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七神剣の森【全年齢版/完結】  作者: 千艸(ちぐさ)
一筋の光
9/105

挿話〜銀の大車輪〜

一方その頃、夜の国──

六階建ての高さを(つらぬ)き柱と壁とがそそり立つ広く長い白亜(はくあ)廊下(ろうか)を黒い(よろい)小柄(こがら)騎士(きし)が早足で、歩いてゆく。

ヘルムに(かく)れてその(おもて)は見えないが、その体躯(たいく)はまだ少年と言って通用する程だ。


やがて右手前方に開けた広間が見えてくる。彼はそこに入る前に柱の(かげ)から頭を下げ、声を張り上げた。

黒天(こくてん)騎士団(きしだん)団長(だんちょう)アザレイ・シュヴァルツ、参上(さんじょう)つかまつる」

声も明らかに十代の若者のもの。

その声に答えて別の低くよく通る声が中から聞こえた。

「アザレイ・シュヴァルツ。入れ」

「はッ」

その騎士アザレイは、さっと頭を上げると広間の中に入って行った。


広間は採光(さいこう)が行き届いて左右の壁が光雲(こううん)(ごと)(かがや)き、正面は数本の太い柱に(こま)やかな()り物が(ほどこ)され、また(むらさき)(ぎん)基調(きちょう)にした重厚(じゅうこう)なカーテンとタぺストリの数々が複雑(ふくざつ)に配置された豪奢(ごうしゃ)(つく)りになっている。ざっと千人は収容(しゅうよう)出来そうな、騎竜(きりゅう)だって飛び回れそうな広い空間だったが、この部屋はこの建物の中では数多(あまた)ある広間(ひろま)のうちのごく小さなもののひとつだ。

それはこの国の、この世界の王ただ一人の為の私的な謁見(えっけん)室であった。


アザレイは()()がちに素早(すばや)く、しかし確かな足取りで広間の中央の目印になる銀色の大車輪(だいしゃりん)模様(もよう)まで歩き、そこに(ひざまず)いた。

国王(こくおう)陛下(へいか)におかれましては。」

「…」

「……」

「…ふっ。其処元(そこもと)だけだぞ、そうやって(りゃく)すのは。()っからの合理主義(ごうりしゅぎ)め」

「お()(いただ)き」

「誉めとらんぞ。相変わらず仕方のない奴だ…親の顔が見たいものだ」

(それがし)の親でしたら、いつでも」

「ええい、冗談だ。勿論毎日の様に会っておるわ、シュヴァルツ団長にも大魔導師(だいまどうし)殿にもな」

「……」

「彼女の息子であるから余計に仕方のない奴だというのだ」

国王と呼ばれた男は、ふ、と短い溜息を一つ()いてゆっくりと(まばた)いた。眼下の少年を見る眼は(やさ)しい。少年は今やこの世界を左右しかねない一大戦力だが、王の中では武器というよりも、出来ればいつまでも可愛がってやりたい親戚(しんせき)の子という認識(にんしき)なのだった。

だからといってこのカードを後生(ごしょう)大事に(にぎ)っておく無能(むのう)ではない。


「…さて、今回の用だが…偵察(ていさつ)の命令だ」

戦闘(せんとう)規模(きぼ)は?」

十中(じゅっちゅう)八九(はっく)、戦闘はない」

「…は。では、十名を選出し…」

「其処元一人で行ってくれ」

「…?」


「剣の仲間が動き始めたらしい」


「…某は、陛下の忠実(ちゅうじつ)なる(こま)にございます。」

暫く押し黙った後、アザレイは低い声で、だが力強くそう明言した。

「無論その心配はしておらん。ただ、つまりそういう事であるから、何も知らぬ一般の兵は参加出来ん」

把握(はあく)(いた)しました。麾下(きか)には伝えても?」

信頼(しんらい)出来る者に(しぼ)っておけ」

御心(みこころ)のままに」





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