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13 最終話

 身も心も結ばれた私たち。


 あの後ヴィンスはお風呂の準備をして、私を横抱きにして浴室へ連れて行ってくれた。


 自分でできるから良いと断ったが「私がしたいんだ」と言われて、優しく丁寧に身体を洗われ、かなり大きめのお風呂でヴィンスに後ろから抱き込まれながら、ゆっくりとお湯に浸かった。

 手首についてしまった手枷の痕をお湯の中で優しく撫ででヴィンスは何度も「ごめん、本当にごめんね」といっぱい謝ってくれた。


 ヴィンスになら拘束されるのも嫌じゃないからそんなに気にしなくても大丈夫だよ。



 その後はヴィンスが手早くシーツを替えてくれて、二人で裸のまま大きなベッドで横になった。


 裸は寒いって言ったんだけど、ヴィンスが「くっつけばあったかいよ」って……。私もヴィンスにくっつきたかったから、恥ずかしかったけど結局裸で寝ることにした。


 体を繋げて以降は優しいばっかりで酷いことは何もなかった。

 勝手に細身だと思っていたヴィンスの身体付きは意外と筋肉質で、とにかく色っぽくて、ヴィンスにメロメロの私はその逞しい身体に撓垂れ掛かるようして横になった。



 そして、もう寝ようとベッドにヴィンスと二人で横たわっているのだけど、いまだに私の太腿にエレクトしたあれが当たっている。


 ……だめだ、やっぱり気になる。


「ヴィンス……あ、あの……その、それ……大丈夫……ですか?」

「ああ、これ? うん、大丈夫だよ。クレアが寝てから、ね? ああ、下着はまた新しいものを用意しておくから」


 え、あ、はい。……下着!? あ、いいです。早く寝ます。

 こうして私はヴィンスに顔を凝視されながら眠りについた。




 翌朝、本当は早い時間にこっそり自室に戻ろうかと思っていた。

 でも結局離れがたくて、朝からヴィンスとイチャイチャしちゃって……。あ、ヤってはいないよ。ヴィンスが身体の負担を心配してくれて、いっぱいキスしたりした。


 そんなことをしてたら結構な時間になっていたみたいで、ヴィンスがちっとも起きてこないことに焦れた侍従長と侍女長が部屋までやってきて、私たちが部屋でイチャイチャしていたことがバレてしまった。


 今回の事態、洗濯に出されたシーツを見れば何があったかは一目瞭然で、あっという間に陛下のお耳に入って、一年後で予定されていた私たちの結婚式は半年前倒しすることになった。


 早く結婚したいし、嬉しいから良いんだけどね!


 でもスケジュールが早まった分、王太子妃教育の方を頑張らないといけない。大丈夫、勉強は嫌いじゃない、私ならできる!



 それからもヴィンスとの仲は良好で、ヴィンスは基本的には前と同じ、優しい王子様でいてくれる。


 ちょっとびっくりしたのは、私についている影さん、あの夜会の翌日ヴィンスに「報告の数が少ない!」ってすごい剣幕で怒られちゃって、ヴィンスもあんなに怒ることがあるんだと思って驚いた。

 ちなみに報告が少ないってのは、アイリーン嬢の私に対する口撃も逐一報告しないといけなかったらしく、これから私に関することは全て報告するようにって言われてた。


 え、私の行動全てヴィンスが把握するってこと?


 なんかストーカ……ううん、それって何があってもすぐにヴィンスが助けてくれるってことだもんね。

 い、良いことだよね。



 さすがに身体を重ねるようなことはアレ以来していないけど、私が少しアーロン様と仲良さげに会話をし過ぎたりすると、ヴィンスは闇堕ち魔王様になって「君はもっと私の愛を思い知った方が良い」なんて言いながら、私にえっちなお仕置きをしてきたりする。


