七神剣の使い方
フィーネが仲間に入って一夜明け、剣の仲間たちは昨晩の雰囲気から一転、イグラスとの戦いに備えて真面目に戦力を確認することにした。
「厄介な女に呪いをかけられる話は大抵男の側にも問題があるってことなんで僕は同情はしませんよ。それより、プラズマイドの話を続けて?」
「うふふ、厄介な女の呪い…言い得て妙だな…。
おう、プラズマイドの能力はナノマシンを動かすだけじゃない。むしろメインはその圧倒的火力!プラズマイドから雷を出すこともできるし、プラズマイドで雲から落ちる雷を操ることもできる。雷のエネルギーを貯めておくこともできるらしくて、今はかなりチャージされてるけど、これが切れたら俺の魔力から雷分のエネルギーが持っていかれることになるから注意しないとかなー。
それと、電流から磁場を操ることもできる。人間相手にはちょっと不調か?くらいにしかダメージを与えられないけど、鳥なんかの磁気受容のある相手、それから鉄に頼る相手なんかには天敵になると思うね」
「電気でできることって言ったら、火も起こせるんだっけか」
「うん、出来なくはない。お前の光の剣と効率は同じ程度だけどな。
それより帯電させて引力や斥力で振り回す方が威力は高いと思う。
あとは電気分解とかだけど、この辺になってくると制御も難しい割に大したこと出来ないから覚えとかなくて良いと思う。他に質問あるかな?」
クリスが一同を見回す。サンリアが手を挙げた。
「雷を操る時は雲が無いといけないのかしら?」
「雷雲があるとベストだね!フィーネちゃんとサンリアちゃんの協力があれば、晴天でも落とせるとは思うよー」
「雷雲ってどう協力すればいいんでしょう?」
「フィーネちゃんが氷晶を作って、サンリアちゃんがそれを空に巻き上げる。氷晶が無理なら細かい水滴でもいい、吹き上げられる途中で凍れば良いからね。すると摩擦が起きて雷雲になるんだ」
「ちょっとやってみましょうか…」
「いや、私達が水の上にいる状態でやるのは止めましょ?戦いは四日後なんだから、街に着いてからが安全だと思うわ」
「そうだね、色々実験する時間があって良かったよー。それじゃ次はフィーネちゃんかな」
「はい、私は水の剣アクアレイムで水を操ることが出来ます。アクアレイムは普段刀身を持たない剣です。私の魔力で刀身を作りますので、サイズは色々変えられるんですが、重いのは苦手なのでだいたい細剣にしています。ランザーより大型の魔法生命体も作れます。水を操って大波や鉄砲水を起こして流し去る。恐らくこれが一番攻撃には適していると思います…残念ながら、男性に比べると剣を振る力は弱いですので…。
水の無い所に水を湧かせることもできます。正確には、水のあるところから引っ張ってくるか、大気中の水分を水に変えるだけですが。逆に水なら蒸発させたり、凍らせることもできますね。
それから、相手に剣が刺さりさえすれば、相手の体内の水分を暴走させることが出来ます。もう、めちゃくちゃにできちゃいます」
フィーネが莞爾と笑い、場は一瞬フリーズした。
「…あ、でもそれ良いわね。私もやってみようかしら…人間風船」
サンリアが何やら恐ろしいことを呟く。
「サンリアさんはどういう魔法が使えるんですか?」
「それじゃ、私の番にするわね。私の剣はウィングレアス、風の剣。これね。この風車の刃を回したり飛ばせたりするわ。使える魔法は、風を起こして飛んだり運んだり吹き飛ばしたり、音を誤魔化したり、匂いを運んだり…最初はしてたんだけど、どうやら空気自体を操れるみたいなの。だから、生き物相手に一番手っ取り早いのは窒息させることだわ。勿論、魔法生命体とか息をしなくていい相手には効かないんだけどね。
それから、空気の圧力を高めて圧し潰したり、かまいたちを作ったりすることも出来るわ。この辺は水と一緒かしらね。鋭い水はダイヤモンドも切り裂くって言うし。
