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私なりの逆襲・プランA

私はみんなから探されている事を説明した。

司教様は、私に絶対に捕まるなと言っていることも併せて伝えた。


「なんとか捕まらないようにしないと」

私はどうしたらいいか考える。


「髪色のせいなら一度ちゃんと髪を染め直したほうがいい」


そう言われたので鞄の中から染料を出した。


「染料はあと一回分しかないわ」

道中、こまめに染めてきたつもりだったのに、やっぱり色が落ちるのは早い。

私も髪色が戻りそうだけど、それ以上にグラッドさんのほうが色が落ちて淡い金髪くらいになってきた。



「お願いよ。妊婦が染料を買うのは変だもの。だから、グラッドさんが髪を染めて追加の染料を買ってきて?」

「でも、今危険なのはコニーだ。君がまず髪を染めるんだ」

「ここまでは誰も来ないわ。だから、お願い髪を染めて追加の染料を買ってきて」


私のお願いを渋々聞いてグラッドさんは髪を染めてから染料を買いに行ってくれた。


何故私がこんなに隠れないといけないのかしら?

自分から婚約破棄したくせに、たかが占いで私を執拗に探すなんてどうかしている。

先読みの能力がある司教様も、状況はすぐに変わるって言っていた。

私達の状況も刻一刻と変化しているはずだから、諦めてほしいのに。



そんな時、宿屋の受付の方から大きな声が聞こえてきた。

「ここに賞金首がいるって聞いたよ。入らせてもらっていいか?」


ここは、小さな声で話さないと、壁が薄いからここが全部聞こえる。

この声の主はエドモンド王子の侍従なのか、それとも単純に賞金稼ぎに目をつけられたのか……。


宿屋のおばさんは抵抗しているが、かなり強引な相手のようだ。


私はパニックになる。


しばらく押し問答が続いたが、結局、宿屋の中を捜索するようだ。

全部声が聞こえてわかってしまった。


しばらくして部屋をノックされた。

「私は、バーリエル国の者だ。ここに我が国の犯罪者がいると聞いてやってきた。開けるぞ」


私はグラッドさんの司祭様の服を着て、聖書を持ち祈りの最中のように見せかけた。

司教様の持たせてくれた鞄の中には男性用の頭巾もあったのでそちらを被る(ただし、殆どの人は被らない)

無理があるかな?

