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立木 麻也②

周囲の視線。

それが一斉に、神谷に注がれる。


だ、誰だあの女の人?

立木 麻也? あんな、活発で明るい女性。

お、俺は知らないぞ。


満面の笑顔。

それを浮かべ、こちらに手を振る女性。

しかしどこか、神谷は懐かしさを感じてしまう。


「ねぇッ、神谷くーん!! これからわたしとお買い物しない!? お姉さんがなーんでも買ってあげるから!!」


響く楽しそうな声。

それを聞きながら、神谷は必死に思い出そうとする。


金髪。明るい。活発。

婚約者。お姉さん。という、ワード。


"「はぁ……かみやきゅんだけだよ。わたしを普通のお姉さんとして見てくれるのは」"


"「どうしたの? おねえさん」"


"「お仕事がうまくいかなくてさー」"


"「おしごと?」"


"「うん。おしごとー」"


どこかの公園のベンチ。

そこで、とある金髪のお姉さんとお話をした記憶。


擦り切れたお姉さんの笑顔とため息。

そんなお姉さんを元気づけようとーー


"「ぼくっ、おおきくなったらおねえさんと結婚するんだ!!」"


"「ん? ふふふ。それって、プロポーズ?」"


"「ぷろぽーず?」"


そして、そっと優しく肩を抱かれ、なでなでと頭を撫でられーー。


うっすらと。

神谷は記憶が蘇ってきてしまう。


も、もしかして、あの時のお姉さん?


「神谷きゅーん」


響く、あの時と同じ呼び方。

呼応し、ざわめく周囲の人々。


「か、神谷きゅん?」


「ね、ねぇ。もしかしてこの人、あのハイスペ美女の彼氏さん?」


「や、やべぇ。めちゃくちゃ羨ましいんだけど」


そんな心の声。

それが聞こえてきそうな雰囲気。


しかし、立木はそんな雰囲気など意に介さない。


ぽっと頬を赤らめ立ち尽くす、神谷。

その神谷に向け、立木は駆け寄っていく。


恋する乙女。

それを思わせる、嬉しそうな笑み。

それをその顔いっぱいにたたえながら。


数秒後。


ぎゅっ


長身の立木に抱きつかれ、胸に顔を埋められ、神谷は更に顔を赤く染めてしまう。


「おおきくなったね、神谷くん」


「……っ」


「わたし一目でわかっちゃったよ。あの頃の面影。ばっちり残ってたから」


緊張で声を発せられない、神谷。


「神谷きゅん。わたし、今ね。CEOやってるの。神谷きゅんも知ってるあのファーストフードの、CEO。今日ね、たまたま。お忍びで日本観光にきちゃったんだ。今日1日だけ、自由にさせて。ってみんなにお願いして」


神谷の耳元。

そこで優しく囁く、立木。

おかげで、神谷は益々緊張してしまう。


「ふふふ。どう? 神谷きゅん。ハンバーガー食べ放題とかいっちゃう? それともぉ……わたしのホテルで、10年分の距離。縮めちゃう?」


「は、ハンバーガー食べ放題で」


必死に答える、神谷。


「りょーかい」


くすりと笑う、立木。


こうして神谷は、二人目のお姉さんと出会ってしまったのであった。

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