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第76話

 

 空港のロビーで俺は迫る恐怖に耐えていた。ある人が来るまで

 飛行機から降りて何分経ったのかと思い、時計を見るとまだ10分近くしか経っていない

 正直、もう1時間は経っていると思っていたのに10分しか経っていないことに驚きながら迫りくる恐怖に耐える

 そして、ついに恐怖の瞬間がきた

 

「おかえりなさい、輝ちゃん」

 

 声のする方を見ると、それはもう怖いぐらいニヤニヤしているおばさんがいる

 

「た、ただいまです」

「まぁ言い訳は車に乗ってから聞いてあげるわ」

 

 俺は完全にペースを取られ、おばさんの指示に従う

 そして車の中で俺は飛行機に乗っている間、考えに考えた言い訳を言い続けた

 

「それで?なんで私が鬼なのかしら?」

「だ、だからあれはおばさんに言ったんじゃなくて・・・」

「おばさん?」

「お、お姉さんに言ったんじゃなくて・・・」

「それじゃなんで私が豆と遊んでいると不憫なのかしらね~」

 

 おばさんは完全に主導権を取ったことが嬉しいのか楽しそうに俺をいたぶってくる

 

「不憫というか・・・えーっと・・・あ、豆と遊んでくださってありがとうございます」

 

 俺はこの話のペースを変えようとしたが、おばさんはそんなことを許すわけがない

 

「そりゃ私は家で豆と遊ぶしかない不憫な人ですものね~」

「い、いやだから・・・そうじゃなくて・・・」

「輝ちゃんは家族で楽しくやってたみたいだし、私的にはいいんだけどね~」

「ごめんなさい・・・・もう勘弁してください・・・何でもしますから・・・」

 

 おばさんの言葉攻めに勝ち目が無いのに気づいたので素直に謝ると、おばさんはその言葉を待ってました!と言わんばかりの顔をする

 

「今言ったわよね?」

「はい?」

「今、認めたわね。それじゃ私の願いは~」

「ちょ、ちょっと今の最後に?マークついてたでしょ」

「私って不憫なのかしらね~」

「うっ・・・なんでもします・・・」

 

 おばさんは嬉しそうな顔をしてハンドルを切りながら話しかけてくる

 

「そうね~、まず1つ目は葵を幸せにしてほしいでしょ。2つ目は孫が欲しいでしょ~3つ目は・・・孫を抱かせてほしいわね~」

「・・・・」

「なんでもするんでしょ?輝ちゃん」

「いやいや、それだけは勘弁してくださいよ」

「あら?輝ちゃんは葵を抱きたくないの?」

「抱くとか言わないでください。それに俺の気持ちだけじゃだめですよ」

「輝ちゃんはしたいの?」

「だから・・・俺たちまだ高校生ですよ、早すぎます」

「高校生って言ってもあと数カ月で卒業でしょ?それに今の子って早いんじゃないの?」

「それでもです、俺はちゃんと考えたいんです」

 

 これは本音

 もちろん葵としたい、そりゃそういうの考えるときはある。

 だけど、それは俺だけの気持ちでやるものじゃないし、その場の雰囲気でやるものじゃない

 俺はおばさんの方を向きながら真剣に答えるとおばさんは小さくため息をついた

 

「・・・そっか、まっそういうと思ってたわ。それじゃ4つ目のお願いしていいかしら?」

「さっきみたいなのはなしですよ」

「もちろん。4つ目のお願いは葵に縛られずに輝ちゃんの好きなことをしてほしいの」

「俺の好きなこと?」

 

 聞き返すとおばさんは車を脇に寄せて止め、俺の方を真剣な顔で見てくる

 

「そう、これから輝ちゃんと葵は大学受験もしくは就職の壁に当たるわ。そのとき、輝ちゃんは葵のことを考えて自分のやりたいことを我慢してそうな気がするの。実際輝ちゃんは今進路のことで悩んでいるはずよ」

「・・・・・・」

「私の願いはそれだけよ、まぁ行きたい所が言えるようになったら私に言ってちょうだい」

「・・・わかりました」

 

 おばさんはニコッと笑い、再び車を動かし家へと向かった

 


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