司祭見習いの少年は、バーリエル国では皆こんな感じだ。



部屋の中に入られたくないから、クローゼットは半開きにして、鞄を入れておいた。


「少年、君の保護者は?」

「兄上なら、今はいないよ。女のところじゃないかな?30分くらいしたら戻ってくるよ。ったく聖職者のくせに」

私は領地にいた少年の口ぶりを真似た。


「わかった。邪魔した」

そう言って戻っていった。


男が出て行って、私は胸を撫で下ろした。

明るかったらすぐにバレただろう。服も大きすぎる。

でも暗がりだから、なんとか免れた。

冷静になってくると、怖さで震えてきた。



それからしばらくで入れ違いで、グラッドさんが戻ってきた。


「何をしている?」

私の格好を訝しげに見ている。


「変装です。先ほど、捜索の人が来たけど、私はどうしても捕まりたくなかった。なんとしても逃げ延びたかった」

私は声を顰めて答えた。

本当は脱ぎたかったけど、震えてうまく脱げない。


「わざわざ変装して会話する方がリスクがあるよ。それならクローゼットに隠れれば」

「そんなの開けられるわ。分かりきったことよ」

そう返事をするうちにだんだん震えが止まってきた。

グラッドさんはクスクス笑った。


「ブカブカの聖職者の服を着るコニーも可愛いよ。今日は何とか切り抜けられた。明後日まで、乗り切ろう」

そう言ってくれたので、私は頷いた。


何とか船に乗れますように。

そう祈りながら髪を染めた。



星まつり当日。

今日は帽子を被って出かける。

人が多いからはぐれないように手はしっかり繋いでないと危ない。


街は昨日よりも更に観光客が沢山いて、私を探すのが容易ではない事がわかる。


人の波に押されて港まで来た。

「今日は花火が上がるらしいわ」


大きい帆船が沢山入港していて、順番に船を見た。

人の波は港のお祭りの方に集中していて、船を見ている人はまばらだった。


その時、

「危ない!」

そんな声がして、私達に向かって何かが飛んできた。

グラッドさんは咄嗟にポケットから短剣を出し、その何かを弾き飛ばす。

すると、すごい速さで沢山の矢が真っ直ぐに飛んできた。

それを短剣で斬り落とす。

凄まじい速さで普通の攻撃ではない事がわかる。


「やばい!これは罠だ!あの声に反応しなければよかった」

そう言ってグラッドさんとともに人混みに紛れる。

しかし、周りに人が沢山居ようが、割れたガラスが沢山飛んできた!


その場にいた人々が怪我をしたので、助けたいが私はグッと我慢する。

飛んできた物にあたって軽く切っただけだ。


非情だけど、誰よりグラッドさんを守らなければいけない。

司教様の声が聞こえる気がする。


一番大切な物を守るために非情にならないといけない。

グラッドさんからは絶対に離れない!

ここではぐれたら一生会えない気がするから。


私はグラッドさんの手をぎゅっと握った。

私達は、人の間を縫い、なんとか広場まで戻った。

「髪色もちゃんと染めているのになんで?」

と言うと、

「私が魔力持ち特有の『壁』を作っていたんだ。それでバレた」

「何故壁を?」

「それはコニーを守るためだ」

「私の敵は普通の人だから大丈夫」

私はそう言って笑った。


「私達はお互いにみつかりたくない相手に同じ街で見つかってしまったのね」

私の言葉にグラッドさんは頷いた。

「そうだわ!いい事を考えた!」


私は宿屋に戻って、今から騒動を起こしたいという事と、その作戦を伝えた。

作戦名は『コニーとグラッドの逆襲プランA&B』

ここから絶対にあいつらをギャフンと言わせてやる!


「まずプランAはね……そしてプランBは……」

グラッドさんに具体的に説明した。

「そのプランに乗った!すごいぞ!いい考えだ」

私とグラッドさんは案を出し合って作戦を立てた。


まず、お祭り騒ぎに乗じて、今まで作った刺繍した商品などを売る。

元々持っていたシルクのハンカチや、馬車の移動中に作った物を売っていく。


その間にグラッドさんはお祭りのゲームに目をつけた。

「私はプラウドフット辺境伯に鍛えられましたから、力では負けません」

そう言うと、「お店の人に買ったら賞金、金貨10枚」というゲームに目をつけた。


これは参加者が、参加費として銅貨5枚を渡して、そのあと、群衆を煽りどちらが勝つか賭けてもらう。

そして、腕相撲をして、参加者が勝ったら賞金として金貨10枚。

参加者が現れると群衆に賭けを煽るのが一般的だ。群衆は参加者が勝つまたは、負けるのどちらかにかける。参加者も賭けられるので自分が勝つ方に賭けて、腕相撲の勝負にも勝てばいい。


グラッドさんは、背が高く細いから一見弱そうだ。

しかも、顔がわからないように、お祭りで売っていた、ふざけた星まつりのメガネをかけて野次馬の前に現れた。


そして自信満々に、でも弱そうな雰囲気を醸し出して腕相撲に挑戦した。

しかも、

「コニー!マイスイートハート!僕は負けないよー」

なんて弱々しそうに言って私に手を振る。

周りは馬鹿にしたり、笑ったりして大盛り上がり。

道化を演じて腕相撲に挑む。

賭けに乗る人はどんどん増える。


そして、そこに大男が出てきた。(予想通りだ)

