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七神剣の森【全年齢版/完結】  作者: 千艸(ちぐさ)
七神剣の森
86/105

挿話〜昔々あるところに、遥か遥か遠い未来に〜

この次元を、時間軸上から()(かん)してみましょう。

もしも、あの時私達が敗北していたら、

世界はどうなってしまっていただろう──


「お姉様、アンゼお姉様、お柿様…」

「いやだから、最後のは字間違えてるってば…」

「あ、良かったですお姉様、戻って来られましたね」

水色のふわふわとした巻き髪を()らしながら、妹が目の前で微笑む。彼女は寝椅子から立ち上がった。金色の細く長い髪が、更々(さらさら)と流れる。

「どうしたの、エミューナ様。クリウスから何か言伝(ことづて)でもあった?」

「いえ、ただアンゼ様が(さん)()(うつ)っぽかったのでお話でもしようかと…」

「あのねぇ。産後鬱って産後にしかならないのよ。こういうのはマタニティブルーって言うの。いや、違うから。マタニティブルーでもないわよ別に。私とあの人の子なんだから、死んでても生き返って生まれてくるわ、きっと」

「えぇ…ちょっと怖いですね…」

困った様に笑う妹を見て、本当にこの子は素直なんだから、とアンゼは眉を開いた。

「…今ね。私達が負けていた場合のことを考えていたの」

「え、どちらに、ですか?」

「うーん。どっちもあり得たわよね…。でも主神は結局、何も変えられなかったんじゃないかしら。ヤバかったのはラインハルトの方かもね」

「あの方、狂人でしたもんね…」

普通の感覚で見ると、あれは狂人に見えるのか。アンゼは新鮮な驚きと共に妹を(なが)めた。この感覚を持つ半分庶民の王こそ、やはり今のワーネイアに必要だったのだと彼女は改めて確信する。

もしも、の世界は悲惨だった。でも私達は勝利した。

もう、世界は大丈夫。

私が死ぬまでは。




─────

フードを被った蝙蝠(こうもり)族の少女が友人の姿を認めて駆け寄る。

「セオ、お帰り。何が書いてあった?」

人族の少年セオラキは、少女に声を掛けられ、少し笑顔になる。

「ただいま、レム。うーん、多分だけど、太古の記憶だよ」

「太古?って、半人種が生まれる前とか?」

「そうそう。それどころか、ヒトが地下に(もぐ)る前」

「えーっ!アウストラロピテクスじゃないか!」

「何でピンポイントでそこまで(さかのぼ)った?もうちょい後だよ。ヒトと、神様がいた頃の話」

「神様…神様かぁー。僕の耳が好きなあいつの事じゃないよね…?」

レムがフードを上から押さえる。セオラキだってレムの猫耳は好きなのだが、この様子だと到底(とうてい)本人には打ち明けられない。

「うーん、もうちょい怪物寄りな絵だったねぇ。管理者達では無さそう」

「怪物を神様って(あが)めてたってこと?管理もしてくれないのに?」

「単純に、人族の運命をそいつ等が(にぎ)ってたってことじゃないかな」

「嫌だなぁ、そんな運命読めないじゃん…。僕等の仕事が無くなる」

「…ところでレムはいつまで魔女のフリするの?そろそろ厳しくない?」

「えっ?まだ声変わりはしてないし…したらしたで(のど)(ぐすり)作ればいいし…」

「…前はあんだけ女装嫌がってたのに。変わったねぇ、レム…」

「えー?だって今はセオがいるからね!僕も頑張らなきゃー」

レムが彼にぎゅうと抱き着いてくる。ここに拠点を移してから、地下で成長を止められていたセオラキも随分(ずいぶん)大きくなったが、レムはもう大人顔負けの身長になってきた。(くや)しいが、身長差が(せば)まらない。

「やっぱ、お日様が大事なんだなぁ…」

セオラキは(まぶ)しそうに空を(あお)ぐ。

あの記憶をもっと研究すれば、何故祖先が地下に潜ったのかが分かるかもしれない。本物の太陽を捨てなければならなかった理由は何か。地上で何が起こったのか。

(大樹様に直接聞ける人が居ればいいんだけど…)

今は別の問題に駆け回っている友人達を想起しながら、自分に出来ることをやろうと彼は気合いを入れ直すのだった。





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