湖の生物
「本名を見つける作業が容易ではない気がしますから、そう簡単には消し炭にならないでしょう」
兄貴の言葉に教皇は頷いた。
「洗礼式を済ませた貴族の子どもたちがすり替えられたことについてなら、いま抹消記録と照らし合わせてすり替えられた子の市民カードの行方を追っているところだ。残念ながら年齢が低い子ほど市民登録の記録が抹消されているので、生きのこっていないのだ」
そういえば、ディーの妹はディーと一緒に孤児院に入ったのに幼くして亡くなっていた。
幼児が過酷な環境で生きのこるのは難しいだろうな、と考えていると、ハントが小さく鼻を啜った。
我が子が生きていることに望みをかけてハントが大聖堂島まで探りに来ていたのだとしたら、この現実は辛いだろう。
「生きのこった孤児たちの本物の市民カードを保管している人が黒幕ということでしょうか?」
ウィルの質問に、そうであったらいいが、とまだ全貌を把握していないことを教皇は暴露した。
「教会関係者なら誰でも市民カードを破棄したり登録抹消したりできるのですか?」
「いや、専用の資格があるものしかできない。市民カードの破棄は葬儀の後に担当した司祭がするし、領主が回収した市民カードの破棄も合同葬をしてから司祭が破棄する。五歳児未満の登録抹消も葬儀とあわせて行われるので、葬儀のない登録抹消は通常あり得ないが、私ならできる」
全人類の市民カードをいつでも破棄できる教皇の強大な権力に気付いたぼくたちが、おおお、と一歩下がって崇めるように教皇を見た。
「できるけれどやったことはない。歴代の教皇に言葉を失った混乱期に強行した人物がいた……が、それもあって、教会と貴族との溝を深める結果になったのだろう」
古の教皇が領主や国王などの高位貴族の市民カードの登録を抹消する強権を発動させて権力を誇示したのなら貴族たちには太刀打ちできなかっただろう。
「聞けば聞くほど司祭の仕事は生死にかかわる大切な仕事をしているのに、貴族社会から軽視されているのは、絶対的な力を教会が持っていることを認めたくないからでしょうか?」
ぼくの質問に教皇は笑った。
「その視点で考えても見なかったな。人間は地位が上がれば贅沢な暮らしをするから、清貧な教会暮らしは侮られがちなのだよ」
教皇の説明にぼくたちも頷いた。
「ガンガイル王国も北の端に位置する国というだけで、ガンガイル王国の発展を知らない帝国の貴族たちに侮られていました」
ウィルの言葉に処分保留の職員は恥ずかしそうに俯いた。
「いやはや、教会内でもそうだったようだ。今回は湖の探索に大聖堂島に来たというのに、またしても世話になってしまった。ありがとう。亡くなった孤児たちも含めて身元調査を継続するよ」
ちょっと密室で愚痴を聞いてもらうだけのつもりだったのに、と教皇は苦笑したが、この流れは月白さんに発破を掛けたかった従者ワイルドの目論見もあったような気がする。
「ガンガイル王国に一時保護されている孤児たちを第五皇子は全員養子にする方向で動いています。帝都で私邸の改装を検討してるようです」
教皇はハントの説明に、第五皇子殿下なら任せて大丈夫だな、と呟いた。
……帝都の教会の抹消登録の名簿に〇〇〇という名の綴りに一文字間違いがありましたよ。
月白さんがハントの耳元で囁くと、俯いたハントの口角がグッと上がった。
この人は諦めていないようだ。
処分保留の職員は現在、自分が名のっている名前が、従者ワイルドによって選別された名簿の死亡者側にあったのを目に止めて、選別の条件を教えていないのに名簿の厚さの違いから本人が生存していないことを察したのか崩れ落ちるように床に膝をついた。
どうした?と教皇が声を掛けると、生きている人を探さないと心が折れそうです、と処分保留の職員はか細い声で言った。
「こっちの名簿から調査したらいい」
