拝啓神様、好きな人にフラれました。
俺の名前は後山嵐、高校生だ。今俺は好きな子に告白しようとしている。
相手は幼馴染みの京外大福、とっても可愛い。おとなしい性格だけど優しくてそんな彼女を俺は好きになってしまったのだ。
今は校舎裏で大福を待っている。ああ…すごい緊張してきた…もう10年は片想いしている。まあ、片想いじゃないことを祈ってるんだけどな~。
と自嘲気味にそんなことを考えていると大福が来た。
「ごめん、ちょっと遅くなっちゃった。」
「いいよ気にしなくて。」
「それで…話って?」
とそんなことを聞いてくる大福。ふぅ、と一呼吸し俺は覚悟を決める。
「大福、俺は小さい頃からずっとお前のことが好きだったんだ。俺と…付き合ってください…」
言った…ついに言ってしまった…大福はどんな顔してるかな?と彼女の顔を見ると俺は絶句してしまう…
なぜなら大福の目から涙が溢れていたからだ…
「実は……私m」
「いや!もういいんだ…分かってるから…」
「ほ、本当?」
思わず遮ってしまった。フラれると分かっていても本人の口から直接聞くのは俺には出来なかった。
「えっと…その…これからは……」
言わなくては…気持ち悪がられていても今までありがとうと、これからは関わらないようにするからと…
「………………ごめん!やっぱ無理ー!!」
俺はフラれたショックのあまり何も話せず大福をおいて校舎裏から逃げ出してしまった。
家に帰ってきた俺はすぐさま自室に行き、ベッドで泣きじゃくりそのまま寝てしまうのだった。
不幸なことに、朝というのは生き物に平等に訪れるわけで、
「学校…行きたくねぇ…」
目覚めた一言目はそれだった。それでも、学校には行かなければならない。憂鬱だ…
「いってきます…」
準備を終え、学校へ向かう。いつもなら大福と行くのだが、今日は大福と出会わないように早めに家を出た。
学校に着いた俺は教室で独り、机に顔を突っ伏する。
大福とクラスが違うというのが不幸中の幸い、唯一の救いだ。
「はぁ~…」
と俺が大きな溜め息を吐いていると後ろから声をかけられる。
「よ!」
顔を上げ、振り向くとそこにいたのは高校に入ってから出来た親友、無駄に顔が良い橋本 遥斗だった。
「遥斗か…今日は早いな。」
「ちょっと心配だったからな。」
「心配…?」
「お前昨日、京外に告白しただろ?それなのにメッセージの一つも送ってこないからな。」
「……………」
「まぁなんだ、これでも飲んで元気だせよ!」
そう言って遥斗はジュースを一本、俺にさしだしてくる。
「くっ…イケメンめ…」
そんなこと言いながらもジュースは受け取る。
「しっかし…まさかフラれるとはな…てっきり京外は嵐のこと好きかと思ってたのに。」
「ふっ…お前もまだまだ女心が分かってないな…俺が告白したら大福の奴泣き出したぞ…」
「マジかよ…」
「ああ…まさか、そこまで嫌われてたとはな…いや嫌われてるというより、気持ち悪がられてるって、感じか…ハハハ…」
「おい、大丈夫か…」
「だいじょばねぇよ…」
「でも正直、友達のままって言われるよりそれくら嫌われてる方が楽なんじゃねぇか?」
「そうかな…そうかも…そう思うことにしよう…」
遥斗に愚痴って少しは気持ちが軽くなったかもしれない。
昼休みになった。さて今日は久しぶりに遥斗と昼飯食べるか。ここ最近、大福とばっかり食べてたからな。
「遥斗~、一緒に食べようぜー。」
「おう!なんか久しぶりだな。」
「だな。どうする?」
「やっぱ屋上だろ。」
そんなこんなで俺たちは屋上で弁当を食べている。
「お前これからどうするんだ?」
「なんだよ急に?」
「京外とのことだよ。」
「ああ…」
弁当を食べていると突然そんなことを聞いてくる。大福……どうするかな……遥斗に言われ改めて考えてみる。
「俺は今でも大福のことが好きだ…」
「だろうな。」
「そんでもって好きな人には幸せになってもらいたいんだよ。だからなるべく関わらないようにするよ。」
「お前はいいのかそれで?」
「いいんだよ。嫌いなやつが近くにいたら嫌だろ?大福の幸せに俺は要らなかったってことだよ…」
「女なんて星の数ほどいるんだし、切り替えてこーぜ。合コンとかセッティングしてやろうか?」