あとは、竜巻、それから雲ね。やったことはないけど出来ると思う。エネルギーを貯めておける機構はついてないから、大規模なのはもしかしたら途中で息切れするかもしれないけど…。そこは試してみるしかないかなぁ。前にレオンと二人で飛んだ時は、一時間弱くらい保ったわ。だから環境次第ではあるけど、戦力には数えておいてくれて良いと思う」
「はーい質問ー。規模によって疲労度は変わるのかなー?」
「そうねぇ、多分動かす空気の量で変わるんじゃないかな。窒息が一番って言ったのもそこ。呼吸に使う空気なんてほんの少しだけだから」
「なるほどねー!いやー面白いなぁ」
クリスがうんうん頷く。レオンはいつの間にか深化していたサンリアの戦い方に驚いていた。通りで最近夜営に虫が出ない筈だ。ほんのちょっぴりの真空帯を設けておくだけで、そこを通っては入れないのだから。
「レオンはどう?光の剣の説明もしてね」
「ああ、そうだった。俺の剣はグラードシャインらしいんだけど、どうやら本来の姿じゃないらしい。前はもっとシンプルなただの白い剣だった。今はこんな感じ、結構光るしここに青い石が填まった。クリスやサンリアみたいなギミックは今のところ無いな、普通の剣だ。少しずつ剣が変化していくんじゃないかってじーちゃんは言ってる。だからグラードシャインとしてできることは、これから増えていくかもしれないってことは覚えておいてほしい。
んで、出来ることは…今のところ、レーザービームは上手くいってない…雷様に教わったんだけど、あんまり大した威力にならない。多分力がまだ足りてないんだと思う。だから目くらまし、遠くを見ること、見えなくすること、辺りを暗闇に落とすこと、何かを明るく照らすこと、光を集めて火を起こすこと、幻覚を見せること、くらいかなー今は。あ、一応一回だけ、暗闇病を払ったことがあるかな」
「暗闇病?何だそれ」
「うーん、何だろうなあれ…。イグラスが作った病気らしいんだけど」
「暗闇に侵されて、酸を撒き散らす黒い異形の怪物のようになり、気が狂ってしまう病気、でしたね…。異形になってしまうともう助からない。グラードシャインの光で浄化されると共に、塵になって消えました」
「怖い病気だなそれ…。ただ死ぬだけじゃないのか」
「ええ、なので僕はレオン君には感謝してるんです。レオン君がグラードシャインを使ってくれなかったら、あのままメーおじを見捨てて逃げるしかなかった」
「じゃあ、レオンの剣は暗闇病への対抗策ってとこか」
「そういう考え方で良いと思います。勿論視力に対するアプローチは強力ですが、殺傷能力は今のところ無さそうですね。
では最後は僕。僕は音の剣オルファリコンを使います。普段はこの背中のティルーンという楽器に仕込んでいます。攻撃としては爆音波による破壊。出力によっては人体にダメージを与えられますし、石造りの建物なんかも壊せます。鉄は壊せないかな。補助的には、聴覚を奪うこと、幻聴を聞かせること、小声での相談、離れた場所の音を拾うこと、こちらが視力を奪われた際の探知、洗脳」
「せ、洗脳!?セルシアそんなこと出来るのか!」
「即時催眠まではいきませんが、数時間掛けてなら、昔やってみたことありますから。音の剣を使えば強力なものになると思います」
「オルファリコンじゃなくてセルシアの能力かよ…。誰だよこいつに音の剣持たせた奴…」
「褒めても何も出ませんよー。まあ、出来るのはそのくらいですかね」
「セルが知ってるか分からないから言っとくと、音ってのは本質的には物の振動だから、聞こえる範囲の音域でなくても出せると思う。そしたら、モノにはそれぞれ固有の波長ってのがあって、そこを突かれると共振して簡単に破壊される。それを使えば鉄も楽勝で壊せるよ。あと、サンリアちゃんやフィーネちゃんが水や空気で圧力を作り出すより、音波として連続でその圧をかけられるセルの方が、恐らくこの戦い方では強い」
「なるほど、勉強になります」
「チャラいのに意外と賢いのよね、クリスは」
「この辺は俺らの国では義務教育だったからな!天才一級技術士様もついてるしねー」
「さすがリノちゃん、頼りにしてますよ」
「俺じゃなくてぇ!?」