第65話
放課後、いつもはとっくに帰っている時間帯なのだが葵が職員室に呼ばれて待っててくれと言われたので校門のところでノラ猫を可愛がりながら待っていた
「ごめ〜ん・・・それ輝の猫?」
「ん?あ〜ノラだよ。弁当の残りあげたら懐いた」
「いいな〜私もさわらせて!」
葵は俺を弾き飛ばすように横にくると猫がびっくりしてピュッとどこかに走り去った
すると葵はすぐ寂しそうな顔になる
「あぁ〜・・・輝のせいだよ・・・」
「なんでだよ、葵が急に迫ってくるから猫ビビったんだろ」
「むぅ〜私も触りたかったなぁ・・・飼いたいなぁ」
「あははは。無理だって、葵がちゃんと動物育てるのとか宇宙行くより難しいよ」
笑いながら言うと葵は俺を睨んで持っていたカバンを振りかざしてきた
なんとか後ろに下がって避けれたが、避けたことによって葵のイラつきは更に高まる
「そんな怒るなよ・・・」
「だって輝が私をバカにしたから」
睨みながら再び俺に向かってブンブンとカバンを当ててこようとしてくるのを避けて行く
「わ、わかったから!もうやめろって、帰りになんかおやつ買ってあげるから!」
「子供じゃない!ペットショップ連れてってくれたらやめてあげるよ!」
ペットショップで許すのも子供じゃないか?と言いそうになったが、ここで葵の怒りを高めても意味がないので承諾し、帰り道から大きく外れてデパートのペットショップに寄った
「かわいい〜輝、この子かわいいよ〜」
葵は犬とか猫とかがケースの中に入っている場所から全く動かず、見惚れている
「うわぁ可愛い〜、輝!輝!この子ほしい!飼いたいよ!」
「ダメだって、葵には難易度が高すぎる」
葵がほしいと言ったのはトイプードルの子供で、体が小さくてもこもこしてて可愛いのは可愛いのだが値段が15万を軽く超えている
値段とかそういうの関係なく動物の子供なんて色々と大変だろうから金魚をすぐに死なせてしまう葵には100%無理だろう
「可愛いなぁ・・・ほんっと可愛いなぁ・・・輝ぅ」
葵は俺に向けて上目づかいしてきて、なんとかOKを得ようとしてくるが俺がOKしたところでおばさんに反対されれば元も子もない
てゆうか、俺がOKするわけないのだから、おばさんも絶対OKしない
俺以上に葵が動物を育てることが下手なのは知っているはずだから
「無理、葵諦めろよ・・・葵が動物育てるなんて無理だって」
「うっ・・・わ、私は・・・無理だけど・・・」
葵は自分で認めたくないのか最後の方は小さくなっていく
「だけど!輝が育ててくれればいいじゃん!昔、犬飼ってたでしょ!」
「昔?・・・あ〜あの犬か?」
昔、まだここに親と住んでいた頃
俺の家に柴犬が一匹いた
「あの犬、俺の家の犬じゃないよ。確か父さんの会社の友達から預かってたんだ」
「でも、輝によく懐いてたじゃない」
「そりゃ預かってる間、俺が世話してたからな」
「それだったら代わりに世話して、私は毎日会いにいくから育ててると一緒になるでしょ?」
「意味分からん・・・なんで葵の代わりに俺が犬の世話しないといけないんだよ・・・」
それに毎日会いにくるってことは毎日俺の部屋に来るってことになる
葵のことだから、今でさえ中々帰ろうとしないのに犬までいたら住み着くかもしれない
「輝はこの子の目を見て何も感じないの?飼ってほしいってオーラが出てるじゃない」
「いや、俺にはどう見ても寝てるようにしか見えない」
「うっ・・・とにかくお母さんにも言ってみるから、もしお母さんがOK出してくれたら輝も諦める?」
「・・・・・ああ、いいよ」
どうせ認められないから別にいいや・・・
葵は俺の返事を聞くとパッっと明るい笑顔になり俺の手を引いて今すぐ家に帰ろうと急かし、1時間近くいたペットショップから家へと走って帰るはめになった