「今はいいけど、そのうち頼むわ…」
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私、京外 大福には好きな人がいる。幼馴染みの後山 嵐だ。小さい頃から一緒にいて、気付いたら好きなっていた。
今日は嵐に校舎裏に呼び出されている。なんだろう?もしかして告白だったり…///
やめよう、嵐に女の子として見られてないことは分かりきっているのだから。
「俺と…付き合ってください…」
校舎裏に行くと嵐から告白された。
嘘…//告白されちゃった…//駄目だ…嬉しすぎて涙が勝手に溢れてきちゃう…返事しなきゃだよね。
「実は…私も」
そこまで言って嵐に遮られてしまった。
「もういいんだ…分かってるから…」
「ほ、本当?」
もしかして私って分かりやすかったのかな?なんか恥ずかしいな///
「えっと…その…これからは…」
恋人ってことだよね?やっぱり恥ずかしい///
「ごめん!やっぱ無理ーー!」
急に嵐は走り去ってしまった。
嵐も恥ずかしかったのかな?こ、恋人だもんね今日から…ずっと好きだった人と…………
「……/////」
家に帰ってきた私はすぐさまベッドに横になって枕に顔をうずめ足をバタバタさせる。
今まで溜めていたものが無くなり安心したのか、私はそのまま寝てしまった。
朝になった。とても気分が良い。
「はやく嵐に会いたいな~。」
起床して始めに出てきた言葉がそれだった。手を繋いだり、キ、キスしたりだって出来る。楽しみだな///
準備を終え、嵐の家の呼び鈴を鳴らす。いつも一緒に行ってたけど今日は手を繋いで学校に行きたいな、なんて考えていると扉が開く。
「あら大福ちゃん、おはよう。」
「おはようございます。」
家から出てきたのは嵐のお母さんだった。
「あの、嵐は?」
「嵐?嵐ならもう学校に行っちゃったわよ。」
「そ、そうですか。」
な、なんで~?今日に限って先に行っちゃうなんて…
私は残念に思いながら高校へ向かうのだった。
学校に着いた私は、友達に抱きつく。
高校に入ってから出来た親友で面倒見がいい大東兎衣だ。
「兎衣ちゃ~ん!」
「大福~、告白されて付き合ったんだって?」
「そうなの!でも、朝家に行ったら先に学校行ってたんだよ…」
「後山くんも恥ずかしかったんじゃない?」
「そうなのかな?」
「そうだって。」
「よし!昼休みにお弁当一緒に食べる時にでも聞いてみるよ。」
そんな話をしているとチャイムがなる。
嵐とクラスが違うのが辛い。
昼休みになった。私は早速嵐のクラスへ向かう。いつも一緒に食べてたけど、今日はあ~んとかやっちゃおうかな。
嵐のクラスに着いたので中を覗いて見るのだが、嵐の姿が見当たらない。
「京外さん?」
私がクラスを覗いていると男子が声をかけてきた。
「どうしたの?後山?」
「うん、嵐どこかなーって。」
「後山だったら橋本と弁当持ってどっか行ってたぞ。」
「そ、そうなんだ。ありがとう。」
教えてくれた男子にお礼を言い、私は自分のクラスへ戻る。
「あれ?大福?後山くんと弁当食べないの?」
「兎衣ちゃ~ん!」
クラスに戻ってきて早々、教室で下町さんとお弁当を食べていた兎衣ちゃんに抱きついてしまった。
「それで大福ちゃん、どしたん?話聞こか?」
「やめなさい。それで本当にどうしたの大福?」
私もお弁当を広げ、下町さんにも色々説明して話を聞いてもらうことにした。
「さっき、嵐のクラスに行ったんだけどね、嵐が橋本くんとお弁当持ってどっか行っちゃったって。」
「橋本ってあのイケメンだよね?私結構タイプ。」
「あんたは真面目に聞け。でもあの二人、結構仲良いよね。特におかしな点も無いけど?」
「でもいつも私と食べてるから、今日に限って橋本くんと食べなくてもいいのになって思って。」
「たしかに…」
兎衣ちゃんと私で頭を悩ませていると、下町さんが口を開く。
「今日に限ってじゃないよ、大福ちゃん。今日だからだよ。」
「「どういうこと?」」
兎衣ちゃんと私が聞き返す。すると下町さんは得意気な顔をして語りだした、
「男っていうのはね、友情に熱いものなんだよ。多分橋本くんは後山くんの恋路を色々手伝ってあげてたんじゃないかな?」