腕中傷だらけ、顔にも大きな傷がある。

グラッドさんは、わざと鼻息を荒くして挑む。


腕まくりをして、手を組んだ。

「はじめ!」

ジャッジらしい人の掛け声が響いた。

大男が、余裕の表情で、グラッドさんを見ている。

グラッドさんは力を入れているが動かないようだ。

野次馬達は、笑っていた。


グラッドさんが明らかに劣勢に見えるが、大男が本気を出したであろう瞬間、グラッドさんは余裕の表情で大男の腕を倒した。

「勝者!挑戦者!」


賞金と、賭け金の利益をもらい、すごい勢いで私達はその場から逃げた。

きっと、あの大男が「金を返せ」と追いかけてくると思ったからだ。


私達はさっき見た野次馬達のあっけにとられた顔を思い出して大笑いした。

そして、グラッドさんはいつものメガネをかけ直すと、私の希望通り古着屋に向かった。


生地のいいパーティードレスと、タキシード。

それからハイヒールとメンズシューズを探す。


それを買ったら、余ったお金で、流行遅れだが質のいい普段使いのドレスを一枚に、生地の質がよくない流行のドレスを選ぶ。2つとも言ってみれば難あり商品なので、これは安く買える。

そして、グラッドさん用の外出着を買った。


買い物を済ませると、一旦宿に戻り、私は髪色を戻した。

それから帽子を被り、先ほど買ったばかりのパーティー用の服を鞄に入れて、貴族が集うパーティー会場に使用人の入り口から入った。


周りの様子を伺いながら、パウダールームに入り、お腹の詰め物を開いた。

ダイヤモンドのネックレスとイヤリングは髪飾りの代わりに髪に編み込み、エメラルドのネックレスとイヤリングをつけて、今日買ったエメラルド色のドレスを纏う。


このドレスは昨シーズンの物らしく、マーメイドラインのドレスの胸回りや足回りに、ドレスと同じ布で作った派手な装飾がしてあった。

この派手な装飾のセンスが最悪で、前の持ち主は売ったのだろう。

でも、このドレスを見た時、すぐに気がついた。


派手な装飾は取り外せる!

そしてドレスを着てみてわかった。やはり取り外せた!

シルクのドレスでこの仕立ては格安だった!


私は鏡の前で胸の位置を調節する。


それから、メイク道具を揃えるお金がないから、今日は持っていないが、私は数え切れないほどパーティーに出ているから知っている。

パウダールームには忘れ物が多い上に、パーティーが終わると使用人達がこぞって取り合いをする。

だから、忘れ物は、メイク台の下に隠してあるはず。


メイク台の下に手を入れて、忘れ物の化粧品を探し出す。

そして、それでメイクを完成させた。


修道女の生活のせいで胸は痩せてしまっていたので、お腹の詰め物を胸に入れた。

髪を結うのも合わせると10分くらいで支度はできた。


パウダールームから出ると、グラッドさんも着替えが完了していた。

タキシードがすごく似合う。

前髪は横に流しており、残念ながらメガネは外せないがすごくカッコいい。


「君は誰だ?」

グラッドさんは驚いて私を見る。

「フフフ。誰だと思う?私はあなたの妻のコニーよ」

そう言いながら、グラッドさんから脱いだ服を預かり、パウダールームのメイク台の下に隠した。


「今日やっと本当のコニーに会えた。しかし、美しい。そのストロベリー色の髪と、宝石のようなアイスブルーの瞳。メイクをしていなくても綺麗だと思っていたのに。我が妻は絶世の美女だった」


