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七神剣の森【全年齢版/完結】  作者: 千艸(ちぐさ)
七神剣の森
98/105

勇者レオンの記憶

主神は死の淵に立ち、前世の記憶を取り戻した。前世と同じ過ちを繰り返し、彼は再び忘れ去られたと絶望していた。もう一度話し合いたい。その思いに応え、ラストリゾートが彼を蘇生させる。彼は狐色の髪に戻り、サンリアはついに夢の記憶を手に入れた。

レオンはサンリアを優しく抱き()めた。

サンリアはレオンの腕の中で声を上げて泣いていた。

何故私は忘れていたのだろう。

こんなに、私のことを大事にしてくれていた人がいたのに。


「レオン君……確かに、とてもしっくりくる名前です。僕達は…初めからずっと一緒に旅をしてきた君のことを、忘れていたとでも…?」

セルシアが口を(おさ)えて(ふる)えている。自分達がもう少しでとんでもない(あやま)ちを(おか)そうとしていたかもしれないと思うと平静(へいせい)ではいられなかった。

「ああ。これを見てくれ」

レオンが勇者ヨークの物語としてかつて編集した映画を再生する。

「…覚えています。これは、僕の(たましい)が覚えている、勇者ヨークのサーガ…

 そこに封印されしは白き神の剣 ヨークはその封印を解いた

 (たちま)ち現れる闇の狼 ヨークは勇猛(ゆうもう)に切り捨てその肉を食らった

 ここは果ての森 闇が飲み尽くさんとする世界…」

セルシアが途中から歌い始める。

(まこと)に忘れ去るには、(きょう)(れつ)に過ぎたその旅路。


しかし、ああ、見よ!勇者ヨークのその()(ざん)な姿

闇の呪いに(おか)され()(はや)死を待つばかり

救うには果ての森を抜けねばならぬ

ミフネの祈り、神の剣に届き

真の姿を得た神の剣が 闇の呪いを清め(はら)った


果ての森よ、(あきら)めよ 勇者ヨークの体は今また炎の神の元へ

(ぎょく)(けん)が眠る彼を迎え 炎の神が加護(かご)を与え

今ここに復活せん 勇者ヨーク、我らが伝説──!


セルシアが歌い終え映画が幕を閉じる頃には、皆すっかりレオンのことを受け入れていた。

そう、確かにこの(きつね)(いろ)の少年は、自分達と共に旅をし、いつも笑顔で夜を照らし、幻影(げんえい)で遊び、様々なことに俺のせいでと()(のう)し、それでも神の生まれ変わりとして、代替わりをやると自分で言い切った、大切な仲間で。


それを、自分達は忘れていて。

記憶が改竄(かいざん)されていて。

心無い長命種として断罪し。

いつ死ぬのかとその時を待ち構えていた。

強力で恐ろしい催眠(さいみん)(じゅつ)から、目が覚めたような心地だった。


「……謝っても、謝りきれません……。リオンさんは、本当は、こんな思いをする為に…長命種になって下さった訳ではないのに……」

フィーネが目に涙を浮かべてしょげかえる。

「世界の記憶を書き換える…人間だけじゃない、俺のモジュールだって例外じゃなかった。ロロに乗る奴がいないのも誰も不審に思わなかった。

 …()(ほう)過ぎるだろ…それを、レオンは二回も食らったって言うのか。俺等は、二回もお前のことを忘れて…」

クリスが(けわ)しい顔で首を振った。

「まあ、一回は前世の話だからあんま気にすんなって。それに、今回はこうして思い出してくれたし。」

レオンがふにゃりと笑う。しかしその顔はすぐにくしゃくしゃになった。

「…俺の失敗を思い出して欲しくなかった。俺の存在を忘れて欲しかった。だから俺は独りで長命種になったんだ。

 でも、()えられなかった。俺の知っているお前らが、俺が死ぬのを喜んでいる顔見たら、そんな下らないプライドなんかもう、どうでもよくて…俺はまた、皆に思い出して欲しくなって、皆と一緒に居たくなって……

 自分勝手で……本当に、ごめん」

胡座(あぐら)のまま、頭を下げる。

「本当に、お前が自分で選んだのか。その道しかなかった訳ではなく?」

アザレイが相変わらず(きび)しい目をレオンに向ける。しかしその厳しさは、最早レオンに対するものではなかった。

「ああ、お前らは、あんな失敗をした俺を、それでも責めなかった。寄り()ってくれていたさ。単に俺が逃げただけだ。だから、忘れられたままでも、自業自得だった。」

「…じゃあ、そういう時はごめんなさいより、もっと他に言うことがあるんじゃない?」

サンリアが(ようや)く笑顔を取り戻してレオンに()め寄った。

「…うん、そうだな。皆……

 本当に、ありがとう……!」





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