「なるほど、だから告白が成功した翌日に昼休みという長い時間を使って直接報告しに行ったってことか。」
「察しが早くて助かるよ、兎衣っち。」
「そうだったんだ…その…ありがとね、下町さん。それに兎衣ちゃんも。」
「ふっ笑、後山くんに愛想つかしたらいつでも私の元へ来て良いからね?大福ちゃん。」
「ははは…遠慮しとくよ…」
~一週間後~
「おはよう…って!?大福どうしたの?」
教室に入って私を見るなりそんなことを言ってくる兎衣ちゃん。
「あ…兎衣ちゃん…おはよ…」
私は闇のオーラ全開で挨拶をかえす。
「なになに?後山くんと喧嘩でもした?」
「別に…なにもなかったよ…」
「じゃあどうしたの?」
「なにもなかったんだよ…」
「へ?」
兎衣ちゃんは言っている意味が分からないという様子で聞き返してくる。
「この一週間…なにもなかったんだよ…!一回しか話してないよ…!その一回だって、」
◇✨◇✨◇✨◇✨◇✨◇✨◇✨◇✨◇✨◇✨
最近、嵐と話せてない…そんなことを考えていてボーっとしていた。
廊下の曲がり角、突如目の前に人影が出てくる。
私は反応出来ずにそのままぶつかってしまう。
「ごめん!」
「ごめんなさい!って嵐?」
よく見るとぶつかった相手は嵐だった。
「大福!?わ、悪い…わざとじゃないんだ…それじゃ、俺は急いでるから!」
「待って!」
私の声は届かず嵐は走り去ってしまった。
「嵐…」
◇✨◇✨◇✨◇✨◇✨◇✨◇✨◇✨◇✨◇✨
「ほぼ会話というような会話じゃないし…!私、絶対避けられてるよ…泣」
「話は聞かせてもらったよ…」
声が聞こえた方へと目線を向ける。するとそこには…
「下町さん…!」
教室の入り口で変なポーズをとっている下町さんがいた。
「大福ちゃん、良い話と悪い話がある。どっちを先に聞きたい?」
「どうした?なんかテンションバグってない?」
「えーと…じゃあ、悪い話から…かな?」
「いいだろう。これは先ほど廊下を歩いている時に偶然聞いた話なんだけどね、後山くん、合コンに参加するらしい。」
「そーなんだ、嵐が合コン、へー………………え?」
「え?」
「え?」
「いや、何であんたまで驚いてんのよ。」
「流れ的に?」
「何言ってんの…?」
嵐が、合コン!?なんで?どうして?
あまりに衝撃的な事実で頭が真っ白になった。
「ちょっと大福!大丈夫!?ほら、あれでしょ?ただの人数合わせとかでしょ?」
「私もそうかと思ったんだけど…」
「そうよね!」
「あれは完全に出会いを求めてる奴だね…」
「ちょ、一回黙っといて!」
「あら…あらあら嵐が…ご…ごご合コン…」
「やばい!大福が壊れた!ちょっと下町!良い話は?良い話は何だったの?」
「え?後山くんの浮気を知れて良かったね?」
「どこが良い話なの!?」
「大福ちゃん、大丈夫?」
「大福ー!」
「あら…あらあらあら嵐が………ごごごごご合コn」
~数分後~
「落ち着いた?」
「ちょっとだけ…」
兎衣ちゃんと下町さんになだめられ、落ち着きを取り戻した私は下町さんに問い質す。
「下町さん、それって本当なの?」
「うん、マジの奴だよ。」
マジの奴なんだ……まだ付き合って一ヶ月も経ってないんだけどな~…
「ちょっと私、後山くんのところ行ってくるわ!」
「ストップ兎衣っち!」
ダンッ!と勢いよく立ち上がり教室を出ようとする兎衣ちゃんを下町さんが止める。
「なんだよ下町!私は…!」
「まあまあ、落ち着いてよ兎衣っち。」
「落ち着いていられないでしょ!」
「大福ちゃん、後山くんはそんな薄情な奴だったの?」
「ち…違う。」
「でも…あんたがさっきマジの奴って…」
「うーん…何か事情があると思うんだよねー。とりあえず後山くんの話聞いてみるしかないね。」
「でも…私がいっても避けられちゃうだけなんじゃ…?」
「まあ、任せてよ。私にいい考えがあるから。」
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大福にフラれて一週間が経過した。正確には一週間と一日なんだけどな。
ちょくちょく大福が俺のところに来ているが、それは大福が優しいから嫌いな俺とも話そうとしてくれているだけだろう。