「褒めすぎですわ。旦那様。では打ち合わせ通りに参りましょう。まず、プランAよ」

そう言いながらパーティー会場の中心部に向かって歩く。

それをグラッドさんはエスコートしてくれた。


会場には見知った顔がちらほらとあった。

みんな私がグラッドさんと現れてギョッとしている。


私達はまず、ワルツを踊った。

「ねえ、旦那様はワルツを踊った事があるんですか?すっごく上手ですけど」

あまりのリードのうまさにびっくりする。


「私が通っていた学校では、出自を問わず、10歳まではダンスは義務だった。けど、大嫌いな授業だったよ」

そう言って鼻を鳴らした。


「じゃあ授業以外では?」


「ないよ。妻と踊るのが初めてのワルツだ」

私は嬉しくなってくるくると回った。


「その髪飾りとネックレスはどこから出てきたんだ?」


「魔法のお腹から。お腹にはなんでも入っているの」

私の答えに、グラッドさんはクスクス笑う。


私達は他の誰よりも目立つように大胆に踊りながら、エドモンド王子とクラリッサ・ギスボン子爵令嬢の前にやってきた。


「お前は、カロリーヌ・メイソン公爵令嬢!近衛兵よ、捕まえろ」

エドモンド王子の大きな声で、オーケストラが演奏をやめた。


私はエドモンド王子にカーテシーをして顔を上げた。

そして、王子をまっすぐに見た。


「なんの罪で私を捕まえるのです?」

私はお腹から大きな声を出した。 

しんとしたホールに声が響く。


今まで反論したことのない人形のような私が反論したのでびっくりしたのだろう。


「私を捕まえる罪状を教えてください」

そう大きな声で言った後、私はフフフと笑った。


『ここはリネハン公国でしたわね。ではリネハン公国語でお話ししませんといけませんね。私を捕まえる罪状を教えてください。しかも、この国の法律に則ってますわよね?』

私はさらに大きな声で、しかもリネハン公国語で言った。


「何をわめいてるんだ。外国語はよせ。私を馬鹿にしているのか?」

エドモンド王子はバーリエル語でそう答えたので、落胆の声が聞こえた。

つまり、リネハン公国語かわからないと言ったもの同然だ。


「エドモンド第二王子。皇太子レースから外されたそうですね。それは当然でございましょう。リハネン公国は、重要な友好国なのに、その国の言葉も話せないんですから」


「いつも俺に冷たい目を向けて、馬鹿にして!」

エドモンド王子はすごい剣幕で怒る。


「エドモンド様、こんな人の言うことを聞かなくても楽しく過ごしていればいいじゃないですか」

クラリッサ嬢が腕を組んで、私に見せつけるようにエドモンド王子にぴったりくっついた。


「ギズボン子爵令嬢。何故みんな皇太子レースに躍起になっているか知ってます?自分がいかに優秀か見せる事によって将来の待遇が違いますのよ。エドモンド第二王子のように、早々にレースから外れた者には、辺境での名ばかり伯爵の地位しかありませんのよ。名ばかりですから、実質の権限はゼロで、毎年の王室から出る予算も微々たるもの」


そう言って私は優雅にフフフと笑った。

グラリッサ嬢は私の言っている意味がわからないのかキョトンとしている。


「うるさいうるさいうるさい!お前に何がわかるのだ!」


しばらく睨み合いが続いた。


その時、私とエドモンド王子の睨み合いをぶち壊す声が聞こえた。


「あーこの前のイケメンそっくり。でも小汚い妻はいないから他人の空似かしら?ねえねえ、私、あのイケメンが欲しい」

声の主はアンジェリカだった。


真っ赤な艶々の髪を巻髪にして、露出の高いシルバーのドレスを纏い、アンジェリカはグラッドさんの横に来た。


「ねえ、あの人金持ちなんでしょ?でも、私の方が美人だし、お金持ちだから私の物にならない?だって、こんな喧嘩してみっともないでしょ?」


そう言ってグラッドさんに詰め寄る。


「あのバカなエドモンド王子は、そこにいるピンクの髪のメイスン侯爵令嬢と婚約破棄したわけ。そして、隣に座っているバカ女のギズボン子爵令嬢と婚約したのよ。きっと将来は誰の子供かわからない子を押し付けられるのよ」


