80話
「それじゃ行ってくるね」
「ああ、ちゃんと勉強してこいよ」
「輝もね」
塾の夏合宿に向かうために準備をした葵が家から出ていった
また葵家で俺一人になり、やることが無いので自分の部屋に向かう
葵は夏合宿、葵両親は旅行
受験生である俺も勉強はしないといけないのだが明確な目標が無いため長続きしないでいた
「あ~・・・暇だ・・・」
2時間も勉強をすると頭が痛くなってやめる
しかし、勉強をやめると特にやることが無いので暇になってしまった
暇を潰すためにリビングで大きなTVを見ているとインターホンが鳴った
どうせ、何かの勧誘とかそういうのだけど一応のために玄関まで行き、ドアを開ける
すると、玄関の前には俺を産んでくれた人が立っていた
「輝、元気にしてた?」
「一応ね、それよりどうしたの?」
「ちょっとね」
母さんは家の中に入っていくと俺が座っていた椅子に座って、俺が飲んでいたジュースを勝手に飲む
「で、輝は進路どうするわけ?」
ジュースを飲み終わると急に真剣な顔をして俺に聞いてきた
「どうするって・・・」
「大学に行くの?就職するの?」
「・・・・」
「あ、そうそう。留学って手もあるわよ」
「留学ね・・・」
俺も留学のことは考えたが、いまいち思い浮かばない
「お父さんが留学してたことは知ってる?」
「父さんが?」
「ええ、ちょうど高校卒業した時にしたらしいわ」
「へぇ」
「まぁ、留学の線も考えておきなさい。それじゃ私は行くわ」
母さんは椅子から立ち上がると玄関の方に向かう
「それだけのために来たの?」
「そんなバカな。こっちで同窓会があるからついでよ」
「ふ~ん」
「それじゃ葵ちゃんのご両親にもよろしく言っておいて」
「了解、じゃ元気で」
「ええ」
母は出ていくと気分よさそうに歩いていった
俺はその後ろ姿を見届けると家の中に入り、再びデカイTVを見る
でも、内容はまったく頭に入ってこなくて、さっきの進路のことを考えていた