月白さんは崩れ落ちた職員に手を差し伸べて立たせると薄い名簿を手渡すと、振り返ってハントの肩をそっと叩いて、この中にはいない、と囁いた。
月白さんの言葉に一瞬眉を顰めたハントは、生存者リストらしき物に我が子の名がないと気付いただろうに、フフっと笑うと、湖の底を攫いに行こう!と軽い口調で言った。
現皇帝の孫のハントの子どもは幼少期から魔力量が多いだろうから、幼くして邪神の欠片の魔術具の実験に利用されていたなら、上級精霊にもその行方が追えない。
湖の底の調査には漁船を手配したのかい?と教皇もハントの話題に興味を示したので、簡易の船を作ります、と答えた。
ぼくたちは、容疑者たち、いや、ある意味被害者たちの市民カードの保管室を出た。
「スライムが船になるのか!」
教皇たちと別れた後、教会都市との連絡船の船着き場に来たぼくたちは、ぼくのスライムが船に変身しただけでハントは大騒ぎした。
ぼくのイメージした船が高速艇だったので、連絡船の船着き場で物凄く目立ってしまった。
「魔術具として制作する前にスライムとイメージを共有することで試作品に変身して試験運行ができるのですよ」
乗り心地が良ければ魔術具として作る、とぼくが言うと、増産できるかな?とハントはぼくのスライムのスクリュー部分をしげしげと眺めた。
ケインのスライムは潜水艇の役割を買って出たので船上で入念にイメージトレーニングをしている。
今日は漁場を荒らさないことを示すために石の採取より湖の中の撮影を優先することになっている。
スライムたちで役割分担をして臨むのだ。
臨機応変に対応できるぼくのスライムが母船で、潜水艇がケインのスライムで、ウィルのスライムが潜水艇の命綱とリールを担当し、みぃちゃんのスライムがケインのスライムの潜水艇から水中を撮影し、ボリスのスライムが底引き網になって石を採取する予定だ。
活動予定のスライムの使役者だけがぼくのスライムの高速艇に乗船することになると、キャロルのスライムが張り切って観光遊覧船に変身した。
「ハントさんはこっちですよ」
ぼくのスライムの高速艇に乗ろうとしたハントに兄貴が声を掛けた。
「我儘を言うのなら湖岸で見学してくださって結構です!」
すっかり第三皇子を諫める役になったミロがピシャリと言うと、ハントは大人しくキャロルのスライムの遊覧船に乗った。
漁港で仲良くなった漁師さんが一人ずつ案内役として乗船すると、半透明なスライムの船に、湖の下が透けて見える!と船に慣れている漁師さんも喜んだ。
モーターの音を轟かせてぼくのスライムが出港すると、その急加速に漁師さんは、キャハー!と甲高い声を上げた。
気分は大聖堂島を一周したかったけれど、打ち合わせ通り仕掛け網がない場所に移動するだけに留めた。
「ここなら誰の漁場でもないから苦情は一切出ないはずだ」
漁師さんがお勧めしたスポットは大聖堂島に生えている巨木の根がマングローブの木の根のように湖の底まで伸びているので、魚たちの隠れ家になっているが、定置網を仕掛けるには木の根が邪魔で、釣り糸が絡まりやすいから水産資源保護も兼ねて漁場にしていないらしい。
湖の案内と湖底から石を少しだけ採取する証人として乗船した漁師さんは、ここで魚を取ると湖の底に引きずり込まれるんだ、と漁場にまつわる怪談を教えてくれたので、スライムたちは厳戒態勢で臨むのだ。
ぼくのスライムの船底から見る湖の中は木の根が無数に交差しており、その間を大小の魚が泳いでいた。
「人間も水鳥も水中で複雑に絡む木の根に阻まれて素潜りさえしないから、ここは魚の安息地だよ」
ぼくのスライムの高速艇より大型のキャロルのスライムは魚の安息地の手前で止まり、ハントたちが手を振ってぼくたちを見守りつつ、遠くで可動橋が動く様子を楽しんでいるようだった。
