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小鳥遊 蒼③

翌朝。

結局、神谷は一睡もできなかった。

その原因。

それは、一晩中、二人のお姉さんとの思い出が頭に浮かんでいたおかげである。


そのおかげで、今こうして、神谷はーー


「神谷くん。大丈夫?」


学校の保健室で、偶然にも小鳥遊 蒼の介抱を受けていた。


寝不足による、体調不良。

それを理由として。


「す、すみません。先生」


「気にしないで。たまたま、保健の先生が居なかったんだから。仕方ないわ」


ベッドの側。

そこに置かれた丸椅子。

それに腰掛け、小鳥遊は微笑む。


「昨日、夜更かししちゃったの?」


「は、はい」


「ダメだよ、神谷くん。寝不足はとても身体に悪いの。色んなパフォーマンス。それが、低下してしまうから」


優しく、柔らかな声音。

神谷はそれに、頬を赤らめてしまう。


「ご、ごめんなさい。色々、考え事をして」


「考え事? なにか、悩み事とかあったりするの?」


心配そうな、小鳥遊。


「よかったら、先生に話してほしいな」


「そ、その。た、小鳥遊さんのことを考えてたら、その。眠れなくなっちゃって」


「わたしのこと?」


「は、はい。小鳥遊さんの」


瞬間。

神谷の額に、小鳥遊の手のひらが触れる。

そして神谷を覗き込むように、小鳥遊は声を落とす。


「先生のこと。考えてたの?」


「……っ」


「じゃっ、同じだね」


「えっ?」


「わたしも。神谷くんのことを考えてから、ちょっとだけ寝不足なんだ」


互いに赤面し、二人は見つめ合う。


「あれ? 神谷くん。熱があるのかな?」


「お、俺」


ぴとっ


神谷の額。

そこに、ゆっくりと自分の額をあてる小鳥遊。


「た、小鳥遊さん。お、俺。昔の、お姉さんのこと思い出して。ず、ずっと。胸が苦しんです」


「先生もだよ。先生も、苦しいの」


「た、小鳥遊さん」


「神谷くん。今だけ、いいかな? 先生としてじゃなくて……小鳥遊 蒼として。神谷くんの側に居ても」


"「蒼。貴女もそろそろいい歳なんだから、結婚のこと考えなさい」"


小鳥遊の頭の中。

そこに反響する、厳しい母の声。


ぎゅっと。

神谷を抱きしめ、ちいさく震える小鳥遊。

その震え。それに、神谷は感じる。


小鳥遊 蒼。

その一人の女性が抱える、悩み。

それをはっきりと。

そして、神谷もまたゆっくりと小鳥遊を抱きしめたのであった。


〜〜〜


「立木さま。次の出店候補地である地域の有力者様との会食。そのスケジュールに関して」


「〜〜♪」


高級ホテルの一室。

そこで、立木はラフな格好でベッドに寝転び、神谷の連絡先を楽しそうに見つめていた。

側近の声。それを無視して。


「立木さま」


「んー?」


「スケジュールに関して」


「話して。耳は空いてるから」


「かしこまりました」


ぺこりとお辞儀をし、側近は話し始める。


「しばらく日本にご滞在するとのことでしたので……日本。小鳥遊家とのご会食を今週の週末にセッティングいたしました」


「りょーかい」


小鳥遊家について何も知らぬ、立木の同意。

それが軽快に響くのであった。


〜〜〜

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