 魔王様なヴィンスでも大好きだから、えっちなお仕置きをされると少し嬉しくなっちゃうのは内緒。

 私の表情がメロメロだから、ヴィンスにはバレてるかもしれないけどね。



     ◇



「クレア、最近前向きになったね」


 姉が結婚式の準備で忙しい中、王宮まで来てくれた。


「そういえばそうかも」


 以前は自分が悪役令嬢であることにあんなに囚われていたけど、今は全然気にしていない。


 縦ロールやめたから私、悪役令嬢じゃなくなったのかも! くらいに前向きに考えている。

 ピンク色の髪を見なくなったというのも大きいかも。



 メッテルーナの聖女は今我が国にいるマーサさん以外にも複数人いるらしいけど、アイリーン嬢のように髪色がピンクゴールドや、ピンクベージュなどのピンク系の女性が多いらしい。

 だけどマーサさんは白髪だから、私の心が荒ぶることはない。


 今まで王宮内で見かけていた、ほんのり赤毛っぽいような女性まで見かけなくなったのは気のせいかな?



 そういえば、結局私が転生したのはなんの作品の悪役令嬢だったんだろう。ヒロインだったはずのアイリーン嬢も、そこについては特に触れてなかったし…………。


 ────まっ、今幸せだからなんでもいっか!



「お姉様、来週の結婚式、お姉様の綺麗なウェディングドレス姿楽しみにしてるね」

「ええ、クレアもとびきり可愛くして参列してね」

「はい!」



     ◇◆◇



 私はディストラー公爵家の侍女。前世の記憶があって、転生したら公爵家の侍女でした。というわけだ。


 私は前世で、異世界モノが大好きだった。小説、漫画、乙女ゲーム、目についたものは全て手にとって楽しんだ。

 せっかく異世界転生したのだから、なんの作品の世界に転生したのかワクワクした。なのに自分の顔も名前も、国の名前も王子の名前もこの公爵家の方々の名前も、どれをとっても全くピンとこない。

 異世界転生した割には何かの作品に転生したというわけではなかったらしい。

 そうなると山も谷もない平凡な毎日。



 私が仕えている公爵家のお嬢様の髪型を縦ロールに仕上げたのは、ほんの出来心だった。


 緩く波打つ見事な金髪に、意志の強そうな紫色の綺麗な瞳。大きな瞳は猫のように少しきつい印象がする。


 イイ! イイ! すごくイイ!

 クレアお嬢様には絶対に縦ロールが似合う!


 とっても素直で優しいクレアお嬢様だから決して悪役令嬢になどなったりはしないのだけど、侍女という立場を使って私の思う似合う髪型にしてしまった。


 クレアお嬢様は成長と共に立派なお胸のナイスバディへと変貌を遂げて、さらに私は欲が出た。


 露出の多い、派手なドレスを着せたい!


 クレアお嬢様には「可愛いです、お似合いです」と心から思っていることを伝えて褒めると、好んでそのドレスを着てくれるようになった。



 そんなお嬢様だったけど、ある日突然縦ロールをやめて、ドレスも淡い色の露出の控えめなドレスを着たがった。


 侍女、残念です……!


 長年、毎日私が縦ロールにし続けた結果、かなり縦ロール癖がついてしまったけど、時間をかければちゃんともともとのゆるふわヘアに戻ったのでホッとした。

 淡い色のドレスを着せれば、それはまあお姫様のようで可愛らしく、これからは毎日お姫様に仕上げて楽しもうと意気込んでいたら、いつの間にかクレアお嬢様は王宮へ行ってしまわれ、公爵家には戻ってこなくなってしまった。



 今日は公爵家のもう一人のお嬢様、マリアンヌお嬢様の結婚式。


 私は早朝から気合十分です!


 マリアンヌお嬢様は聖母のように優しくて妹思いで賢い完璧なお嬢様。

 今日は真っ白のウェディングドレスを着せて、私がまさに聖母様に仕上げて見せましょう。

 侍女の腕が鳴りますね!



     ◇◆◇



 これは、侍女の出来心によって縦ロールにされた少女が前世を思い出し、先入観に囚われて、悪役令嬢であると勘違いし、空回ってしまっただけの話である。

 また、ピンク色の髪として生まれ、これまた前世を思い出したがためにヒロインであると勘違いした少女が空回ってしまっただけの話でもある。

明日、番外編一つ投稿したら完結にさせていただきます。

番外編は(マリアンヌ)視点になります。


お読みいただき、ありがとうございました。

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