「木の根の手前まで泳ぐだけなら引きずり込まれることはない、と言われているけれど、ここを潜った水鳥が上がってこないから、教会都市の漁業ギルドはここの遊泳も禁止している。だけど、大聖堂島の礼拝所を光らせ、精霊たちを連れて歩くガンガイル王国の留学生たちが湖底を調査するのなら、是非ともここを調査してほしいんだ」
少年のようにワクワクした笑顔を見せた漁師さんは、ガンガイル王国の留学生たちは神々のご加護が篤い、と信じて疑っていない。
スライムたちが湖の底に引きずり込まれそうになったらシロに亜空間に転移してもらうことになっている。
遊覧船に乗った兄貴も、特段注意事項を言わなかったので、この作戦で大丈夫なはずだ。
「じゃあ、潜水艇役のスライムを降ろすね」
ケインが湖にケインのスライムの潜水艇に乗り込んだスライムたちを降ろすと、ぼくのスライムが船底の一部をスクリーンにしてみぃちゃんのスライムが撮影した湖の中を映し出した。
ヒョエーと映像を見た漁師さんは驚きで奇声を発したが、すぐに木の根の間をくぐり抜けて沈んでいく映像に釘付けになった。
「あの木の根の間に群れを成す魚は全部兄弟で、世話をする夫婦の魚がそばにいるはず……ああ、あの二匹だ。成魚になったら湖を周遊するようになるのでその頃、漁が解禁になる。煮ても焼いても美味しいんだ」
漁師さんから魚の解説を聞きながらぼくたちは沈んでいく潜水艇からの映像を楽しんだ。
だんだん深くなると日の光が届かなくなり映像が暗くなっていった。
底引き網として待機していたボリスのスライムが照明として発光した。
どこまで潜っても木の根の絡むところばかりで底が見えず、魚たちは深海魚のように光りを集めるために目が大きくなっていた。
……淡水の深海魚なんて言葉の矛盾を感じる。
いったいどこまで深い湖なのだろう?
漁師さんは、こんな目玉の魚は見たことない、と興奮気味にスクリーンに張り付いた。
「他の漁場にはこんな魚はいないのですか?」
ケインの質問に、漁師さんは首を傾げた。
「ここまで深く網を降ろしたことはない。湖の底まで潜った人間の話も聞いたことはないよ」
「大聖堂島の地下の階段も凄く深かったじゃないか。大聖堂島が浮いているのなら湖の底はもっと深いだろう?」
「いや、あれは上と下があべこべになっていたじゃないか」
ウィルとぼくの話に、大聖堂に入ったのか!と漁師さんが羨ましそうに言った。
スクリーンに映る湖内の景色から木の根が消えたところで、ケインのスライムが潜水を止めた。
“……ダレダ!ダレダ!ダレダ!ダレダ!オマエタチハダレダ!”
ケインのスライムに向かって湖の底から精霊言語で何物かに誰何された!
“……ガンガイル王国ガンガイル領出身ケインのスライム”
“……同じくガンガイル王国出身ボリスのスライム”
“……同じくガンガイル王国出身カイルの猫のみぃちゃんのスライム”
“……同じくガンガイル王国ラウンドール公爵領出身ウィリアムのスライム”
スライムたちが精霊言語で名乗りを上げながら、これまでの旅路のダイジェスト映像を湖の底の生物に送り付けると、湖底から大爆笑するような振動が起こった。
「大きく揺れるよ!みんな船から落ちないようにしがみついて!」
ぼくが拡声魔法で遊覧船にむかって叫んでいると湖面が大きく揺れ出した。
おまけ ~次期公爵領主のお忍び旅行 其の10~
王都入りする飛行中に、イシマールさんはジュエル一家とかかわって人生が変わった仲間としてぼくを認めてくれた。
イシマールさんもイシマールさんの飛竜もジュエルさんとカイル君と出会って人生が一変し、世界を股にかけて活躍するようになった話を聞いた。
片田舎の下級貴族の子弟が飛竜騎士になるだけでも信じられないのに、退役後、帝国の上流階級を唸らせるパティシエになり、帝都の危機に飛竜と共に奔走することになるなんて、本人から聞いても信じられない。
イシマールさんの話にぼくが感心していると、二人の護衛はぼくの人生こそ数奇なものだ、と言いたげな視線を向けた。