アンジェリカがそう言うと奥から咳払いが聞こえた。

クラリッサ・ギズボン子爵令嬢は馬鹿にされてワナワナと震えている。


それを無視してアンジェリカは話を続ける。

「これは隣の国の事だけど、誰でも知ってるわ。子爵令嬢風情と婚約したら、そりゃ王室の中での立場はなくなるわ。しかも、相手の子爵令嬢はお股が緩いの」


そう言って一人で笑う。


「あら。ここは笑うところよ?」

アンジェリカはそう言ってクスクス笑った。


「何なのよ!私を侮辱するなんて!あなた失礼よ?私はエドモンド様の婚約者なの。わかる?ゆくゆくはバーリエル国の皇太子になる人の婚約者なの。つまり私は皇太子妃になる予定。そんな私を侮辱したのよ?謝りなさいよ!!」

そう言ってクラリッサ嬢はアンジェリカを見た。


「あら。小さい犬がキャンキャン吠えてるわ。全く可愛げがないけど。弱い犬ほどよく吠えるって聞いたことあるわ」

アンジェリカはそう言ってクラリッサ嬢をじっと見た。


「私は見た目が美しいものが好きなの。あなた全然美しくないわ」

そう言ってからグラッドさんを見た。


「うん。やっぱりあなたは美しいわ。私の側にいるだけでいいの。私、美しいものを集めるのが大好きなの」


そう言ってグラッドさんの手を取ったが、指輪を見つけた。

そして私の指輪にも気がついた。


「結婚までしちゃったのね。なら無理かー。庶民相手だとお金でカタがつくんだけど、公爵令嬢相手だと無理だわ」


アンジェリカはそう言って大笑いした。


「見た目が麗しい物が大好きで、この前はバーリエル国で最も美しい王子と言われているワイアット第五王子にも声かけちゃったのよ」


それってエドモンド王子の腹違いの弟で、確か婚約者もいたはず。

確かに、美しさで行くと六人いる王子の中で群を抜いている。


「俺はこんなに美しいのに声をかけられていないではないか!ワイアットがリネハン公国に来たとは聞いてないのに、いつのまに声をかけたんだ?しかも、今の話では我が婚約者だったカロリーヌはその男といつのまにか結婚をしていたというのか?」


エドモンド王子は私に詰め寄ろうと立ち上がったが、クラリッサ嬢が袖を掴む。


「エドモンド様が捨てた女の事なんてどうでもいいわ。あの赤毛の女が失礼すぎるわ!エドモンド様、私が傷つけられたの。だからあの女を罰してください!」

クラリッサ嬢は大声でそう言って泣き出した。


「うるさいわね。毛色の違う雑種はこれだから扱いにくいわ」

アンジェリカはため息をついた。


「失礼すぎるわ!エドモンド様、私我慢できません。この女を早く罰してください」

クラリッサ嬢は尚も泣き喚く。


「クラリッサ。あの方は、リハネン公国のアンジェリカ王女だ。他国の王女を罰する事など誰にもできない。ましてやここは、リハネン公国。我が国の法律は通用しないから、不敬罪などには問えない」

エドモンド王子の言葉に内心驚いてしまった。


アンジェリカってリネハン公国の王女様だったのか!

自由奔放なのは、きっと王位継承権に興味がないからね。


エドモンド王子とクラリッサ嬢のそんなやり取りを無視して、アンジェリカ王女はグラッドさんを見て残念そうにしている。


「婚約者がいてもいいけど。既婚者はダメなの。平民の既婚者だったらよかったのに。残念だわ。つまんないからもう帰る!」

そう言って出口の方に歩いて行った。


後に残ったのは、泣き喚くクラリッサ嬢だけだった。


女性貴族たちが噂話をしている。

聞こえてくるのはアンジェリカ王女が言った「お股が緩い」噂話だった。

では、さっき言ってたのは本当だったんだ。


エドモンド様は喚くクラリッサ嬢をなだめるのが精一杯の様子だ。

それを他の貴族が冷たい目で見ている。


この2人は社交界では浮いた存在なんだわ。

それにこんなに魅力のない人のために自分の12年を勉強漬けにしたとおもうと馬鹿らしくなった。

どんなに頑張ったところでこの人を皇太子なんかにできるはずなかったんだわ。


アンジェリカ王女のお陰で気持ちが急激に冷めた。

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