家族会議
誤字報告、誠にありがとうございます。速やかに訂正しました。
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夕食後、家族会議が開かれた。
テーブルの上には『はい』『いいえ』と書かれたカードが置かれている。
みぃちゃんとみゃぁちゃん、スライム全員がテーブルに乗っており、各々、自由に意思表示ができるようになっている。
父さんが口火を切った。
「本日の議題は、我が家が平穏に暮らしていくためにはどうすべきか?それと、あと一つあるが、それはのちほど話そう」
議題の発表に、テーブルの上のペット魔獣たちのうち、今回の事故?(確信犯を含む)に遭遇しなかった、みぃちゃんとみゃぁちゃんと父さんと母さんのスライムが、明らかに動揺した。
自分たちが追加の『光る苔の雫』をもらえるかどうかが議題だと思っていたようだ。
「今回、働くスライムたちが水槽掃除の手間を省いてやろうとして、光る苔の雫を誤って摂取してしまったのは、あくまでも事故です。その結果として魔力の扱いが向上したのは、あくまでも副産物です。今後このような事故の防止をするため、製薬作業部屋に光る苔の水槽は置かないことに致します」
母さんが淡々と事情を説明した。確信犯の事まで事故扱いになっている。はなから結論が決まっている家族会議なのか?
「明日、製薬部は独立した別棟を建設する。これは前から決まっていたことで、今回の件を大げさに考えてのことではない。化粧品部門を同時に設立して、外部からの雇用も受け入れることを商業ギルドから求められたからだ。カイルとケイン、それぞれのスライムは引き続きお婆の助手として、短時間の労働はギルドにも認められた。あくまでも、“修行をかねた家業の手伝い”だ。よって、スライムたちの労働時間も短縮される。お前たちは働き過ぎだ」
父さんの話を聞いた、ぼくとケインのスライムたちは慌てたように『いいえ』のカードに飛び乗った。
……もっと働きたいのか?
「気持ちは汲んでやりたいんだが…優秀過ぎると新しく雇用する人間たちが無能に見えてしまうんだよ、相対的にな。短時間他者と別室で働いて、結果同じくらいに見せられればいい。空いた時間は子どもたちと手放しで遊んでほしい。遊びの部屋が近いうちによその子どもたちにも解禁されるんだ」
「街の治安については解決したの?」
「繁華街の各所に兵士の詰所ができた。それにうちに遊びに来る子どもたちは貴族の子息令嬢がほとんどだから、護衛の騎士がついて来ることで毎日騎士たちが町を往来すれば治安維持につながるという事だそうだ。キャロラインお嬢様が魔獣カードを入手したそうだから、お前たちと遊びたいのだろう。スライムたちは手加減しなさい。キャロラインお嬢様の魔獣カードは金箔でキラキラしているが、特別な技はない。お前たちには接待遊戯技を覚えてもらわなくてはならない。申し訳ないが、技を組み合わせて複雑にするのは禁じ手とする」
これには全てのペット魔獣とケインが『いいえ』のカードに手を置く。スライムたちは触覚みたいな手だけど。
「まあ、よく聞きなさい。家族で遊ぶときは禁じ手はなしですよ。存分に研究して新しい技を生み出しましょう、ただ、キャロラインお嬢様の時だけはそうしないとこの町で暮らしやすくなるかどうかに繋がりかねないの。」
全員落ち着いて『はい』のカードに手を置く。
「じゃあ、遊び部屋の解禁までに、手加減の練習をしないといけないね。みぃちゃんとみゃぁちゃんは興奮しないように練習しよう」
二匹はおとなしく『はい』のカードに手を置く。
今日はえらく聞き分けがいい。
「働き方改革と接待遊戯はみんな納得したようだから、光る苔の雫の取り扱いについて話をしよう」
お婆の話にペット魔獣たちが待ってましたとばかりに前のめりになる。
「現状では、光る苔の雫が体に悪いものではないとは言い切れないんだ。私はうちの子たちに摂取させるのは時期尚早だと考えていた。悪い副作用がでた時には後悔してもしきれない。みんな大事なうちの家族だからね。うちの人間の家族が誰も飲んでいないのは、まずい以外にも理由があるんだ。わかるかい?」
ペット魔獣たちはためらう様子を見せながらも、全員『はい』に手を置いた。
「わかってくれたならいいんだ。ただね、現状としてスライムのうち三匹だけ急激に変化している状態は他の子たちには不満でしょう」
速攻で『はい』に四匹の手が伸びる。
「あなたたち用に、光る苔の雫を使った回復薬を作ってみたから、それを試してみてほしいの」
四匹は高速で『はい』と返答する。息ぴったりで種族を越えた友情でもできたみたいだ。
「あの事故に遭遇した子たちはしばらく保留になるよ。本当はあの事故が無かったら、全員で試すつもりだったのよ」
お婆の助手チームが触覚を両手のようにしてテーブルにつけて土下座した。
十分に反省しているようだ。
「この薬は光る苔の雫はほんの少ししか入っていないよ。後の成分は人間用の回復薬と一緒だ。もともと苦い薬なうえ光る苔の雫も微量でも含有している分、余計にまずい薬になっているだろう。なにぶん私も試していないのに、お前たちで治験することになってしまうことを許してほしい」
四匹は迷わず『はい』と答えた。
ここから、だれから試すかの議論になったが、最初の一匹が苦しむのを全員で見守るよりは、四匹一度に飲んで同時に苦しむことを選んだ。
覚悟を決めた四匹がほぼ同時に飲み込むと、小刻みに震えはしたがいつもよりはずっとましだった。
「そんなにまずくないのか?」
全員が『いいえ』に返答する。
「いつもよりはまずくない」
これも全員が『はい』だった。
「これなら毎日服用しても良い」
『はい』
この治験は事故にあったスライムたちと魔力の扱いが同等になるまで続けられることになった。
「続いての議題はとても大切な話だ」
父さんがまじめな顔で仕切りなおした。
「……カイルの亡くなったお母さんの家族から連絡があった」
「「「「「「「「「!!!!」」」」」」」」」
家族全員に動揺が走った。
おまけ ~真夜中は猫の時間~ 最新型の洗濯機
とある魔猫A: なんで、キラキラ光るのが、あんたの時だけ連続して点滅するの?
とある魔猫B: かくへんキタ――(゜∀゜)――!!って叫べばいいんだって。あっ、ご褒美のカリカリ出た。
とある魔猫A: ちぇっ。あたしの番だよ。早く交代して!
とある魔猫B: かくへん、は光の点滅が終わるまで交代なしだよ!
とある魔猫A: !!……そんなぁ~。あたしのカリカリ………、