うんまあ、帝国の廃墟の町で古代魔法陣を封じることになるなんて、カイル君に会う前のぼくに言っても信じないだろう。
「俺はしばらく王都にいるからスライムの飼育で質問があったら鳩の魔術具を飛ばしてくれ」
王都の辺境伯寮の飛竜舎に到着させたイシマールさんが飛竜から降りたぼくの肩を叩いて言った。
辺境伯寮に着陸したことで、飛竜はチャーターではなくイシマールさんの私用で王都に来たついでにぼくたちが便乗した形になっていた。
事情を知っているような寮長に挨拶し、中庭の精霊神の祠に魔力奉納をすると辺境伯領からついてきた精霊たちが、ここにいるよ、というかのように光った。
休暇期間の辺境伯寮は寮生たちは帰領して不在だったが、資格だけを取得に来た成人の老若男女が滞在していた。
辺境伯領民の意識の高さにぼくも護衛たちも感銘を受けていると、到着の連絡を入れる前にうちの執事が迎えに来た。
「教皇猊下からイザーク様に親書が届いたので、取り急ぎお迎えに上がりました」
教皇から至急と記載された親書を受け取って焦った執事が、何かあったのか、と辺境伯寮に事情を探りに来たらぼくたちが到着していたらしい。
車内でざっくりと事の経緯の出だしを話すと、辺境伯領に到着してすぐ護衛の二人がぼくとはぐれた件で執事は護衛の一人にブチ切れた。
「お前がついていながら何をしていたんだ!」
真っ赤な顔で激高した執事に、申し訳ありません、と護衛の一人が肩を竦めた。
「いや、あれは、不可抗力だったよ。キャロライン嬢の緊急帰還に合わせて騎士団員たちの布陣がしっかり出来上がった中に、たった二人だけの護衛ではどうしようもない。抵抗しない方が正解だったよ」
ぼくが庇うと、命に代えてもイザーク様をお守りする、と言ったのに、と執事が嘆いた。
「いやいや、命を簡単に捨ててはいけないよ。実際、先回りして事なきを得たのだからね」
話の内容を最小限に抑えなければ執事の頭の血管が何本か切れてしまいそうなほど、護衛を叱責しそうだ。
教会の秘密組織が子どもたちを攫って人体実験をしていたが、キャロライン嬢たちが一時保護するためにガンガイル王国へ緊急帰国していた件を聞くと執事は青ざめた。
「国内で出生統計を取り始めたのは教会が疑わしいからだったのですね」
乳幼児の死亡率を下げるため現状把握に行われていると思われていた人口統計調査が、教会の秘密組織が子どもたちを誘拐することを警戒して行われていたのだと、ぼくも執事の指摘で気付いた。
「世界中から子どもたちを集めていたようで、教皇猊下は教会内の秘密組織の撲滅と新たな神学校設立に向けて奔走されているよ」
執事の血管を気にしたぼくは廃墟の町にぼくも乗り込んだことをどうやって衝撃を少なく伝えようかと悩んだが、執事に激怒された護衛が、言わないのですか?と上目遣いにぼくを見た。
「教皇猊下も辺境伯領にいらしていたのですか?」
何か隠しているでしょう?とぼくと上目遣いの護衛を見比べた執事が問いかけた。
「ガンガイル王国留学生一行は孤児たちを助けるために問題のある町を訪問したのではなく、町の護りの結界が怪しい土地を見捨てられなくて立ち寄り、偶々その町を抜き打ち検査で訪れた教皇猊下と鉢合わせしただけで、その日、教皇猊下は教会の護りの結界を維持するためにその町に残っておられました」
それなら面会もしていないぼくにどうして教皇から親書が届くのか、と問い詰めるような強い視線を執事はぼくではなく護衛の一人に向けた。
「イザーク様はその町の古代魔法陣を封印するために、教会の転移魔法の部屋から特別に帝国に入国しました!」
「話すタイミングを見計らっていたのに、ペラペラと何でも言わないでよ!」
ぼくが護衛の口を塞ごうとすると、父には隠しておけません、と護衛が言った。
「親子なの?」
執事の薄い頭と護衛の剛毛を交互に凝視してしまった。
