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七神剣の森【全年齢版/完結】  作者: 千艸(ちぐさ)
二人を誘う風
22/105

挿話〜黒の竜騎士〜

「…以上でございます」

若い騎士アザレイが玉座の前に(ひざまず)き、委細(いさい)を語り終えた。

「ふむ。大魔導師殿が、な」

「想定外でございました」

「仕方あるまい。彼女には好きに動く権利がある。

 が、連携(れんけい)はしようと思わぬことだ」

「と、申されますと」

「彼女の忠誠(ちゅうせい)()に向いておらぬからな」

「それは…」

アザレイはどう反応するのが正解か分からず言い(よど)む。王はゆっくりと首を横に振った。

「気付いておらぬとは思うまい。彼女は神のご意向(いこう)のためにのみ動く。

 余は神が何をお望みなのか、正確には分からぬ。イグラスのために余は存在するが、余の為すことは神への反逆(はんぎゃく)やもしれん。

 しかし、たとえ沿()わぬとしても成さねばならぬ。そうなれば当然、其処元(そこもと)は彼女と敵対することも起こり得る。次からは、彼女が現れたとしても連携は考えずに、己の為すべきことのみを為せ。

 偵察(ていさつ)はもうよい。…水の都を叩き、〈卵〉を連れ戻せ。騎竜(きりゅう)百頭を(ひき)いよ」

御心(みこころ)のままに」


アザレイは王の私室(ししつ)退()がると、その仏頂面(ぶっちょうづら)眉間(みけん)(わず)かに(しわ)を作りながら黙々と王宮を後にした。

(水の都を……)

イグラスには六つの騎士団、すなわち金天(きんてん)騎士団、銀天(ぎんてん)騎士団、紅天(こうてん)騎士団、蒼天(そうてん)騎士団、白天(はくてん)騎士団、黒天(こくてん)騎士団が存在し、それぞれ規模は異なるが(おおむ)ね数千単位の兵を(よう)している。騎士団長の下に、二千人規模の旅団(りょだん)、五百人規模の大隊(だいたい)、百人単位の中隊(ちゅうたい)、二十人単位の小隊(しょうたい)、五人単位の(はん)と分かれてゆく。年若(としわか)くもアザレイが(たば)ねる黒天騎士団は竜を(あやつ)強襲(きょうしゅう)空挺(くうてい)部隊で、騎竜の少なさから一個旅団程度の規模しかなく、さらに騎竜に(またが)る実質兵力はその十分の一、つまり二個中隊ほどであった。

 王は騎竜百頭、と命じた。それは黒天騎士団の半数を動員(どういん)せよと言ったに等しい。過去の記録の中でしか知らぬ〈水の都〉攻略に、突然己の命運(めいうん)()けることになったのだ。他の騎士団に協力を(あお)ぐことも考えたが、水の都は確かに空から攻める以外になく、空挺工作部隊の蒼天は拡がり続ける森の維持(いじ)に手一杯の筈だ。ここは王の命じた通りアザレイのみで()()るところなのだろう。

(しかし、〈卵〉にはどう対抗すれば……)

母の助言が欲しくなるところだが、彼の王はそれを望まない。騎竜が完全に使えなくなる状況も考えて、魔導師を多めに組み込み、重装(じゅうそう)歩兵(ほへい)を減らして工作兵を…

(…いや、まずはガンホムとディゾールに相談しよう。俺独りで決めるのはまずいという予感がする)

彼は結論を保留し、腹心(ふくしん)二人にどう説明するか、彼等なら何と答えるかに思いを(めぐ)らせることにした。彼等はアザレイが軍属(ぐんぞく)となる前からの付き合いで、彼が最も(しん)を置く部下達だ。アザレイの出世(しゅっせ)が早過ぎたせいで二人共まだ中隊長でしかないが、遠くないうちに実力で麾下(きか)となるだろうとは考えている。

(父上の顔を(つぶ)真似(まね)はできない。絶対に目的は完遂(かんすい)せねばならない。この剣に賭けて……)

彼は背負う漆黒(しっこく)大剣(たいけん)(つな)ぎ止める帯に手を()り、手甲(てっこう)()しにぐ、と押さえた。





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