの状況の事情聴取に応じない。応じられない。主催者側も、無理に籔を突いて蛇に襲われたくはない。要するに、問題が起きても大事にできない。

 頃合いを見計らって強制睡眠の魔法を解いたアルニカは、怪我の有無だけ確認され、フィリベルトと合流し、お開きとなった会場をあとにした。


「な? 一番簡単で被害も少なかっただろ?」


 帰り道を行く馬車の中で、だらりと壁にもたれかかったままアルニカが言う。


「そうだね。大きな怪我をした者もいなく、ホール内にいた襲撃者を全員捕らえることにも成功した。けど」


 フィリベルトは足を組み、アルニカへと笑顔を向ける。


「逃げてしまった外の襲撃者は、どうするつもりかな」

「またまたぁ。分かってるくせに」


 アルニカはハンッと鼻で笑う。そしてすぐ、真面目な顔つきになった。


「あいつらは予備で、第二陣だ。何も成果を挙げられなかったあいつらは、この馬車を襲撃する」


 無言で続きを促すフィリベルトに、アルニカは珍しく、分かりやすいほどの苦い顔になる。


「……んで、そこで殿下は、襲撃者を退けながらも、適度に傷を負いたい。全治一ヶ月くらいか?」

「そうだね。そのくらいの期間は欲しいかな」

「ま、俺は雇われなんで。指示されたことはしますけど」


 アルニカは腕と足を組み、


「ルター兄ちゃんは?」

「? 僕が何か」

「ルター兄ちゃんの意見は? 殿下が怪我して良いって?」


 その言葉に、コルネリウスは僅かに目線を下げ、けれどすぐに戻し、アルニカと視線を合わせた。


「それが殿下の望みならば」

「……。あっそう」


 そして、馬車は夜道を進む。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