「息子は母方に似たようで、この年でもふさふさですが、私は若いころから頭頂部が寂しかったですよ」
「お土産の目録に育毛剤があったから、後であげるよ」
執事はぼくの頭部を見て、もしかして使用されました?と訊いた。
「ちょっと素材として髪の毛が必要だったので試してみたら凄かったよ」
毛量が増えて膨らんだぼくの髪の毛を触りながら言うと、いただきます、と執事は素直に返事をした。
「後で詳しく話すけれど、廃墟の町ではジュエルさん一家の魔術具を使用したから全く危険はなかったんだ」
執事は護衛の息子を凝視したけれど、現場に居合わせていなかった護衛は何も反応できなかった。
「礼拝室付近に立ち入れなかったからで、二人の職務怠慢ではないよ。立ち会ったのは教皇猊下やキャロライン嬢やウィリアム君などの資格がある人物だけだったからね」
そうでしたか、と執事は息子に対する怒りを鎮めた。
「今回の旅はいろいろ勉強になったよ。とくにね、次期辺境伯領主から信頼できる腹心を探せ、と言われたことが印象的でね……」
一人で仕事を抱えがちだったぼくの口から腹心という言葉が出たことに、執事と護衛たちは目を丸くした。
「そんなに驚かなくてもいいでしょうに。ジュエルさんから試作品の特別な魔術具をもらったので、その管理を任せられる信頼できる人が必要なんだ」
わたしでは駄目なのですか?と執事がぼやくと、ぼくは執事の息子の後頭部を指さした。
「彼が辺境伯領から精霊を連れて帰ってきた、ということは精霊からそれなりの信頼があるように思ってね」
執事の息子の髪の毛の中で一体の精霊が光った。
「グフゥ!私を指名してくださるのですか!それほど信頼してくださるなんて、ありがたき幸せです!」
奇声を発し瞳に涙を浮かべてぼくを見る執事の息子に、自分がそこまで慕われているとは考えてもいなかった。
「息子はかねてから真面目なイザーク様を陰ながら応援していました。文官になるより護衛としてイザーク様のそばにいたいからと進路を騎士コースに途中で変更したほどです」
カイル君と親しくなる前のぼくはそこまで真面目で熱心ではなかったはずだ。
「公爵家のご子息の中で誰よりも誠実でけなげな方でしたので、イザーク様に一生お仕えしたいと考えていました」
比べる相手が異母兄弟ではぼくの方がましということかな。
「また、悲観的にお考えになっていますね。息子の熱意は本物ですよ。それでも、まあ、騎士を目指したのが遅かったせいなのか、どうにも頼りないところがあるのですよ」
執事の言葉にしょんぼりとした執事の息子の名前を思い出そうとした。
……ダニー?ダニエル?
執事の息子の髪の毛にいる精霊が、正解に近いぞ、というかのように点滅した。
ダリ……ダリルだ!
「精霊はダリルでいい、と言っているみたいだし、任せてみるよ」
お名前を呼んでくれた!と喜ぶダリルに、間違えなくて良かったとホッとしたら、もう一人の護衛が恨めしそうにダリルを見ていた。
「オーツもこの大事な任務でダリルを補佐してほしい」
イザーク様お任せください!と涙目で震えながら返答するオーツを見て、今までぼくが自分の殻に籠もって周囲の人を拒絶していたことに気が付いた。
「こちらこそよろしく」
この後、教皇の親書の内容やスライムの飼育でてんやわんやになることなど、まだ知らなかったぼくは、自分を支えてくれる人がずっと近くにいたことにようやく気付いて胸がくすぐったくなったところで、馬車はタウンハウスに到着した。
~次期公爵領主のお忍び旅行(完)~
近日投稿予定のおまけ!
~次期公爵とベビースライム 0.1~
ぼくはジュエルさんの手紙を読んで衝撃を受けた!
個人の魔力に完全に染まるスライムは***から誕生するらしい!
指定された日数ぼくはなるべく魔力の高そうな食べ物を食べて飼育用の魔術具に籠もった。
次回おまけの投稿はお休みします。再開できるよう頑張ります!




