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はじまり

「大きくなったら結婚しよ」


「うんっ。ぼくっ、大きくなったらお姉さんと結婚する!!」


近所のお姉さんとの約束。


「うふふふ。可愛い子ね。ぼく、どう? 大きくなったらお姉さんと結婚しない?」


「うんっ。ぼくっ、お姉さんと結婚する!!」


和服姿の麗しい女性との約束。


「ぼくーっ。もし。ぼく君が大きくなって、お姉さんがまだ一人ぼっちだったらお嫁にもらってね」


「うんっ!! お嫁にもらう!!」


褐色肌の健康そうなお姉さんとの約束。

その他にもたくさんのお姉さんと約束してしまった、幼き日の俺。


あの頃は、純粋だった。

結婚。という言葉の意味。

その意味さえ考えず、出会うお姉さんたちに結婚を約束しまくっていた。


子ども心に、お姉さんたちはみんな女神様みたいだった。

優しくて、温かくて。

みんな、ぼくを可愛がってくれた。


時は流れ、10年。

俺は、16歳になった。


桜舞う、校門前。

そこで、俺こと神谷 慎二は期待に胸を膨らませていた。


麗しいお姉さんたちとの結婚の約束。

それもすっかり薄れ、今日から俺もついに高校生だ。


桜舞う、新生活。


それが、今ーー


「神谷くん。だよね? うんっ、神谷くんだ」


嬉しそうな声。


そして間髪入れず、花のような笑顔が俺の視界に現れる。


「!?」


ふんわりとしたいい匂い。

それが、俺の鼻腔をくすぐる。


「私だよ私。君が6歳の時、結婚の約束した小鳥遊 蒼だよ。あれから随分たったね。すっかり大きくなっちゃって」


な、なんだ、この薄端眼鏡の女の人は。

け、結婚の約束?

そそそ。そんなもの、俺はーー


"「おおきくなったらお姉さんとけっこんする!!」


"「あら、ありがとう。わたしっ、小鳥遊。小鳥遊 蒼っていうんだ。今、16歳。将来の夢は学校の先生になることなんだ」"


"「がんばってねっ、お姉さん!!」"


"「うんっ、ありがとう!!」"


うっすらと蘇る、記憶。

それに、俺は思わず声を漏らしてしまう。


「も、もしかして。あの、小鳥遊さん?」


「あーっ。やっと思い出してくれた?」


「……っ」


「10年間ずっと待ってたんだよっ。か、み、やくん。わたし、この学校の先生なんだ」


ぎゅっと。

あの時のように俺を抱きしめる、小鳥遊さん。


あ、温かい。

これが大人のお姉さんの温かさ。



こうして俺の、波乱の新生活が幕をあけたのであった。


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