表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/11

小鳥遊 蒼②

その日の昼休み。

神谷は一人、屋上の欄干にもたれ、空を見つめながら、小鳥遊 蒼の姿を思い出していた。


美人だったな、小鳥遊さん。

あんな人とほんとに結婚できたらーー


"「神谷くん。ご飯にする? お風呂にする? それともわたしにする?」"


頬を紅潮させ、一人妄想する神谷。


聞けば、小鳥遊さんは某一流大学卒の超高学歴な人らしい。

あらゆる模試で全国一位を叩き出し、いわば天才の部類。


そんな才色兼備な小鳥遊さん。

そのようなお方と、この俺が釣り合うはずなどない。


っと、そこに。


「あーっ、神谷くん。こんなところにいた」


突然、響く声。


「!?」


思わず視線を前に向ける、神谷。


「神谷くんっ。お昼いっしょに食べよ」


花のような笑顔。

それを浮かべ、小鳥遊さんは屋上の扉付近で手を振っている。

そして小走りで神谷に近づき、神谷と同じように欄干に背を預ける小鳥遊さん。


「空。青いね、神谷くん」


「あ、青いですね」


「どう? 神谷くん。わたしのこと、少しは思い出してくれた?」


「は、はい」


緊張して顔さえも見れない、神谷。


「それで、その。結婚の話なんだけど」


「そ、そのお話なんですが」


「やっぱり結婚するには、わたしと神谷くんとの距離をもっと詰めないといけないと思うの。ってなわけでーーちょっとこっち向いて、神谷くん」


「……っ」


促され、神谷は小鳥遊のほうへと顔を向けた。


瞬間。


ちゅっ


神谷の頬。

そこに、小鳥遊は軽く口付けをする。

そして、続けて声を発した。


「これから。距離、縮めていこうね。へへへ。今のキスで、10年間の時間の距離。ちょっとは縮めることができたかな?」


頬を赤め、あの時のように笑う小鳥遊。

その顔。

それに神谷もまた、子どもの頃のように、その顔を真っ赤に染めることしかできないのであった。


〜〜〜


同時刻。


"「ぼくおおきくなったら、お姉さんと結婚する」"


"「えーっ。いいの!? こんなわたしで」"


"「うん!!」"


あの頃の記憶。

それを思い出し、高級車の運転席でハンドルを握り、運転しながら胸をときめかせる一人の女性。


黒のサングラスに、金色の髪。

そして、その身を包むはカジュアルな服装。


窓から差し込む日の光。

それにその身を染め、その女性は呟く。


「わたしの婚約者はあの子だけ。ふふふ」


己の胸中で。

あの頃のときめきを思い出しながら、立木 麻也は楽しそうに呟いたのであった。


〜〜〜

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