1_プロローグ【とある少年A】
「よし、これは売れるやつだ」
ゴミ山の中から、廃棄されたテレビを見つけた。
中のブラウン管や銅線、基板といった買い取ってもらえる部品を取り出すため、テレビを何度も地面に叩きつける。すると見事にテレビは分解され、僕の思惑通りになった。
今日はその他にも、状態のいい鉄屑や空き缶、ペットボトルなどをたくさん見つけることができた。
「お待たせ、終わったよ」
僕は相棒の錆びついたリアカーに〝宝物〟を詰め込み、ゴミ山を後にした。
「いつもご苦労なこったな坊主。ほれ、代金だ」
行きつけの廃品回収の店。いつものように、集めてきた〝宝物〟を売りさばく。今ではすっかり顔なじみとなってしまった店主から出された金額は、僕の想定を下回るものであった。
「ええ、これだけ!? 今日は結構いいものが取れたんだよ!? もっといくはずでしょう!?」
「ちゃんと査定して、ウチの買取規定に沿った額を出したまでだ。今日はもう帰りな」
「そんな……」
――今日こそ、たった一人の肉親である母さんに、少しは贅沢させてあげようと思ってたのにな……。
途方に暮れながら、僕は薄暗い路地を歩き、母さんが待つボロ家へと向かった。
ふと、こぢんまりとした理髪店のテレビの映像が、ガラス越しに見えた。
そこにはワイングラスを手にし、高級そうなスーツやドレスを着て、満面の笑みを浮かべる外国人たちの姿があった。僕と同い年くらいの子もいて、スーツにネクタイまでしている。
「いいなぁ……僕もあんな風だったらよかったのに……」
あの人たちに比べて、僕はなんて無様な存在なんだろう……。
――仕方ない。運が悪かっただけだ。生まれてきた環境が悪かっただけなんだ。
そう自分に言い聞かせようとした。
――クソ! クソ! クソ!
だがその度に、自分の存在に対して虫唾が走る。
「ちくしょう! いつか必ず這い上がってやる! どんなことをしてでも!」
――そう、どんなことをしてでも。
僕はその日、心に誓った。