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第9話

 カシャ カシャ

 突然光を感じて、俺は起きると、母が携帯で何やら撮っていた。

 

「あんたら もうそこまで行ってたのか〜 母さんはうれしいぞ!」

「はい・・・・?」

 

 寝起きの俺はあまり理解できなかったが、横を見るとすべて理解した

 

「ち、違う! これは違うからな!」

「まぁまぁ そんな慌てなさんな ちゃんと了解済みだからさ、両方の親も!」

 

 グッっと親指を立てて、ニコっと笑った

 そして、携帯を触り出して「送信 送信っと」

 

「・・・・・どこに送信した?」

「もちろん葵ちゃんのご両親」

 

 さっきと同じポーズを取り部屋から出て行った

 

「まてっ!こらっ!」

 

 ベッドから飛び出ようとすると、葵が俺の服を掴んで離さない

 

「おい 葵 起きろ! そして、離せ!」

「んん〜・・・スゥスゥ」

 

 葵を起こそうとしても、まったく起きる気配がなかった。

 そして、俺は日本に帰るのが怖くなってきた。

 

 俺はしばらく、日本に帰ったときに葵のおじさんに対する言い訳を考えていると、葵が起きた

 

「ん〜・・・あっ輝ぅ おはよう・・・」

 

 呑気に挨拶をしてきた葵に今まで考えてきた言い訳もすっ飛び、あきらめるしかないことに気がついた

 

 俺は葵よりも先に1階に降り、父と母のニヤニヤした視線を浴びさせられた

 そして、葵も起きてきたが、ニヤニヤした視線は対して気にしてない様子だ。むしろ気づいていないと言ってもよかった

 

 朝ご飯を食べた俺たちは、今日の昼には飛行機に乗るので、空港まで送ってもらった

 

「ありがとうございました。初めての海外旅行楽しかったです!」

「いえいえ 私たちは何もしてないから。今度は夏休みにいらっしゃい」

「はい 今度は家族で来ます」

「おい そろそろ行くぞ」

「あっ うん それじゃ」

 

 俺が行こうとすると父が呼びとめた

 

「何?」

「ちゃんと幸せにしろよ!向こうの家族さんにもよろしく!」

「うっさい!」

 

 俺は父にきつく言って、ロビーに進んだ

 

「おじさん なんて?」

「勉強がんばれってさ」

「そっか また来ようね 翔たちも連れてさ」

「ああ そうだな」

 

 葵の笑顔に俺はさっきまでの苛立ちがどっかに行って素直な気持ちで返事をした

 

 

 

 帰りの飛行機は、最初のほうは快適だったのだが、途中に乱気流に入ってしまったみたいで、多少揺れた

 俺は何度か経験しているから普通にしていたけど、まだ2回しか飛行機に乗っていない葵にとっては怖かったみたいだ

 

「葵 大丈夫だからそんな俺の手、力強く握らないで・・・」

「だ、だって・・・」

 

 必死に耐えている感じが全身から出ていた。

 少しでも恐怖心を取り除こうと俺は考えた

 

「あっ そうそう 葵」

「な、なに?」

「飛行機はな、438年間で1回落ちるかどうかの確率らしいぞ」

「・・・・1回・・・あるんだ・・・」

「えっ?438年で1回だよ?」

「その1回が今だったら?」

「うっ・・・そ、それは・・・ない!」

「うぅ」

 

 ダメだ 何を言っても今の葵はネガティブに考えてしまう

 俺はこれ以上何も言わずに、俺の手を握っている葵の手の上にもう片方の手を置いた

 

 

 しばらくして、乱気流も抜け、飛行機も安定して飛んでいる

 横には安心したような顔をして眠っている葵がいる

 乱気流を抜ける前ぐらいに、寝てしまったらしい。

 しかし、眠っているのに、この握力はなんだろう

 手を離そうとすると、ものすごい力で握ってくる

 俺も何度か挑戦してみたが、抜け出すことが無理だった

 というか、抜け出そうとすると葵の寝顔が少し不安したような顔になる

 あと強く握ってくるから痛い。

 

 

 飛行機も日本領域に入ったぐらいに葵が起きた

 

「ふぁぁぁ おはよう〜今どこぉ?」

「ん 今、日本に入ったぐらい もう着くよ」

「そっかぁ それじゃ起きとこ」

 

 寝ぼけた感じの葵は外を見ていた。それでもなぜか手は離してくれない

 

「葵?そろそろ手・・・」

「ん?あーごめん でも安心したしありがとうね 輝」

「ん。あーうん・・・」

 

 なぜ俺が照れてる・・・

 少し顔が赤くなってる気がしたので、俺はテレビモニターを見て落ち着かせた

 

 

 そろそろ着陸するころになると、雨が降っていた

 しかし、着陸には支障がないため、時間通りに着陸して、入国審査を受け、無事に日本についた

 

「んぁーついた〜 長いこと飛行機乗ってたから疲れたな〜」

「そう?私は楽しかったけど」

「誰だっけ?乱気流に入った時、怖がってた人は」

「うっ もーそれ絶対優美とかに言わないでね!」

「イエッサー」

 

 敬礼をして、空港の外に出る

 

「そういや、おじさんいつ来るの?」

「携帯貸して電話する」

 

 俺は葵に携帯を渡した

 

「あっお父さん?・・・うん今空港の中・・・うん・・・そう・・・解った、言っとく・・・うん・・・じゃ」

「おじさんなんて?」

「あと30分ぐらいで来るって」

「そっか。んじゃ空港の中でなんか買っておこう」

「そうだね」

 

 俺たちはお土産(向こうでも買っておいたがこっちは自分用)を買って時間をつぶした

 30分ぐらいすると俺の携帯が鳴り、おじさんが空港についたと言ったので外に出た

 

「おつかれさま どうだった 葵 初海外は?」

「うん よかったよ 楽しかった」

「そうか」

 

 そう言って俺らの荷物を車に詰め込み、出発した

 

 途中に渋滞にひっかかり、家に帰る頃には、周りは暗くなっていた

 

「今日はありがとうございました」

「いやいやお礼を言うのはこっちだよ 葵の世話ありがとうな」

「まぁ大変でしたけど、楽しんでもらえたみたいでよかったです それじゃここで」

「輝 明後日の学校遅刻したらダメだよ! ばいばーい」

「葵 お前もな じゃ」

 

 俺は葵のおじさんに頭を下げ、家に帰ろうとすると

 

「あっ 輝くん ちょっと」

「はい?なんでしょ」

 

 おじさんに呼び止められ振り向くと携帯を持ってこっちに来ていた

 

「この画像なんだけど・・・」

「んなっ!・・・」

 

 見せられた画像は俺がすっかり忘れていた、母が撮った、俺と葵が同じベッドで寝ている画像だった

 

「い、いや、こ、これは!」

 

 俺は必死に言い訳をしようとすると、おじさんはニコっと笑い俺の肩に手を置いて

 

「おめでとう!我が息子よ!母さんも歓迎してるよ!」

 

 と言って自分の家に入っていった

 

 我が母よ・・・なんてことしてくれたんだ・・・

 俺はこれから葵の家に行くことが無性に怖く感じた

 

 


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