今日は遥斗と合コンに行く予定だったので、待ち合わせ場所に向かっている。
「悪い、少し遅れ……た…!?」
待ち合わせ場所に着いた俺は目を見開く。
だってそこには俺の幼馴染み、京外 大福がいたから。やっぱり可愛い…じゃなくて、
「おい!なんで大福がいるんだよ!他校の子じゃなかったのか?」
他の人には聞こえない声量で遥斗に話し掛ける。
「俺にもさっぱり分かんねーよ!」
遥斗は本当に分からない様子でだった。嘘はついていないらしい。
あとさっきから大福に滅茶苦茶睨まれていて気まずい。
「むぅ………」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「いい考え?」
「そう、隣町の高校の子と合コンするらしいんだけど、ちょうど合コンに参加するって言ってた友達がいるんだよね。」
「それで?」
「その子には悪いけど合コン変わってもらうんだよ。」
「つまり、大福も合コンに行くってこと?」
「そうなるね。」
「えぇ!?」
「それでそのあとは______」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「上手くいくかな?」
「あとは後山くんが逃げられない状況作っちゃえばいいだけだしね。」
「頑張れー大福!」
「うーん…でも、あの感じだと後山くん大福ちゃんのこと…」
「なんか言った?」
「いやなんでも…」
心配になって見に来ていた二人がそんな会話しているなんて大福は知る余地も無かった。
全員揃ったので俺たちはカラオケに行くことになった。のだが…正直…帰りたい…
何が楽しくてフラれた人がいる合コンをやらなくちゃならないんだ…
「なあ、やっぱり帰るか?」
トボトボと皆の少し後ろを歩いていると遥斗が話しかけてきた。
「いや、流石に悪いから…」
「そうか?」
そうこうしているとカラオケに着いた。店員に部屋番号を伝えられ俺たちは向かう。
相変わらず乗り気がしないので皆の少し後ろを歩いてる。
帰りてぇ~…とそんなことを考えていると、いきなり大福が皆に気付かれないようにこっちに近づいてきた。俺は大福に手を掴まれ、そのまま使われてないカラオケの個室に連れ込まれてしまった。
なんだ?どうしたんだ!?急に手を掴まれドキマギしていると大福が口を開いた。
「ど…どうして浮気しようとしたの!?」
「浮気?」
なんのことか分からず俺が固まっていると、
「最近…全然話してくれないし…私のこと避けてるし…どうして?」
そう話す大福は今にも泣きそうな声をしていた。
「私…嵐に何かしちゃった?もう…嫌いになっちゃった?」
「嫌いになるはずないだろ!!」
大福の言葉を聞き、俺は思わず声が大きくなる。
「俺は…ずっと大福が好きだ。でもいつまでも引きずってちゃ駄目だと思って、だから新しい恋をして前を向こうと…」
「言ってる意味がよくわからないよ!せっかく付き合えたのに…どうしてもう新しい恋を探しちゃうの!」
「ん?付き合えた?」
なぜだろう…?何かさっきから微妙に大福と話が噛み合わない。
「付き合えたって、お前は誰の話をしてるんだ?」
「誰って、嵐の話に決まってるでしょ?」
「俺が付き合えた!?誰と!?」
「私に決まってるじゃん…ん?」
どういうことだ?俺はあの時確かにフラれたはず…いや待てよ?よくよく考えたら別に直接フラれるような言葉は言われてないような?
「でも大福あの時泣いてたし、俺はてっきり嫌われてるのかと…」
「私が嵐を嫌うはずないじゃん。私はずっと嵐のことが好きだったもん…//」
顔を赤く染め、照れ臭そうにそんなことを言う大福。
「マジで…?じゃあ、俺たち両想いってこと?」
「というか、嵐は私の気持ち分かってるって言ってたのに。」
「それは…その…はははは…」
大福の言葉に乾いた笑顔を浮かべる。どうやら俺たちには物凄いすれ違いがあったようだ。
「改めて言わせてくれ、大福。俺はお前のことがずっと好きだった。俺と付き合ってください!」
俺がそういうと大福は満面の笑みで答えるのだった。
「私も!嵐のことがずっと好きだったよ!」




