Ep02-06-エピローグ
エピローグ
未来視。
語感から推察されるのは、かなりの正確性が担保された予知に類する異能。
そんな能力の影響下にあるからこそ、あの日、あの少女が難を逃れるために都合のいいピースなんてものが、あれやこれやとあの公園に逐次投入されてきた。それなのに。それに気づいたのは、ほとんど事後になってからで、迂闊にも自身の素性を詳らかにされかねない情報を、口にしてしまったあとでもあった。
フェードアウト自体は無難にこなせたと思うが、こちらのことをもし、その未来視とやらで探られでもしたら、情報はいったいどこまで先取りされてしまうのだろう。
やはり素性を明かすべきではなかったか。
ハスターナの家名など出すべきではなかったか。
いや。今後あの日の面々に何一つ重要な秘密を明かさない。そんな意識で生きていれば、これ以上の秘密が暴かれる懸念はないはずだ。待ち望んでいた異世界軍学校生の知己だったが、未来視の監視範囲に含まれていると考えるのなら、迂闊な探りを入れないほうが無難だろう。こちらからの接触はもちろん、可能なら姿を見せずにやり過ごしてゆくしかない。
「それにしても未来視とはね。まさか毎年毎年、そんな異能持ちが召喚されてる可能性も?」
完全に想定してなかった着想に至り、少女は思わず声まで発すると、慌てて口を押さえた。彼女がしていることが露見すれば、おそらくこの国での居場所を失くす。
今日まで何も起こらなかったとはいえ、慎重には慎重を期さなければなるまい。
「あぶないあぶない。わたしはひとりごとでもこっちでしゃべらなければいけないんでした」
たどたどしく聞こえるであろう喋り方をしながら、六歳児のパティーツ・ネディネートは、自室をあとにし、ダイニングへと足を向けた。
「おかあさん。そろそろおゆうはんのしたくをはじめるじかんでしょ。わたしでもできるおてつだいはある?」




